映画『おおかみこどもの雨と雪』 細田守(監督・脚本・原作)インタビュー 前編 | アニメ!アニメ!

映画『おおかみこどもの雨と雪』 細田守(監督・脚本・原作)インタビュー 前編

インタビュー

細田守監督
  • 細田守監督
  • (C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
  • 2月20日発売BD&DVD (C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
  • (C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
映画『おおかみこどもの雨と雪』
細田守(監督・脚本・原作)
インタビュー 前編


『おおかみこどもの雨と雪』は、『時をかける少女』、『サマーウォーズ』と話題の映画を生み出してきた細田守監督の作品だ。2012年夏に劇場公開され、3度大きな評価を獲得した。
また、興行収入も42.2億に達し、作品のために数多くの人が映画館に足を運んだ。2012年を代表する日本の映画である。
本作の待望のBlu-ray Disc、DVDが、2013年2月20日に発売される。この機会にあらためて、映画の反響も含めて細田守監督にお話を伺った。
[インタビュー取材・構成:数土直志] 

『おおかみこどもの雨と雪』
/http://www.ookamikodomo.jp/


hosodakantoku■ いろんな人に共通する出来事、問題を考えている

―― アニメの制作、そして映画公開が終わって半年ほどが過ぎました。大ヒットという世の中の反響も含めて、『おおかみこどもの雨と雪』を監督はあらためてどう考えておられますか?

―― 細田守監督(以下細田) 
この映画がこれだけたくさんの方に観ていただけるとは思ってなかったんです。だからとってもびっくりしています。
親子や恋人同士、そういった様々なたくさんの方が観ないとこうした結果にはならないと思いますので、とても光栄です。

―― 映画の製作発表があったときにまず印象的だったのが“狼とこども”でした。一般的に動物と子供は世間にウケるテーマだと思いつつ映画を観せていただいたら、そうした一般性とは違いました。
映画のテーマを決める時に、より多くの人に観てもらいたいと考えるものなのですか?

―― 細田 
今回に限らずいつも自分の身の回りだけでなくて、いろんな人にとって共通する出来事、問題はなんだろうと思っています。
『サマーウォーズ』だったら親戚が主役のアクション映画です。誰もが親戚はどこかにいる。親戚のいない人はいないわけです。
同じように親のいない人もいないと思うんです。その親はどうやって子供を育てるんだろう、親とは何なんだろうと考えたのがこの映画のきっかけです。

まず子育てものをやりたいと思ったんです。「子育てもの」というジャンルがあるのかどうかわからないけど。
子育てにはいろんな苦労や喜びがある。それが面白いと思い、それに入りやすい要素として、狼男の子どもを育てる話にすると、みんなが共通して楽しめるんじゃないかと思いました。
いろんな人にとって何らかの関わりのある問題について映画を作りたいと思ったことは確かです。それとヒットしそうだということはまた全然べつの話です。


■ ファンタジックな要素がないと映画にならない

―― これまで『時をかける少女』があり、そして『サマーウォーズ』と本作。どれもSFもしくはファンタジックなものです。一方で、話自体はリアルな日常を描いて、そこからあまり大きくはみ出しません。ファンタジックなものはなくても、監督は物語を描けるんじゃないかとも思います。なぜそれを常に要素として持ってくるのですか。

―― 細田 
逆ですね。僕はファンタジックな要素がないと映画にならないと思うんです。
つまりファンタジーの要素は、アニメ映画に限らず児童文学の世界からずっとあります。日常では起こり得ないことを体験することで、かえって日常のなかの見えづらいものがはっきりと鮮明に浮かび上がってきます。
例えば『時をかける少女』。僕はあの映画は後悔についての映画だと思うんです。「あ、しまった」とか「ああすればよかった」と僕らは普段からたくさん後悔しているわけです。
「今日カレー食ったけどやっぱりラーメンにしとけばよかったかな」とかそういう細かいことから、それこそ「人生の大いなる選択」までふくめてです。
それをタイムリープというファンタジーを通過させることで、人間の誰もが持つ後悔する気持ちから、何を未来に向けて見出すのかがはっきりとするんじゃないかという気がします。

『おおかみこども』でも同じです。みんな子供を育てるのは当たり前とどこかで思っています。けれども、実際には当たり前のことじゃないんですよね。子供が育っていくとか、子供を育てる親は全然当たり前じゃない。
その当たり前じゃないことを、みんなで共有するためには、誰もしていない経験をみんなで共有すればいいわけです。それが狼男の子どもなんです。当たり前が当たり前じゃないとあらためて思うためのファンタジー要素かな。
世の中では大事なものは身近にあるものほど気づきにくい。あらためて身近にある大事なものを考えようというときに、ファンタジー要素は欠かせないと、僕は思っているんです。


■ 東映動画出身という教育の賜物

――  もうひとつ3作品は、共通して基本悪い人は出てきません。終わりかたもハッピーエンドとまでは行かなくても、ひとつの区切りがあります。暗いことをあまり出さないことで、なにか強調することはあるのですか?

―― 細田 
ひとつあるとすれば東映動画(現東映アニメーション)出身という教育の賜物じゃないでしょうか(笑)。
とくに日曜の朝の子供向けの演出家を主にやったことにすごく大きな影響を受けています。
『デジモン(アドベンチャー)』にしても『(おジャ魔女)どれみ』にしても『(ひみつの)アッコちゃん』にしても『(ゲゲゲの)鬼太郎』にしても、昔からそんな悪い人は出てないんです。
東映動画で子供に向けてアニメを作るという社会的な倫理観がいまも続いているんじゃないかな。

―― 細田 
僕から言わせればハッピーエンドや、最後にさわやかな気持ちで終えるのは、それ以外あり得ないわけです。逆にどうやってそこへ到達するかが問題です。
最初からそこに至るまでに映画をどう工夫していくかが重要だし、そのときに東映で学んだことが財産になっています。

―― 今回の『おおかみこども』が前作、前々作とやや違うなと思いますのは、これまでは後半に大きな危機、クライマックスがあってそれを解決します。今回は最後の親離れがクライマックスというよりも全体に渡ってエモーショナルなものがある気がします。それは意図的なものなのですか?

―― 細田 
今回の主人公は母親です。親はどこから始まってどこまでが親かという映画にしようと思ったんです。
つまり始まりは子供が産まれたときですよね。どこで終わるかと言うと子供が自立するときです。
親は子供を大事に育てるのに、その到達点は離れ離れになっちゃう。そうした二律背反な気持ちを抱えている。つまり別れるためにがんばってるようなもんですよ。
それを描くのに、デフォルメされたクライマックスを映画的演出としてやってしまうと、かえって親の本質みたいなことから遠ざかっていきます。それよりも人生だったり、親の役割が持っている流れに忠実でありたいなと思いました。親そのものをどう描くかがポイントだったわけです。

/後編に続く 

hosodakantoku2


『おおかみこどもの雨と雪』
/http://www.ookamikodomo.jp/
[キャスト]
宮﨑あおい 大沢たかお / 菅原文太



■ Blu-ray
2枚組 7140円(税込)
■ DVD
2枚組 5040円(税込)
■ Blu-ray+DVD ファミリーパッケージ版
6090円(税込)
[3アイテム共通]
2013年2月20日リリース
発売・販売元: バップ
スタジオ地図 作品
《animeanime》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集