3月21日、AnimeJapan 2015のクリエイター講座「アニメーションの美術講座」が開催された。アニメ背景美術会社・GREEN 代表取締役の脇威志さんが講師を務め、アニメの美術とはどういうものなのかを、自身の経歴や代表作の『蟲師』に紐づけて解き明かしていった。 脇さんはサンライズ、ボンズ、東映動画(現・東映アニメーション)など、多くの制作会社で30年以上にわたり作品を手がけてきた。1986年に背景会社のGREENを設立。2006年にはテレビアニメ『蟲師』で東京アニメアワード美術賞を受賞し、業界内外で高い評価を得ている。そのような経歴を持つ脇さんだが、業界に足を踏み入れたのは26歳からと、比較的遅い時期にキャリアをスタートさせた。当時の背景美術は筆を使った手作業が中心で、絵の具や紙の乾き具合にも細心の注意を払わなければならず、非常に難しかったそうだ。その職人技の世界を垣間見て、「自分も技術を習得したい」と憧れを抱いたことが、長年仕事を続けられた理由の一つだと明かした。『蟲師』に話が及ぶと、アニメ化の企画書に「この作品は背景が主役です」と記されていたことから参加を決めたというエピソードが飛び出した。また、社名にGREENと名付けるほど自然を描くのが好きだったこともあり、日本の原風景を思わせる原作も魅力的だったと語った。ワークショップでは、参加者に事前提出してもらった作品に触れながら解説を加えていった。その中でも、脇さんがよく口にしたのは「メリハリをつける」という言葉だ。アニメの背景は数秒しか画面に映らないこともあるため、見た瞬間に何か訴えかけてくるものがなければならない。宮殿を描くのであれば張り詰めた空気や静寂さ、ゴミを描くのであれば臭いや不快さを感じさせるものが優れた背景なのだと言う。それを描くためには、線の太さを均一ではなく変化を加えたり、明るさにも違いを持たせるなど、常に「メリハリ」を意識することが重要になる。そして自分が何を描きたかったのかを、一目見ただけで伝えなければならないと説いた。後半では『蟲師』で描いた作品を見せながら、ラフでイメージを作ってから背景を完成させるまでを説明した。さらに脇さんが手作りした小道具も写真で披露された。主人公・ギンコの木箱をはじめ、薬研や顕微鏡といった小道具を自らの手で作り上げることは、作品世界の理解に役立ったそうだ。そのほか、質疑応答ではデッサンの重要性や作業のデジタル化など幅広いテーマが議題に上がり、充実した講義内容となった。最後は立ち見も出た大勢の受講者に向けて「背景美術は作品のイメージ作りをして、世界観や自分の色合いを決めていく楽しさがある」と魅力を語り、「やりたいこと、知りたいことを明確にし、自分を追求していくのがよいと思います」とアドバイスを送った。[高橋克則]
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