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「刀剣乱舞」シナリオ担当・芝村裕吏が語るキャラクター設定とは

様々なコンテンツを「文化史」という枠組を用いて研究するコンテンツ文化史学会は、2015年第1回例会「歴史的遺物とコンテンツ」を日野市東部会館で行った。

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■ 和泉守兼定には2パターンの設定がある

休憩をはさみ、来場者からの質疑応答に移行します。キャラクターの服装に着目した質問には「キャラクターデザインには2パターンあります。まず拵えを服装化した蜂須賀虎徹のようなパターン。もうひとつは拵えをまったく使わなかったパターンです。どう見ても後からつけたと思われる拵えや、楽しくないエピソードによってつけられたものだったりすると、刀も喜ばないと思いますので」と回答。
「強烈な逸話が残る刀はありますか?」の質問には、「ありますが、批判するためにゲームを作っているわけではないので…」と語った上で、宮司さんに売られてしまった奉納刀のエピソードが語られました。芝村氏いわく、「美しい刀であればあるほど強烈な逸話が多い。本当に切れる刀は実績しか残らない」のだとか。

土方歳三が所有していた和泉守兼定について「史料にずれがあり、2尺3寸か2尺8寸でスタッフとも揉めました。2尺8寸の方が妥当だと思ったのですが、争いになるから辞めようという話になり、設定を2パターン用意しました」と芝村氏。
「ではうちの歴史館にあるレプリカの2尺3寸の和泉守兼定は『刀剣乱舞』の兼さんではない?」と松下氏が質問すると、「そこはキャラに連続性があるので」とフォロー。同じような問題として、各地の博物館から「これはうちの同田貫ですよね?」という問い合わせを受けるのだとか。「同田貫は量産型の実戦刀なのでどれとは断定できないです」と柴村氏。

■ 芝村流コンテンツ制作術

芝村氏いわく、歴史を扱ったフィクションには3つのパターンが存在するとのこと。一つ目は人物にあやかること。二つ目は現代的解釈に合わせること。三つ目はミッシングリンクとなっているところを埋めることだと語ります。「『刀剣乱舞』はさまざまな歴史コンテンツの最後発のコンテンツです。なのでこれらを全て外したアンチパターンで作られています」と芝村氏。有名な人物をあえて出さなかったのもそのためであるとのこと。「土方歳三に語らせるのではなく、刀に語らせたかった」と言います。

「とはいえ男性からみたら(刀剣という題材そのものが)ハードル高そうにみえる」という司会者の疑問に対し、小栗さんは「妄想の余地があるからそうは思わなかった」と回答。芝村氏も「開発陣も妄想できる空白を大事にしました。プレイヤーのみなさんが物語をつくって、コンテンツからコンテンツが生まれればいいなと思います。だからカップリング誘導システムは作りません」と回答。自由に想像してもらったほうが『刀剣乱舞』という共栄圏は繁栄するし、ここから新たなクリエイターが生まれると思っているとのこと。
さらには次の新しいコンテンツが生まれ、日本の文化振興になればと熱く語りました。「余白ありすぎるように感じる」という意見には、「今の二次創作のレベルはとても高く、ツイッターなどのSNSで「リアクション芸人」のようなやりとりをしているから鍛えられています。そういうハイコンテクストな土壌があるから成り立っているのです」と芝村氏。

「『刀剣乱舞』が廃れたとしても、10年後に再評価されるかもしれないし、逆にこの時代の徒花なのかもしれない」と語る芝村氏。最後に「歴史的遺物」とコンテンツについて、「史実は時代によって捉え方が変わっています。新解釈が今に至り、歴史コンテンツの最後尾として『刀剣乱舞』があるのです」と締めくくりました。
「リップサービスはしません」と言いながらも終わってみれば『刀剣乱舞』の裏話がたくさん飛び出す例会となりました。芝村流歴史コンテンツ制作術を踏まえた上でプレイをすると、その面白さがさらに深まるのではないでしょうか。  

[/INSIDE より転載記事]
《みかめ@INSIDE/inside-games.jp》
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