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「攻殻機動隊 ARISE」「進撃の巨人」トーク プロデュースの視点とは?@ゆうばり国際

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で「攻殻機動隊ARISE」と「進撃の巨人」という注目作品におけるCG技術の現状をキーマンが存分に語った。「CGアニメ大航海時代」のひとつだ。

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一方、「攻殻機動隊ARISE」の制作プロダクションであるプロダクションIGの石川社長のプレゼンテーションはやや趣が異なる。「運がいいというのはどういうことか、ということをキーワードにしてプロデューサー論を話してみたい」という言葉で始まったプレゼンテーションは、アニメ業界特有の下請け多重構造の指摘から、「攻殻機動隊 ARISE」へと進んでいく。
「ARISEでは原点回帰を心がけた。何かというとCGとアニメーションのハイブリッド。これ、実をいうとたいへんというか、めんどくさい。技術的な点はもちろんなんだけど、(CGサイドとアニメサイドの)人間関係を一つのチームとして作っていくのが大変。」と話す。「そして、今回はハイブリッドといいつつ、アニメーターが主流。20代でパトレイバーの作画監督を務めた黄瀬(和哉)ももう50代。彼を総監督して攻殻機動隊を作らせるのは今しかない」と黄瀬監督起用の理由を明かす。
「アニメーターには賞味期限があって、徐々に衰える。監督というか、自分がなりたいもの以上のものになるには、そこに向けて誰かが押すということが必要になってくる。それがプロデューサーと監督との関係。こうして制作がスタートする」

そして、話は、今年5月ロードショー予定の「百日紅」の誕生秘話へ。「百日紅」は、杉浦日向子の原作、原恵一監督の作品。「沖浦(啓之)がももへの手紙が終わった後、企画として持ってきたのがこの百日紅」。しかし、この話は一旦ボツにしたという。「原作を読んで、これを沖浦が監督で作ると10年くらいかかるなと思ったんですね。10年と年数の中で、沖浦の賞味期限は切れるなと」。
そして、今度は原監督から企画が持ち込まれる。ただし「百日紅」ではなく「合葬」だった。「合葬は、ちょっとダークな感じで、厳しいと思ったですが、原が百日紅と同じ杉浦作品を持ち込んできた。ここで、百日紅は行けるな、と思ったんですね。原監督が作れば、世界へ行けると」

こうして制作がスタートした「百日紅」だが「これほど丁寧に作っている作品はないんじゃないかな」と作品の出来に手応えを感じているようだ。
「プロダクションIG作品は、カンヌ、ベルリン、ベネチアには、ノミネートされた事があるのだが、アカデミー賞はまだない。この作品は、アカデミー賞の門を叩いて、入っ行ける最短距離にいるんじゃないか。今こんなことを言うと、みなさんなぁんだ、って感じだろうけど、「思い」ってないと、ビジュアルで実現した状況を描いていないと、絶対達成しない」と石川。

日本の長編アニメーションのアカデミー賞受賞作品は、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」のみである。「百日紅」がそれに続くことができるか注目したい。
[星野一軌]
《animeanime》

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