本インタビューでは、総監督を務めた瀬下寛之氏とエグゼクティブプロデューサーの守屋秀樹氏の話を通じて、アニメーション制作を務めたポリゴン・ピクチュアズと作品の魅力を解き明かす。
インタビュー後編では、『亜人』ならではの制作フロー、さらにそれを作りだすポリゴン・ピクチュアズの強さの秘密に迫る。
『亜人』 公式サイト http://www.ajin.net/
■ 新たな挑戦、モーションキャプチャーの活用
―『シドニア』を見たときに多くの人が相当驚きました。テレビで見るのを劇場に引き伸ばしても全然遜色がない。そこからさらに2年。『亜人』になって、より進化した部分はありますか。
守屋
スタジオでいろいろな技術を取り入れようとしてくれました。舞台となる場所の写真を撮って、それを自動で立体化するソフトを試したり、演技の際の声優さんの表情を動画にとって、キャラクターモデルの動きに自動で取りこもうとしたり・・・。結局、スムーズな制作工程に入れるには問題があって、今回は両方とも見送りました(笑)。今回、大きいのはモーションキャプチャーを本格的に制作フローに取り入れたことですね。『シドニア』と一番違うのは、そこです。
―IBMの動きがモーションキャプチャーなんですね。
瀬下
一部モーションキャプチャーです。IBMだけでなく、様々な場面でモーションキャプチャーを使っています。ただ、手付けのアニメーションの調整が入っていないショットは基本的にはありません。モーションキャプチャーのままだとノイズ的な情報量が過多で生々しくなり過ぎます。セルルックという様式に合わないんです。ですから、アニメーターの手付けの感覚を入れて、そこを調和させています。
瀬下
あとプリプロ手法も少しずつ進化しています。本作の音声収録はプレスコ方式ですが、今回は参考用の映像も流さず、とにかく台本だけでやらせてもらいました。
『シドニア』の2期から本格的にプレスコ収録を行っているのですが、すごく手応えがあったので『亜人』もプレスコにしました。声優さんが絵のタイミングを意識せずに、自然な演技でしゃべる、振る舞う…ことができ、説得力に溢れる音声にななりました。その声と演技をベースにモーションキャプチャーやアニメーションが作りますが、アーティストが演技に刺激を受け、相乗効果によってすばらしい結果が得られました。
守屋
プレスコによって最終的な映像クオリティーは上がると考えています。声優さんの迫真の演技に合わせてアニメーターが映像を作るので、より表現が自然で豊かになると思っています。
瀬下
重要なのは、ストーリーリールです。我々は、まず場面設計を綿密に行い、それから画面を作っていきます。場面設計に基づいたセットデザインとプレスコによる音声を基に、コンテを作成せずに、モーションキャプチャーを進めるシーンもあります。
プレスコ音声、場面設計、モーションキャプチャーの成果に加えて、手描きのスケッチやアニマティックス(*)などの素材を編集し、ストーリーリールを作っています。これがプリプロ以降の作業の設計図であり模型の役割を果たします。
*3DCGによる動きの検証
―そこからどんどんディテールをアップしていくということですか。
瀬下
そうです。いわゆるプレビジュアライゼーションといわれる手法です。
守屋
それがリアリティーとかドキュメンタリータッチに相当大きく貢献しています。
瀬下
そうですね。この作品には合うやり方なんですよね。
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