本作は1992年『超時空要塞マクロス』誕生から10年の節目を記念したシリーズ初のOVAである。マクロスシリーズの方向性を決めた重要な位置にある作品でもある。いまなぜ『マクロスII』なのか、マクロスシリーズと『マクロスII』を語っていただいた。
『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN- Blu-ray Box』特設サイト
/https://www.bandaivisual.co.jp/macrossII/
■ シリーズが女性に受ける秘密は?
―ヒロインの話もさせてください。お二方は、シルビーとイシュタル、どちらがお好きですか?
高梨実氏(以下高梨)
個人的にはイシュタルですね。
平井伸一氏(以下平井)
そういうとシルビーと言わないといけないかもしれませんが(笑)、僕もイシュタルですね。根源的に異星人の女の子は面白いですよね。
―シルビーはどうですか。パイロットではない主人公で、ちょっとそばかすの女の子、これもなかなかチャレンジングだなと思います。
高梨
やっぱり美樹本さんのなかで変えよう、ということだと思います。そばかすがあって金髪で。
平井
もしシルビーが、バルキリーのパイロットの女の子が主人公ということだったら、またストーリーが全然違ったかもしれませんね。ただ、主人公はヒビキ。レポーターのヒビキなんですね。
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―本作の当初のターゲットは男の子ですか?
高梨
そうですね。自分が男性ということもありますし、ある程度自分に寄せてつくったほうがやりやすいんです。誰か自分の知らないお客さんであろう人につくるというのはすごい困難なのです。男性が共感しやすいのは男性の主人公ですから、男性中心のターゲットと考えています。
―考えてみると、『愛・おぼえていますか』のときから、当初の想像以上に女の子のファンもついていたと思います。それは今に至るまでですが、それは何故ですか?
高梨
何ででしょうかね……。でも、河森さんは、男性だけに受けるのは嫌だと、なるべく広い人に観てほしいということは言っていますから。河森さんとしても、女性男性両方に受けたいというのが根底にあると思います。
女性のファンは、ドラマを中心に興味がありますから三角関係が響いたところがあるかもしれません。
平井
少しつけ加えさせていただくと、マクロスの三角関係は生々しいというか、見たら恥ずかしいけど、でも見てみたいなというところまで描いています。
アニメはそれまでどうやって戦うか、敵を殲滅させるかを描いてきたんです。けれど、普段はスポットをあてていない誰々と誰々がデートして、誰々が嫉妬して、誰々がすれ違うとか、そんなことを描いている。そこが女性にも受けているんじゃないかと、長い間シリーズをやらせてもらっていて感じています。
高梨
『マクロス』が始まる時に、「すごいSFメカものがはじまってすげー!」と思っていたら、あれー?イメージと違うんだけど……と思いつつ、10話か11話で、こんなことがしたいのかな? と分かりファンになりました。SFメカものだと思っていたのが、「好きだ、嫌いだ」。あ、こういうことがやりたいんだなと分かったんです。期待を裏切った良さでもあると思います。人間、期待通りだとあんまり嬉しくないですから。
平井
そうですよね。僕も中1くらいだったかな。あれ?今回は、バルキリー全然飛ばないよ! と思ったりして(笑)。
高梨
SFハードロボットアクションものだと思っていたら、恋愛ものという価値の転換、意外性もよかったですよね。河森さんは新しいことをしたい人です。
―『マクロスII』は最初からドラマを描いていて、みなさんもそれを期待しますよね。
平井
逆に言うと、『超時空要塞マクロス』のころに、まだまだ描き足りなかったヒロインと主人公のデートのシーンだとか、そういうのをたっぷり描いたのが『マクロスII』じゃないのかな。
―だからこそ主人公がパイロットでなくてもOKということなんでしょうか。
平井
そうですね、それで言えば、ドラマはパイロットじゃなくても出来ました。
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