9月3日、早川書房は第3回ハヤカワSFコンテストの大賞に小川哲氏の『ユートロニカのこちら側』が決定したと発表した。また佳作には、つかいまこと氏の『世界の涯ての夏』が選ばれた。最終選考は、東浩紀氏、小川一水氏、神林長平氏に早川書房の編集部長である塩澤氏が協議のうえ行った。ハヤカワSFコンテストは、日本のSFの振興を目的に早川書房が実施する「ハヤカワSF Project」の一環である。未発表のSF小説を対象とした新人賞として、2013年にスタートした。日本SF新人賞が2009年に終了していることもあり、SF分野で数少ない新人賞となっている。募集対象は中篇から長篇まで、応募作品の中から最も優れた作品に大賞が与えられる。大賞受賞者は賞牌、そして副賞として100万円が贈られる。さらに受賞者にとっては、受賞作の刊行が大きな魅力だろう。受賞作は早川書房から単行本と電子書籍の双方で刊行される。さらに英語、中国語に訳されたデジタル版の世界配信も行う。自身の作品を一挙に世界に広げる機会となる。また、協力企業による映画化やゲーム化、アニメ化なども目指す。受賞だけに終わらない、作家支援や作品展開の広がりを目的にしている。大賞を受賞した小川哲氏は、1986年生まれで現在は東京大学大学院の博士課程に在学している。『ユートロニカのこちら側』では、個人情報をすべて明け渡し、模範的な生活をする事で何不自由ない暮らしが保障される都市を舞台にユートピアの是非を問いかけた。また、つかいまこと氏は、1969年生まれ。大阪府在住の会社員。異次元との接触現象〈涯て〉の出現で侵食される地球を舞台にその膨張を食い止めようとする人々を『世界の涯(は)ての夏』として描いた。贈賞式は2015年11月19日に行われる。また10月29日発売の「〈SFマガジン〉12月号」に選評が掲載される。
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