【あにつく2016】コンポジッターが描く サンジゲン流のエフェクト術 | アニメ!アニメ!

【あにつく2016】コンポジッターが描く サンジゲン流のエフェクト術

9月25日、アニメ制作技術の総合イベント「あにつく2016」にて、アニメ制作会社・サンジゲンのセミナー「コンポジッターが描くエフェクト術」が行われた。

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一般にアニメにおける「撮影」といえば、各セクションから上がってきた素材を合成して一つの完成された画にする工程のことを指すだろう。しかしアニメ制作のデジタル化の進展とともに、セクション間の境界が曖昧になっていくにつれ、撮影が旧来の領域を超えた画づくりを担うケースが増えてきている。
2016年9月25日に開催された「あにつく2016」でのセッション「コンポジッターが描くエフェクト術」では、セルルック3DCGを得意とするアニメスタジオ「サンジゲン」のコンポジットチーム(撮影部)により、エフェクト作画までをも撮影が描き足す事例と、そのノウハウが語られた。

登壇したのは、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』シリーズにも参加し、2016年10月より放映される続編『ブブキ・ブランキ 星の巨人』では撮影監督を務めたセクションマネージャーの池田新助と、サンジゲン創造部のコンポジットチーフである奥村大輔、同じくサンジゲン創造部 統括マネージャーの瓶子修一、さらに飛び入りゲストに『ブブキ・ブランキ』でCGスーパーバイザーを担当している鈴木大介の4名。
まず池田の発表では、『ブブキ・ブランキ』を取り上げながら、コンポジットチームが担ったエフェクト表現について解説が行われた。
アクション系のアニメで全面展開される、飛沫や破片、煙、液体、爆発といったエフェクト。通常の手描きアニメにおいて、エフェクト作画はアニメーターが担当しているように、背景美術以外はフル3DCGで作られた『ブブキ・ブランキ』でも、3Dエフェクトは3DCGアニメーターが描いている。しかしサンジゲンは、3DCGモデルを動かす「アニメーション」の工程においても、3DCGアニメーターがAfter Effects上で、パスによる積極的に修正・描き足しを行うことで知られるスタジオだ。そんなサンジゲンでは撮影の工程においても、コンポジットした映像に物足りなさを感じる箇所があれば、コンポジッターが「TVPaint Animation」なども用いて、エフェクトを自ら描き足してしまうのだという。
デジタル作画で描いた素材をもとに、中割りのタイミングまで考えつくされたエフェクト素材を制作するといった、明らかに撮影の範疇を超えた仕事を、作中での実例を豊富に交えながら具体的に紹介。プロダクションの最終工程に関わり、映像の全体像を把握できる撮影というセクションが、最後のプラスアルファとしてエフェクトを描き足すことのメリットがわかりやすく示された。

池田につづいて発表した奥村は、アナログ感を活かしたエフェクトを用いて3DCGアニメに彩りを加えるという異なったアプローチを解説した。サンジゲンはセルルック3DCGアニメを手がけるスタジオであるため、3DCG的な質感を軽減しセルに寄せることが完成度を高めることになる。そのため、墨汁や絵の具などの、3DCGとは異なる質感持ったアナログ画材を使った、「タタキ」と呼ばれる粉塵や飛沫のエフェクト素材を作りはじめたのだという。
白い画用紙にブラシで墨汁を散らす制作過程、タタキを映像に加える前後の比較を紹介したのち、3DCGアニメに「タタキ」を取り入れる具体的なメリットが挙げられた。前述したCGっぽさの軽減のほか、アナログならではのランダムさを持つこと、特別なソフトが必要ないこと、紙に直接描くので感覚的に素材制作ができること、素材のバリエーションを作るのが容易であること。そうして、限られた制作期間のなかで、セル調のルックを保ちながら情報量の多い映像を作るには、「タタキ」のエフェクトの活用が適していると締めくくられた。

瓶子から「3Dアニメーター、デジタル作画部、撮影の垣根をなくしたい」という宣言もなされたように、サンジゲンらしい実験精神がそうした制作体制のボーダレス化を推し進めている様子が垣間見られるセッションとなった。
《深井孔@アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.biz》
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