松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に 2ページ目 | アニメ!アニメ!

松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に

「未祐ちゃんが好きすぎて、未祐ちゃんに会いたくて始めたイベントです」

イベント・レポート
注目記事
松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
  • 松来未祐から広がる思い、愛悼イベント「サンキュー39!未祐ちゃん」で難病の周知をより多くの人に
■名も知らぬ提供者の思い

13時30分からは急性リンパ性白血病を患い、骨髄移植で克服した池谷有紗さんによる講演が行われた。白血病の診断が出た時点で症状が進行していた池谷さんに残されていた手段は骨髄移植しかなかったという。その後、ドナーが見つかってから、骨髄移植の準備のための抗がん剤治療や放射線照射などの体験を「筆舌に尽くしがたい苦痛の日々でした」と振り返りながらも、丁寧に手順を語っていった。やがて、完治したころには「日常を過ごす幸せ」に改めて気づいたと語り、闘病体験を締めくくった。荒井さんと同じく池谷さんにもドナーがいる。患者とドナーはお互い誰であるかを明かされず、骨髄移植の日から1年間、最大2通まで手紙のやりとりができるという。池谷さんは27歳男性のドナーと手紙のやりとりをしたことを話してくれた。その2通目は池谷さんが完治し「ありがとう」と伝えた手紙。ドナーからの返事には「こちらこそ、生きていてくれてありがとう」という心から祝福する言葉がびっしりと描き込まれていたという。顔も知らない、だが免疫を司る白血球の一致を果たしたドナーからの言葉は、何より池谷さんを励ました。
質疑応答では、「患者に対してどのような言葉をかければいいのか」という質問が。池谷さんは「『がんばって』と言われて『自分はがんばってるのに』と思う人もいます。でも私はそういう言葉でもうれしかった。気持ちや愛が伝わるものならどんな言葉もありがとうと思いました」と答えた。



■慢性活動性EBウイルス感染症に立ち向かう

14時30分からは松来さんの主治医でもあった東京医科歯科大学・血液内科医の新井文子先生が壇上に上がった。新井先生は慢性活動性EBウイルス感染症の第一人者として、病気について分かりやすく解説していった。

CAEBVは1978年にアメリカで最初に報告された。白血球内にあるリンパ球という免疫体に感染し、いわゆるがん性の発達をすることが分かってきたという。以降さまざまな症例、研究を経て、2016年にWHOが、血液のがん、リンパ腫のひとつとしてCAEBVが位置づけられるようになったとのこと。
世界的に見ても専門に研究する医師がほとんどいないというCAEBVを、なぜ新井先生が専門に取り組むことになったのか。そのきっかけは38歳女性患者との出会いだったという。その患者はそれまで15年間、原因不明の発熱などでリウマチ内科にかかっていた。その後、病状の悪化により行った検査で、悪性リンパ腫が見つかった。新井先生によれば、「今にして思えば、CAEBVから15年かけて悪性リンパ腫に進行したということでした」と語った。根本的な治療法の発見にも至らず、またCAEBVという病気を目の当たりにしたのも初めてだったことから、その患者のことが非常に大きく心に残ったという。女性患者は病床で「私は15年間、ずっと診断がつかなかった。CAEBVと早く診断できるようにしてください。効くクスリを作ってください」と新井先生に訴え続けたという。また、「こんなにありふれたウイルスがなぜ一部の人に病気を引き起こすのか、その原因を突き詰めてほしい」とも。この患者との出会い、強い思いが全てのモチベーションとなり新井先生はCAEBVの研究を始めることになったと語った。



■EBウイルスとは

Epstein先生とBarr先生が発見したことによって「EBウイルス」と命名された。帯状疱疹や水疱瘡を引き起こすヘルペスウイルスの仲間である。発見は1964年のアフリカ。その後の研究で、日本人の大人以上はほとんどが感染しているウイルスであることが分かった。5歳までに50%の人間が知らない間に感染しているとのこと。その頃の感染では症状は出ないが、思春期以降の感染では発熱や扁桃腺炎などでが起こり通常一ヶ月ほどで鎮静する。ヘルペスウイルスの仲間であることから一度感染すると生涯潜伏し続ける。普通はB細胞に感染する。B細胞とは免疫を担当するリンパ球にある「B細胞、T細胞、NK細胞」の中のひとつ。B細胞にEBウイルスが感染すると、B細胞を不死化し、際限なく増殖させていくが、その増殖をT細胞が防いでいるため、症状はほとんど出ない。
EBウイルスは唾液で感染すると言われていて、多くの人は口の周りにあるB細胞に感染し、発症しないまま過ごしていくことになる。
だが、免疫力が著しく落ちている状態に体が陥ると、B細胞にいるEBウイルスも活性化し、悪性リンパ腫を引き起こすことがあるという。

■EBウイルスがT細胞/NK細胞に感染すると

ではEBウイルスがB細胞ではなく、T細胞・NK細胞に感染するとどうなるのだろう。完全には解明されていないと前置きをしつつ、新井先生は「B細胞と同じく、増えるのではないかと言われています」と語った。T細胞・NK細胞とは免疫力を担当し、ウイルスの侵入に対してリンパ節を腫らして抗体として機能する。だがEBウイルスに感染すると発熱など、さまざまな炎症を引き起こし、最終的には体中の血液を食べ始めるという。炎症症状に加え、悪性リンパ腫や白血病といった腫瘍にも進行し、命を奪ってしまう。
CAEBVの患者は1年にどれほど見つかるかというと、厚生労働省の調査によると、23.8人。見逃している患者を加味しても100人程度。非常に少ない数字であると新井先生は話した。

■CAEBVの問題点

新井先生はCAEBVのどういったところが問題か具体例を挙げつつ解説した。まず、診断が難しいこと。患者が最初に何らかの自覚症状が出て行く病院は皮膚科や内科、眼科、など実にさまざま。その中で、診察をする全ての医師がCAEBVの存在を知っていなければ、正確に診ることは難しい。
また、EBウイルスの検査には保険が効かないため、非常に高額の費用がかかることも問題点としてあげられる。なぜ保険が効かないのだろう。それは試薬がないからだと新井先生は訴える。「今、試薬を作ってくれる企業がありません。今後の改善点でもあります」と新井先生は続けた。また診断するための手順も非常に困難で、医師に負担がかかり、現状では丸一日、数人掛かりでラボに籠もることで初めてCAEBVであるかどうかが判明するという。全国でも数施設しか行えないこの診断が簡易化されてどの医師にもCAEBVと診断を下せるようになることが急務だと新井先生は話した。

■骨髄移植後の生存率

CAEBVの有効な治療法は現在、ただひとつ。「骨髄移植によって全身の免疫をリセットすること」だ。それでは骨髄移植によってどのくらいの患者がその後も生き続けることができているのだろうか。ここで新井先生は「移植時の体調が落ち着いている人、CAEBVの症状が進んでいない、発見間もない人ほど生存率は高いです」と話し、「そうでない人は、私の施設では1人も助かっていません。ですから、いい時期にいい状態で移植を受けることが必要です」と強調した。そして現在、新井先生は「いい状態」に体を引き上げられるようなクスリを研究中であることを明かした。
講演の最後に新井先生は「CAEBVと戦って、多くのことを私たちに教えてくれた松来さんのご冥福をお祈りします。CAEBVと戦う医療をつくることが私たちの使命だと思っています」と述べ、締めくくった。

《細川洋平》
【注目の記事】[PR]

特集