テレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」劇伴作家:菅野祐悟(音楽インタビュー後編) | アニメ!アニメ!

テレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」劇伴作家:菅野祐悟(音楽インタビュー後編)

TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』の劇伴を担当された菅野祐悟氏に、音楽に対する意気込みやその創作スタイルを語っていただいたインタビューの後編をお届けする。

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テレビアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』の劇伴を担当された菅野祐悟氏に、『ジョジョ』の音楽に対する意気込みやその創作スタイルを語っていただいたインタビューの後編をお届けする。
後編では、世界観を表現するための研究と創意やアニメーション制作スタッフとのやりとりなどが話題となった。
[取材/構成:高瀬司]

ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースO.S.T「Departure」
音楽:菅野祐悟

7月30日(水)発売

■ 世界観を表現するための研究と創意

―第3部で独特なところというと、世界の様々な場所を旅するロードムービーである点が挙げられると思います。特にエジプトが舞台として重要な場所になっていますが、音楽面ではそういった国や風土の変化に対する意識はあったのでしょうか。

菅野祐悟氏(以下菅野) 
制作にあたってエジプトの音楽は研究しましたね。実際の曲にも、エジプト音楽で使われる楽器やエジプト音楽特有の音階などを取り入れています。「砂漠が広がっている国」という漠然としたイメージからエジプトを捉えるのではなく、エジプトの風土がどのように音楽の中に息づいているのかを知りたいと思い、僕なりに聴きこみを行いました。
また、『ジョジョ』のアニメには砂漠の景色やオリエンタルな街並みといった大きな風景としてのエジプトと、人々の生活が営まれる狭くてパーソナルなエジプト、その両者が描かれることになるので、大きい世界観のエジプトを表現する音楽と小さい世界観のエジプトを表現する音楽を作り分けていくようにもしています。

―菅野さんは多作なコンポーザーとしても知られていますが、他の作品から『ジョジョ』の特異な世界観へと意識を切り替える際のご苦労などもあるのでしょうか。

菅野 
僕はスケジュールがどれだけタイトなときでも、音楽の制作はひとつの作品に集中して進めることにしているんですよ。必ず期間を区切って、複数の作品の音楽制作を同時並行で行うということはしません。作品の世界観に没入することで、その作品のイメージに合った楽曲が浮かびやすい状態を作りたいからです。
なので『ジョジョ』の仕事をしている間は作曲をしていない何気ない時間も常に、頭の片隅には『ジョジョ』のイメージが流れ続けていますし、そうして集中力が高まったところで一気に曲を書き上げます。
普段から映画を観るのは好きなのですが、『ジョジョ』の制作期間中にはプライベートの時間でも、作品へと気分を寄せるためにエジプトが舞台になっている映画や『ジョジョ』に通じるホラーやサスペンス風の映画を観るようにもしていましたね。

―オランウータンの船(ストレングス)や呪いの人形(エボニーデビル)のエピソードのような、ホラーテイストを含んだ楽曲も印象的でした。

菅野 
『ジョジョ』のホラー回には、ティム・バートンの映画に近いイメージを持っています。ティム・バートン映画の音楽を手がけるダニー・エルフマンの曲を直接参照したというわけではないのですが、ティム・バートン作品特有の、メイクや舞台美術にも入念で凝った装飾をほどこした、シュールでコミカルでホラーな不気味な雰囲気に演出された世界観のイメージは音楽面でも参考にしました。

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■ スタッフから受け渡される熱量

―それぞれの楽曲に対する制作サイドからのオーダーはどのようなものだったのでしょうか。

菅野 
音響監督の岩浪さんからはかなりの部分を任せていただけました。一曲一曲に関して直接お会いして打ち合わせを行っていますが、「この音楽がどんな場面で使われることになるのか」ということや「どういった雰囲気の曲にしてほしいか」に関する指定はあっても、使われる楽器や音色、リズムといった音楽の内容面に関しては必要以上に厳密な条件はなく、僕の創意工夫に委ねてくださった。これは僕にとってとても仕事がしやすい環境でしたね。

たとえばバトルシーンの曲ならば、「誰が・どういった状況で・どんな様子で」という指示によってそのシーンが具体的にイメージできるようにしてくださったうえで、僕のインスピレーションを制限するような窮屈な指定までは踏み込まないというバランス感覚がすごく的確なんです。僕が曲の位置づけに迷わず、それでいて最も仕事がやりやすい自由な舞台を整えてくださっている。
僕の仕事を信頼していただけた結果として自由に任せていただけているのだとすればすごくうれしいですね……といっても岩浪さんのほうでは、僕のクリエイティビティをいかに上手く引き出してやろうかという狙いでやっているだけかもしれませんが(笑)。

―(笑)。他の制作スタッフの方との打ち合わせはいかがでしたか?

菅野 
もちろんディレクターの津田尚克さんとも打ち合わせをしていますが、それは音楽のイメージをより具体的に固めるためという以上に、“作品制作にかける情熱をスタッフの方から分けてもらいに行く”という意味合いが強くあります。スタッフの方々がその作品にどのくらいの熱意を向けているのかというのは、直接お会いして打ち合わせをすれば絶対に伝わってくるものですし、そういう熱量を肌で感じることはクリエイターにとって一番のモチベーションになります。
今回の津田ディレクターはとても物腰の柔らかい方ですが、この作品に賭けているんだなという気迫はひしひしと感じ取れました。僕にとって打ち合わせは、監督が大事にしているその作品の中から、音楽の部分を自分に預けてもらうための儀式のような感覚があります。

―貴重なお話ありがとうございました。最後にこれからの中盤以降の展開へ向けて、ファンの方々にメッセージをお願いします。

菅野 
二回目に制作した音楽はすでに録音を終えて、この記事が公開される頃にはミックスも終わっていると思います。これから三回目の制作としてクライマックスのDIO戦などの曲を作っていくことになりますが、作品が盛り上がっていくにつれて音楽もさらに面白いものにしていくつもりです。
最高の環境を用意してくれた監督や岩浪波さんの期待を裏切れないという気持ちで、僕も持てる限りの熱量をかけて精一杯取り組んでいますので、2クール目以降も楽しみにしていてください。

『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』
/http://jojo-animation.com/

[オリジナルサウンドトラック]
ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースO.S.T「Departure」

7月30日(水)発売
音楽:菅野祐悟  価格:2,500円+税



[収録曲]
1.旅立ち/2.紫の茨/3.銀のツイスト/4.炎の呪術師/5.憩い/6.予兆/7.忍び寄る敵
8.闇の蘇生/9.高潔なる教皇/10.緊迫/11.秘めた思い/12.接近/13.哀情
14.急迫/15.悠然遊覧/16.忠義の従者/17.迷い/18.荒野に吹く風/19.激突
20.鎮魂/21.暗闇の進撃/22.決戦の時/23.スターダストクルセイダース
《高瀬司》
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