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『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第4回

『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第4回 藤津亮太氏による連載の最終回。

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■『G-レコ』後にこの撮影処理をどう使うか

――「脇フィルタ」みたいな名前で広まるとおもしろいですよね。

吉田
今回の効果はボタン1発でできるわけではなく、カットごとに脇さんが調整してくれるんですけど、そこには脇さんの好みも結構入っているわけです。ということは、この効果を使う撮影さんによっても違う使い方が出てくるだろうし、スタッフのオーダーの仕方でも違う使い方が出てくると思うんですよね。そうなっていくのが、一番いいんだろうなあって思いますね。


それは考えます。例えば監督が「もっとこういうふうにしたいんだよね」ってイメージを持ってもらえると、同じ処理を使うにしても、ルーチンワークじゃなくなって、よりノッて仕事できると思います。

吉田
アニメーションって結局、総合的なものなんですよね。作画があり、美術があり。そういう各パートが、それぞれの絵を読み合って、完成画面を考えていくっていうことを考えれば、それぞれのパートがこの撮影処理のそれぞれの試し方を要求してくる気がします。とはいえ『G-レコ』がどこまでできていたかは別としても、こういうことはどんどん試すべきだと思うんですよね。試すことが呼び水になって状況が変わっていく可能性はあるので。だから『G-レコ』でやりました、で終わりではなくて、次の一手も考えなきゃいけないんですよね。


そうですね。僕らも、よりよい表現をどうやって獲得するか、考えるのを止めちゃいけないと思います。


――今回、お話を聞いていると、『G-レコ』での挑戦は、スペシャルな集中管理体制ではなく、今のTVアニメの中で何をできるかを考えているというところが大事だったのかなとも思いました。

吉田
そうですね。集中管理した映画や、短編などの作り方もいいんですけれど、「そうしたら富野さんの作品みたいに大人数出てきて、ワーッてやるような作品絶対作れないよ」とは言ってるんですよ。TVの場合は、全編ではなく、要所で集中管理的な作り方を入れて、ポイントを押さえていくほうがいいと思うんです。第19話のランニングなんかは、富野監督が「僕ね、これね、全部違う走りにしたい」って言って、僕が「じゃあ、やっちゃいますか」ってやったんですけど、誰でも描けるというわけにいかないんで原画は倉島(亜由美)さんにお願いして、最後に僕が入れるという集中管理的なやり方をやったシーンなんですよね。
僕は、主人公が主人公であるために、周囲にキャラクターがいて、立体的な視点がある作品が好きなんです。そういう意味では『G-レコ』は明らかに立体的な作品でした。人数がすごく多くて、作業している時は、死ぬかと思うぐらい大変でした(笑)。でも、完成した映像を見て、作画についてある種の不安を持っている人が、まだアプローチの方法はあると思ってくれればうれしいですね。


そうですね。


[終]

[プロフィール]
□ 吉田健一(よしだ・けんいち)
アニメーター。主な作品に『OVERMANキングゲイナー』(キャラクターデザイン・アニメーションディレクター)、『交響詩篇エウレカセブン』(キャラクターデザイン、メインアニメーター)、『茄子 スーツケースの渡り鳥』(作画監督)などがある。

□ 脇顯太朗(わき・けんたろう)
主な参加作品に『革命機ヴァルヴレイヴ』(撮影監督補佐)、『GOD EATER』(撮影監督)などがある。





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発売日:2015年8月26日
発売元:バンダイビジュアル 販売元:バンダイビジュアル

Blu‐ray[特装限定版] 7800円(税抜)
DVD 5000円(税抜)

『ガンダム Gのレコンギスタ』
(c)創通・サンライズ・MBS
《藤津亮太》
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