「Mの迷宮 『輪るピングドラム』論」 物語の説き明かし、その行方は | アニメ!アニメ!

「Mの迷宮 『輪るピングドラム』論」 物語の説き明かし、その行方は

レビュー 書評

2011年に「成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論」(キネマ旬報社)で、アニメ評論において大きな印象を残した山川賢一が、2冊目の書き下ろしの長編アニメ評論を上梓した。キネマ旬報社から発刊された「Mの迷宮 『輪るピングドラム』論」である。200ページ以上にもわたり、2011年の話題作『輪るピングドラム』について読み解き、考察をする意欲作だ。

正直最初に本書のタイトルを見た時は、随分と難しい作品を題材に選んだものだと思った。『輪るピングドラム』は、異才 幾原邦彦の『少女革命ウテナ』以来12年ぶりの新作である。前作と同様、作品には様々な隠喩、思わせぶりな言葉、演出が盛り込まれている。少し難しめの言葉で語るには事欠かない。
ところが、それは一種の罠である。テレビアニメ、そして劇場アニメの多くは、そもそも評論されることを考えて制作されない。しかし、『輪るピングドラム』は、当初から作品が観る者から読み解かれることを意図している節があるからだ。同時に、それは観る者を混乱させることを前提としている。
だから、魅力的な題材や言葉を拾って作品を語り始めると、それを語る者はたちまち迷宮に入り込む可能性が高い。解いても解いても真実に行きつけない、時として、見当違いの方向へ飛ばされることになる。

しかし、本作の著者の山川は、これを十分理解している。そのうえで敢えて『輪るピングドラム』という難物に挑む。タイトルを「Mの迷宮」としたことは、最初から『輪るピングドラム』が出口のない作品であることをを意識したものだろう。
だからこそ本作は、驚くほどの慎重さ、絶妙なバランスで『輪るピングドラム』の物語に分け入る。確定出来る事実、解釈出来る事実、結論の出せない事実の3つで作品を読み解き、さらにそこから縦横無尽に独自の論旨を展開していくのだ。
こうした長文の作品論は時として、作品を離れた文化論、社会論に陥りがちだ。本書が秀逸なのは、持論の展開にあたり決して作品から離れないことだ。一方で、作品を語るために『少女革命ウテナ』、『風の谷のナウシカ』、『新世紀エヴァンゲリオン』に題材を広げていく。それが最終的にまた『輪るピングドラム』に帰着する。
本書を読み終えた後で、『輪るピングドラム』、『少女革命ウテナ』をもう一度じっくり観てみたいと強く思った。それは評論の持つ重要な役割のひとつだ。「Mの迷宮 『輪るピングドラム』論」は、近年のアニメ評論として書かれた文章のなかで、もっとも読むべき価値のあるひとつだろう。
[数土直志]

「Mの迷宮 『輪るピングドラム』論」
著者 山川賢一
http://www.kinejun.com/book/detail/tabid/89/pdid/978-4-87376-395-8/Default.aspx

定価: 1575円(税込)
刊行: 2012年4月下旬
判型: 四六判
232ページ 
発行元: キネマ旬報社
《animeanime》
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