■ 豊永真美[昭和女子大現代ビジネス研究所研究員]フランスでの日本の劇場アニメの上映を見ると、2000年代はジブリ一色だったことがわかった。00年代に制作されたジブリアニメはすべてあまり期間を置かずに、フランスで劇場公開されている。ジブリがアニメ制作を行わないことを発表した現在、ジブリの穴を埋める作品が日本から出てくるかが問題となってくる。本原稿では、フランスの映画市場を概観し、フランスのアニメ市場、そしてその中の日本アニメの状況について紹介したい。前編はフランスの劇場用アニメの動向と日本の作品の上映状況を紹介する。□ フランスの人口は日本の半分だが、映画人口は日本より多いまず、最初にフランスの劇場映画市場の状況を見てみよう。フランスの人口は6603万人で日本のほぼ半分である。但し、映画館に行く映画人口を見ると、フランスが日本を上回り、劇場映画の需要が高いことがわかる(図1)。2014年にはフランス人は老若男女を含め1人平均3.1回映画館に足を運んでいる。図 1 フランスで特徴的なのは00年代を通じて映画人口が増加していったことである。映画人口の増加の背景には、シネコンが定額見放題の映画パスを普及させてきたこともある。2000年に始まったこの制度は主要な映画チェーンに普及している。2009年には約30万人が何らかの映画パスを持っているといわれている(http://fr.myeurop.info/2014/01/02/cinema-en-europe-quel-prix-12761)。また 古い統計となるが、フランス上院に報告されたところによると、制度が導入されて間もない01年で、大手チェーンのUGCでは観客の25%が映画パスをもっていたとされている(http://www.senat.fr/rap/r02-308/r02-3089.html)。映画パスしくみは次のとおりである。フランスの大手映画館チェーンのゴーモン(http://www.cinemasgaumontpathe.com/vos-cartes/le-pass/accueil.html)では、全国に100以上ある映画館で映画が見放題となるパスが1人月額21.9ユーロ、12歳以下の子ども1人と保護者の2人で29.8ユーロとなっている。子ども連れパスはもちろん1人で使ってもよい。映画の正規料金はパリのシャンゼリゼのゴーモンで12.9ユーロ、14歳以下が4.5ユーロとなっている。正規料金を払う大人の場合、1人用パスは月に2本見れば元がとれる状態となっている。フランスでもシニアや学生には割引があるので、パスで元をとるにはもう少し本数を稼がなくてはいけないが、それでも、映画好きにとっては、元をとるハードルはさほど高くない。このようなパスが普及したことにより、パスを持っている映画チェーンで上映している作品については、期待が薄い作品であっても時間つぶしのために見に行くことが増えている。このような、映画パスの普及もあり、大ヒットするフランス映画が複数出てきた。2008年には「シュティの地へようこそ(Bienvenue chez les Ch'tis)」が2044万人、2011年には「最強のふたり」が1948万人、2014年には「ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲(Qu'est-ce qu'on a fait au bon Dieu ?)」が1234万人と大ヒット作が続いた。このような大ヒット映画の存在もフランスの映画動員を増やす要因となっている。一方、独立系映画館は集客に苦労している。いったんパスを持ってしまうと、パスの対象外の映画をみることが少なくなる。このため、独立系映画館も大手チェーンの映画パスの対象となることが増えているが、大手チェーンと比較し、集客に苦労することが増えているといえよう。[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事]
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