日本マンガの海外での人気が話題になる一方で、日本マンガの海外ビジネスは依然厳しい戦いを強いられている。ゲーム大手のスクウェア・エニックスが、自社運営の米国、カナダ、フランス向けの電子マンガ配信から撤退、5月23日に販売サービスを終了することが明らかになった。5月23日付で、北米向けの「SQUARE ENIX MANGA STORE」と、フランス向けの「SQUARE ENIX MANGAS BOUTIQUE」での新規のマンガ販売を停止する。すでにユーザーが購入したマンガはサービス終了後も閲覧できるが、海外向けの電子マンガ配信事業から撤退することになる。スクウェア・エニックスは、国内ではゲーム事業だけでなく、マンガ出版も手がけている。「少年ガンガン」や「Gファンタジー」などのマンガ雑誌や単行本を刊行、ウェブマガジン「ガンガンONLINE」も運営する。『鋼の錬金術師』、『ソウルイーター』、『黒執事』など数々のヒット作がある。海外向けの電子マンガ配信サービスは、こうした作品を自社が直接、販売する。2010年12月にスタートした。決済システムには、会員サイト「スクウェア・エニックスメンバーズ」の有料サービスが使われた。正規の有料配信を行うことで、海賊版流通の抑制や日本の翻訳マンガに対する読者の多様なニーズを取り込むことを目指していた。事業スタートから2年あまりとなるが、ラインナップがスクウェア・エニックスだけに限られており、ウェブサイトやサービスの認知度が広がらなかった。サービスの利用状況や事業規模は明らかにされていないが、ビジネス面では苦戦していたとみられる。両地域での電子書籍ビジネス環境の向上もあり、今後同社は他社の電子書籍サービスに作品を供給する方向に転換することになりそうだ。日本から翻訳マンガを直接、海外に向けて配信する試みでは、デジタルコミック協議会の支援を受けてきたJMangaが今年3月にサービス停止を発表したばかりだ。スクウェア・エニックスのサービス停止はこれに続き、日本からダイレクトにマンガを届けるビジネスモデルが相次いで挫折したことになる。当面は、各国の翻訳出版社などの活動に、今後の日本マンガのデジタル展開を期待することになる。国内では日本のマンガ文化を正確に海外に届けるため、日本と合わせたいち早い翻訳やリリースのために、海外向けの電子マンガのポータルの重要性が言及されることがある。しかし、JMangaとスクウェア・エニックスの挫折は、こうした日本マンガの海外展開のあり方にも影響を与えそうだ。SQUARE ENIX MANGA STORE (北米向けサイト)/ http://publications.na.square-enix.com/na/SQUARE ENIX MANGAS BOUTIQUE (フランス向けサイト)/ http://publications.eu.square-enix.com/eu/fr/
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