■ 大人と子どもの間の恋: 複雑に入り組んだ恋愛物語『凪のあすから』の二つの軸である“ファンタジー”と“恋愛物語”。その恋愛物語の側は、それぞれの想いが干渉を重ねることで、複雑に入り組んだ波形を描き出している。メインとなるのは7人の子どもたちだ。皆の兄貴分としてしっかり者な他方で向こう見ずに突っ走ってしまうところもある正義漢・先島光、純真無垢で泣き虫ながらも実は一番はじめに新たな一歩を踏み出しはじめる向井戸まなか、みんなを見守るお姉さんポジションではあるけれども恋愛には臆病な比良平ちさき、クールで飄々としている分その本心が見透かせない伊佐木 要からなる海の世界の幼なじみ4人組に、陸に住む漁師の孫でありながら海の世界へと理解を示す物静かでマイペース、しかしどこか天然な木原 紡を加えた5人は中学校のクラスメイト。また、「おふねひき」で使う“おじょしさま”を自作する5人に関係してくることになる、普段は無口ながらも口を開けば毒舌な潮留美海と活発で威勢の良い久沼さゆは小学校のクラスメイトで親友。関係性の初期状態としては、光はまなかが好きで、しかしまなかは紡に特別な想いを抱きはじめている。光とまなかの関係を見守るちさきは本当は光が好きで、それを傍観している要も実はちさきが好き。また「おじょしさま」のやり取りを通じて芽生えはじめるのは、美海からの光への好意とさゆからの要への憧れ。思春期に差しかかったばかりの、大人と子どもの間の時間を生きる彼/彼女らが胸に抱く、恋愛感情以前のもっと危なっかしく繊細な感情の糸は、こうしてどれもこれもが一方通行で交わることがない。そこに光の姉であるあかりと美海の父である至の陸と海をまたぐ禁断の恋愛や、それに伴うあかりの父・灯による神主という立場からの抑圧をはじめ、海と陸との意地の張り合いといった、大人の世界の社会的事情までが多層的に折り重なってくる。自分では制御できない揺らぎ、名状しがたい感情を抱えながら、必死でもがき苦しむ思春期の少年少女たち。その心がひりつく恋愛模様は、海人の冬眠という事態を前に、新たな決断を強いられはじめている。[高瀬司]『凪のあすから』/http://nagiasu.jp公式Twitter /@naginoasukara 画像:(C)Project‐118/凪のあすから製作委員会
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