『ズートピア』バイロン・ハワード監督&リッチ・ムーア監督インタビュー ゼロから創りあげた世界の魅力 | アニメ!アニメ!

『ズートピア』バイロン・ハワード監督&リッチ・ムーア監督インタビュー ゼロから創りあげた世界の魅力

映画『ズートピア』のバイロン・ハワード監督、リッチ・ムーア監督にお話を伺う機会を得た。ズートピアの世界はどのように誕生したのか、その一端を紹介する。

インタビュー
注目記事
 
  •  
  •  
  •  
  •  
  •  
4月23日にディズニー・アニメーションの最新長編映画『ズートピア』が日本公開となった。3月の全米公開ではディズニー・アニメーションとしては過去最高のオープニングを切り、4月23日までに全米興収は3億ドルを超えるメガヒットになっている。
作品の人気の秘密は舞台となるズートピア、そこで暮らすキャラクター達の魅力だ。ズートピアは動物たちが暮らすハイテクな文明社会だ。主人公のジュディは立派な警察官になる夢を持ってズートピアにやってきた。だが、ウサビは農場でニンジン作りをするものという世間の考えが立ちはだかる。ところが動物たちの連続行方不明事件に巻き込まれたジュディは、詐欺師でキツネのニックと共に、ズートピアの危機に立ち向かうことに・・・。

誰もが引き込まれてしまう物語、見たこともないような素敵な街ズートピアを創り出したのは、ディズニー・アニメーション・スタジオの才能豊かなチームだ。それを率いたのが、バイロン・ハワード、そしてリッチ・ムーアの両監督である。ハワード監督は『ボルト』(2008)で長編監督デビュー、2010年の『塔の上のラプンツェル』でその評価を固めた。ムーア監督はテレビ、映画で数々のキャリアとアワードを重ねた後、2012年に『シュガー・ラッシュ』で大ヒットを放つ。
こんなキャリアを聞けば、映画の面白さにも納得だ。今回、アニメ!アニメ!では、バイロン・ハワード監督、リッチ・ムーア監督にお話を伺う機会を得た。ズートピアの世界はどのように誕生したのか、その一端を紹介する。

abesan■ 小さなアイディアから始まり、見たことがない動物たちの世界が実現

――アニメーション映画は昔話であったり、小説などの原作から翻案することも少なくありません。そのなかで『ズートピア』は、そうした原作を持たず、ゼロから創りあげました。

バイロン・ハワード監督
確かにそうですね。『ズートピア』は真っ新な状態から作った作品です。スタッフと協力しながらゼロから立ち上げました。それは素晴らしい経験でした。もともとは、とても小さなアイディアから始まりました。それがどんどん大きくなって、今の映画になったのです。

――他の作品にない苦労などはあったのでしょうか?

バイロン・ハワード監督
例えば私は前作で『塔の上のラプンツェル』を監督しました。これは皆さんがご存知なように昔話がベースになっています。そこで、作品を制作する中で何か問題があった時には、原作をもう一度照らし合わせて見ることもできます。
ところが『ズートピア』は、映画で何を伝えるのか? 世界観は何なのか? キャラクターたちはどんな経験をしてきたのか? 決められた枠などはありません。時にはそれが原作のあるものよりは難しく感じることもありました。

――その新たに創られた世界でも特に魅力的なのは、ズートピアの街そのものです。ズートピアはいくつも地域に分かれており、そのひとつひとつが独創的です。これらの街にモデルはあるのですか?

リッチ・ムーア監督
確かに世界各地に存在する様々地域をモデルにしている部分もあります。例えばレインフォレスト地区はアマゾンの熱帯雨林です。ツンドラ地区は北極圏だけでなく、ヴィザンチン調のドームを描いてロシア的な雰囲気も取り入れています。
ただ私たちが目指したのは、いままで誰もみたことがない動物たちの世界です。これまでに動物作品はたくさん作られてきました。そのなかで子ども心にも不思議に思ったこともあります。絵本などを読みながら「ホッキョクグマがここにいるけれど、こんなに暑かったら辛くないかな?」とかですね。そこで現実に根差したホッキョグマが暮らしやすい環境はどうかを考えました。その結果、寒くて、雪が降っている地区を用意しました。

――街の中が、様々な地区に分かれているのはなぜですか?

リッチ・ムーア監督
ズートピアはいわばニューヨークのようなもので、ひとつの街の中に、さらにいくつもの区画を設けています。それぞれが文化的、民族的な背景が異なって、特徴があるように表現しています。


■ ジュディは典型的なヒロインと少し違う

――あれだけ豊かな世界やキャラクターがあると、今回のジュディ以外の物語が監督の頭の中にあったりするのでしょうか?

リッチ・ムーア監督
おっしゃるように大きな世界なので、作品の制作にあたってはいくつもの方向性や可能性がありました。そのなかで今回気にしていたのは、ジュディがズートピアに魅了されたように、観客も彼女に魅了されることです。より良くなりたいと願うジュディの気持ちを観客が共有することです。私自身も子どもの頃映画を観て、映画の登場人物と経験を共有して心が鼓舞された経験があります。それが今回描いた中ではジュディであったり、ニックであったり、クロウハウザーだったりします。実際にこれを選ぶのはとても難しい選択でしたけれどね。

――そんなジュディも、作中で完璧ではありません。作品全体には、思い込みや偏見に対するメッセージが乗せられているように感じます。それはジュディの中にもあり、また観客にも問うているように見えます。

バイロン・ハワード監督
作品を観た観客からは予想外に考えさせられる映画だったというコメントをもらいます。それを聞くと私は「してやったり。」と思います。
ジュディは一見はディズニーの典型的なヒロインに見えるかもしれません。勝ち目のない弱者である彼女は大きな夢を追って大都会にやってくる。これは今までの物語像と似ています。ところが憧れていたズートピア、何もかも完璧に見える表面の下には、よりもっと複雑で、厳しい現実が隠されていたわけです。そういったものに彼女は気づくことになります。
それと同時にジュディは、今回の旅路を通して、自分自身でも気づいていなかった自身の欠点に気づきます。そうした欠点を受け入れることで、よりよく成長して行くわけです。

――観客はその経験も共有するわけです。

バイロン・ハワード監督
そうですね。世の中は思っているほど白黒はっきりしていないグレーの領域みたいなものが存在する。それを世の人に受け取って欲しい。それが今回の作品に込められたメッセージのひとつです。

『ズートピア』
上映中
http://www.disney.co.jp/movie/zootopia.html



《animeanime》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集