海外向けのアニメ展開に関心が集まる中で、日本の放送局とアニメ製作会社3社が手を組んで、新たなビジネスの挑戦をする。読売テレビグループ3社(讀賣テレビ放送、読売テレビエンタープライズ、エイデック)とアニメ製作会社の竜の子プロダクション、手塚プロダクション、ぴえろ、それにコンテンツ管理のQuarkproは協力して、北米向け日本アニメ配信サービスを目指す。来年4月からスタートする予定だ。7社は2012年12月1日をめどに、共同出資のLLP(有限責任事業者組合)ANIME SOLOSを設立する。この新会社を軸に事業展開を目指す。同社の出資金額は1500万円、設立より3年間を存続期間とする。また、アニメだけでなく、マンガの配信も事業目的に盛り込む。現在、北米地域のアニメ配信では、サンフランシスコに拠点を持つクランチロール、同じくサンフランシスコに本社がある日系のVIZ Media、それに日本アニメのDVD・Blu-ray Disc発売大手でもあるファニメーションなどが存在する。しかし、日本企業が協力して北米向けの配信に乗り出すのは、ニコニコ動画英語版以外にはない。そのニコニコ動画英語版は、現在は日本アニメの配信をほぼ停止している状況だ。競争が激しいことに加えて、他にないという点で野心的な試みだ。ANIME SOLOSの強みは、放送局と複数のアニメ製作会社が手を組んでいることだ。特に、今回のパートナーとなっている手塚プロダクションと竜の子プロダクションは、自社で作品の権利のほとんどを保有する作品が多い。また、讀賣テレビは近年テレビアニメに力を入れており、ぴえろは国内大手のアニメ製作会社である。参加会社が関わる作品は数が多く、そうしたネットワークはもしプロジェクトが広がれば、大きな力を発揮する。発表によれば、当初は各社が窓口や権利を持つ旧作を中心に無料配信する。作品やキャラクターの認知度アップが目的になりそうだ。さらにANIME SOLOSのユニークなのは、そこにクラウドファンディングの機能を盛り込むとしている点だ。作品に関心を持った視聴者から支援と賛同金を募り、将来的にDVDなどパッケージ化や商品化を目指すとしている。これは既存の海外向けアニメ配信サービスと大きく異なる。プロジェクトに参加する企業のひとつ手塚プロダクションは、今年7月に米国のクラウドファンデイングを利用して手塚治虫のマンガの英語翻訳のための資金を調達している。こうした経験も、ANIME SOLOSでは活かされそうだ。有料課金でもなく、広告ビジネスでもない、独自の事業開拓が注目される。
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