「攻殻機動隊 ARISE Alternative Architecture」 シリーズ構成:冲方丁、新たな挑戦を語る | アニメ!アニメ!

「攻殻機動隊 ARISE Alternative Architecture」 シリーズ構成:冲方丁、新たな挑戦を語る

2015年4月から放送される『攻殻機動隊 ARISE Alternative Architecture』は劇場上映された4部作を再構成しての放送となる。そのシリーズ構成を担当した冲方丁さんに、テレビシリーズについてお話をうかがった。

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2015年4月より『攻殻機動隊 ARISE Alternative Architecture』がテレビ放送開始する。『攻殻機動隊ARISE』は、原作や従来のシリーズでは描かれなかった公安9課結成前夜を描くストーリーだ。
本作は2013年から2014年にかけて4部作として劇場上映された『攻殻機動隊ARISE』をシリーズ構成の冲方丁さんの初期案に基づき再構成する。さらに2015年夏公開予定『攻殻機動隊 新劇場版』に繋がる完全新作エピード2話を加える。新しい見せ方、映像にファンのファンの期待も高まりそうだ。
このインタビューでは、脚本・シリーズ構成を担当する冲方丁さんにTVシリーズならではの見どころ、新規エピソードの注目ポイントをうかがった。
[取材・構成=沖本茂義]

『攻殻機動隊 ARISE Alternative Architecture』
http://kokaku-a.jp/tv/index.html 

■ テーマは「敵」

abesan―劇場公開され「Border」シリーズは「60分4話」という構成でしたが、TVシリーズ化にあたり物語をどう再構築されたのでしょうか?

冲方丁氏(以下、冲方)
まず「Boader」シリーズの特徴として、各話ごとにそれぞれの監督の個性が出ていて、結果的に静かな話とアクションメインな話が入れ子構造になっていたんです。その“緩急”をTVシリーズでも活かそうと思いました。たとえば新規エピソードが「アクションが派手な話にしよう」ということだったので、TVシリーズではBoader4を冒頭に持ってきて時間軸を入れ替えるなど工夫しています。
そもそもがTVシリーズとして再構成しつつ劇場版にもドッキングできるよう構成してくれというメチャクチャなオーダーで(笑)。今回、『S.A.C.』をやられていた藤咲淳一さんにもご協力いただきました。

―新規エピソード2話は、この夏公開予定『攻殻機動隊 新劇場版』へと繋がる物語になるそうですね。

冲方
見どころとしては、素子と対になる「敵」です。その「敵」を通じて素子とこの世界がより浮かび上がるような構成になっています。素子というのは、混迷を極める新しい時代において「理想的な思想」を直感的に獲得している人なんです。その根底にあるのは「個」の獲得、それが自分であり続けるための保証であり彼女にとっての「殻」なんです。ネットで「個」の並列化が進む時代において、素子は「自我」にこだわり続ける。そんな素子と対になる存在として、セキュリティや個の壁を破壊し「自我」さえ放棄していくようなキャラクターをBorder4のエマとブリンダジュニアと違った形で出そうと思いました。

―現在、テクノロジーの発展により現実世界が『攻殻』の世界観に近づいています。そうしたなかでSF世界を描く工夫や苦労などは?

冲方
押井さんがやられた時代は、ネットもまだ浸透してなかった時代で「サイボーグとはこういうものであって」から説明しなければいけなかった。ですが現在は、日常のなかに滑りこませないとテクノロジーがテクノロジーに見えない時代ですね。たとえば素子の電脳空間のロビーはサイバーパンク調で複雑に描くよりも、ごくごく普通の部屋として描くほうが合理的です。複雑にしてしまうとアクセスした人が何をしたらいいかわからなくなってしまうので。
Border1で素子の電脳空間のロビーは、他者を受け入れることを前提としていないビジュアルになっています。でもそれが物語が進むに連れて、だんだん他人を受け入れていく形になっているんです。かつてのような「ザ・サイバー」というビジュアルは非常に難しくなっていますが、逆にそこで演出の遊びが生まれるんです。

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■ キャラクターの掘り下げ方

―従来のシリーズではあまり描かれなかった、若かい素子たちの姿も見どころです。「記憶を操作される」というモチーフは従来のシリーズでも登場しますが、まさか素子が騙されるなんて衝撃でした。

冲方
Border1では「弱い素子をいきなり見せてやれ」という狙いがありました。今までとは真逆の素子を描こうと。あれだけ「自我」にこだわり厳重にディフェンスを構築しているキャラクターは、かつて痛い目に合ったことがあるはず。記憶を改ざんされたことやサイボーグとしての生い立ちを描くことは、『ARISES』では避けて通れないだろうと。

―素子のほかには、スナイパーのサイトウがこれまでのイメージとギャップがあって印象的でした。

冲方
各人の若かいころを逆算して考えたんです。こいつはこうなるけどじゃあそもそも何を抱えていたの? それはどう解決されたの? というふうに職業や立ち位置から分析していった。
たとえばサイトウなんて孤高のスナイパーなので、戦争が終わった途端「お前はもういらない」と宣告されると完全にやることがなくなるんです。パージされて用済みになってしまう。それは若ければ若いほど腐るはずだと。やがて自分の能力、気概をすべて理解してくれる人があらわれて、信頼関係が構築されていくと青臭いことを言わなくなっていく。従来のシリーズがキャラクターの「完成形」を見せていたとすると、『ARISE』ではあえてそこを崩したわけです。

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《沖本茂義》
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