連載第108回高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 [取材・構成: 高浩美]■ アニメと舞台、ストーリーがシンクロ、いやおうなしに盛り上がる舞台『弱虫ペダル』の快進撃が止まらない、いや『弱虫ペダル』自体がブレイク中である。舞台版は今や最もチケットが取れない人気演目となっている。テレビアニメも現在放映中、ちょうどインターハイ3日目、今回、舞台もインターハイ3日目である。アニメは目下、ラストの激走が描かれている。また、アニメ、舞台だけではない。グッズはもちろん、カフェやWebラジオ、ゲーム等、多角的に展開している。聖地巡礼も盛んで小野田坂道が通う総北高校は架空の学校だが、その場所は千葉県佐倉市、ということで地元は『弱虫ペダル』を街起こしに利用している。また、インターハイは箱根だが、ここも”聖地”としてファンから熱い視線を浴びている。原作は2008年から連載中で単行本も現在は38巻まで刊行されている。自転車競技を通じて成長する登場人物たち、また、学校の枠を超えての友情や絆が描かれており、共感出来る要素が多い。また、主人公の小野田坂道はアニメや秋葉原が大好きな高校生だが、ちょっと気が弱く、内気な少年だ。彼を取り巻く同級生や先輩たち、またライバル校の面々も個性的かつ親しみやすい。偶然だそうだが、アニメと舞台、物語がシンクロ、合わせて観ているファンも多いと思うが、「アニメの、あの場面は舞台ではどうなるのか」等見所満載な舞台版になりそうだ。■ 1位と”敗者”、シビアだが、それが勝負、登場人物の数だけ”生き様”がある舞台の仕様はもはや、定番。天井から競技用自転車が吊るされている。放射状に左右3台ずつ、計6台。チームの人数も6人、象徴的だ。中央には富士山。インターハイの舞台は箱根、富士山がよく見えるコースだ。人が2~3人通れるぐらいの幅の”坂道”、これはマンパワーで自在に動く。この物語の中心である小野田坂道は「僕は友達がいない」と言う。秋葉原が大好きないわゆる”オタク”少年で運動とか体育とかにまったく縁がなかった。それが、同級生の今泉や鳴子に出会い、ひょんなことから自転車競技部に入部する。自転車で何かが変わるかもしれない、そんなうっすらとした淡い期待を抱いて、だ。インターハイは3日かけて行われる。各選手、一見、元気そうに見えるが疲労がたまっている。それでも走らなければ、結果は得られない。「誰よりも早くゴールした者が栄光をつかむ」のだ。マラソン、100m走、そして自転車競技しかり。努力するのは当然、いや努力したからと言って1位になれる訳ではない。シビアな世界である。総北学園、箱根学園、京都伏見、とおなじみの学校の他に、このインターハイ3日目で登場する広島呉南工業の選手が登場する。”呉の闘犬”と呼ばれる待宮栄吉、エースかつスプリンター、勝利に貪欲で凶暴な走りをすることで知られている。こういった”曲者”登場、一筋縄ではいかないインターハイ3日目の激走が始まる。
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