■ 第2クールに向けて: ファンタジーと恋の間の物語海と陸に分かたれたファンタジックな世界観を舞台に、思春期のまっただ中を生きる少年少女たちが繰り広げる恋愛物語。その海と陸の間を繋ぐ重要な神事として、“おじょしさま”を乗せた小舟を出航させる儀式「おふねひき」がある。光たちが地上の学校へと通うことになった年、海と陸の大人たち同士の関係の悪化から、「おふねひき」が行われないことになっていた。そこで光たちのクラス担任の提案により、有志の手で“おじょしさま”を自作することになるのだが、そこへ妨害に入るのが、あかりと至との関係を変えたい美海とさゆの小学生コンビだ。完成した“おじょしさま”はここで一度破壊されてしまう。しかしその騒動は結果として、光たちと美海たち、そして陸のクラスメイトたちとの絆を取り結ぶ役割を果たすように働く。第5話において、美海が海中で光に抱きとめられながら気持ちを言葉にするシーンは、前半における一つのクライマックスと言えるだろう。海と陸の少年少女たちの気持ちを繋いだ“おじょしさま”は、その後も汐鹿生と漁協の話し合いの場でもう一度破壊される。それが光が地上で暮らしはじめる契機となるのだが、それと合わせて起こるのが地上への“ぬくみ雪”の降下である。海村はそれを災いの予兆とみなし、海神様の力が回復するまで冬眠する準備に入るという。また地上では光が、人々の海神様への信仰を取り戻すために再度「おふねひき」を決行しようと試みる。そしてここで引き起こった大きな変動の波は、周囲の人々の気持ちをも改めて問い直させてゆくことになる。最も激しく揺さぶられるのが、海村の4人の想いである。冬眠は人により起きる時間が異なるかもしれない。そうであるならば、もうみんなで同じ時間を共有することはできないかもしれない。そのタイムリミットへの焦りが、要のちさきへの告白、光のまなかへの告白、そしてちさきの光への告白を誘うことになる。ここから作品は、少年少女たちの不安定に揺れ動く感情の波間へとどのように潜り込んでいくのだろうか。『凪のあすから』が描き出す心の波形は、まだプロローグを終えたばかりだ。[高瀬司]『凪のあすから』/http://nagiasu.jp公式Twitter /@naginoasukara 画像:(C)Project‐118/凪のあすから製作委員会
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