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堀義貴氏(ホリプロ代表取締役社長)インタビュー「デスノート THE MUSICAL」で世界を目指す

『デスノート』は善と悪の物語、普遍性があるから生き残れる作品[取材・構成:高浩美]■ 今、アニメ以外の日本の文化で外国で稼げそうなビジネスが見当たらない■ 観にきてくれる若い人たちが減る、だったらよそのマーケットを引っ張ってくる

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■ 観にきてくれる若い人たちが減る、だったらよそのマーケットを引っ張ってくる

演劇は敷居が高い、と思われがち。そこに風穴をあけようとしているのが、アニメ・コミック・ゲームを原作とした舞台、いわゆる”2.5次元ミュージカル”と呼ばれているジャンルではないだろうか。現在、観客動員も年々増加の一途をたどっている。2013年のアニメミュージカル(アニメ作品をテーマとしたミュージカル、ライブビューイング)のチケット売り上げはおよそ128億円(日本動画協会独自調べ)にのぼっている。
しかし、今後は少子化の影響もあり、日本の人口が減少していけば、たとえ相対的に増えたとしても、観客動員数や売り上げは、いずれは減少に転じる可能性がある。この問題はエンターテインメント業界だけでなく、日本全体の問題でもある。

「完全にデーターとしてわかっているのは人間が減っていく、ということ。経済の原則でいくと需要と供給、ですね。これから人口が減る、人間が減るってどこの先進国も経験したことがない。また、20年後や30年後の65歳は今の65歳とは明らかに可処分所得が違う、お金が十分に回っていかない状況になる。お金を使う人たちが減る、観にきてくれる若い人たちが減る、増えるものがひとつもないんです。だったらよそのマーケットを引っ張ってくる、拡大可能なマーケット、ニーズを増やす、それだけなんですね。高邁な発想ではないんです。人口が減ったら食えないんです」

この問題は特定の業界に限ったことではないが、特に演劇は観に来る人がいてこそ成り立っているジャンル。観客動員が減れば、当然のことながら立ち行かない。そのためには今のうちに手を打っておかなければならない。しかし、ライブエンターテインメントの強みは”そこに行かなければ観られない”ということ。
だが、国内だけのマーケットでは人口減少のため”先細り”状態にあるのは否めない。そこで海外のマーケットに打って出る、という選択肢しか残されていないのではないかと思われる。そしてもはや躊躇している時期ではなく、まさに”やるなら、今でしょ”なのである。そして、海外に打って出るには、タイトルが海外に知れ渡っているアニメやゲーム、コミック作品が最適なのではないか?という結論に達するのである。さらにその”コンテンツ”を自前で作り、ヒットさせるのが理想ではあるが……。

「理想を言えば、そうなんですね。でもヒットしている原作なら、マーケティング上は安心なんです。もし、全て自前でやって当たらなかったら……”チャラ”になっちゃう。リスクヘッジするために製作委員会方式をとる。理想、全部持ってるのは大事なんだけど、そうなかなか上手く行かないですからね」
長く上演されつづけ、観客動員数を誇っているミュージカル『テニスの王子様』やゲームからアニメ、コミック、舞台と全て”自前”で展開しているマーベラスの『幕末Rock』等、いくつかの成功事例はあるものの、ヒットさせるのは並大抵ではない。

「そういうのって本当にそんなに数はないですよ。でも、こういった(アニメ・コミック・ゲームを元にした)作品を実写化したり実演(舞台化)することってファンからすると、ものすごいアレルギーがある。上手くいかないとコテンパンですからね~。この『デスノート』にしても演劇関係者からは”このキャスティングは面白い”って言われていますが、原作ファンからの”これは違う”という書き込み、山ほどあります。」
「実は映画の時もそうだった。Lが松山ケンイチ……最初の反応、初日の舞台挨拶で”松山ケンイチさんです”拍手がパラ、パラ、パラ……”誰だ、あいつは?”って感じでした。で、その次が大ヒット舞台挨拶、終わったとたんにブワ~ッと(万雷の拍手が)くる訳です。わかんないんですよ、ホント、観てから考えて欲しい、アニメと同じ人は絶対にいないんだから。もう観てもらうしかないです」

舞台でも映画(実写化)でもキャスティングされた俳優がファンから”○○と違う”とか”イメージが壊れる”等のブーイングはついて回る。本当にそうなのかは誰もわからない。
しかし、やる側は俳優はもちろん、それに関わるスタッフも作品をリスペクトしているので、当初抱いていたイメージと違ってても、いざ観たら”ハマってるな”ということはよくあること。観る側はよい意味での裏切りを期待したいものである。そして制作側はエンターテインメント業界でもアニメ業界でも、とにかく、次の作品を世に送り出さなければならない。

「いつまでも大量生産なんて出来ませんからね。下手したら、例えばアニメも”あれっ”って気づいたらよその国のアニメばっかり観てることになっちゃうかもしれない訳ですよ。どの業界もそうだと思いますが”お金持ち”にならないと人材が来ないですから」
《高浩美》
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