劇場版「RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]」幾原邦彦監督、木村昴、荒川美穂、三宅麻理恵座談会 ―劇場版を通して見えた”輪る”の意味 | アニメ!アニメ!

劇場版「RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]」幾原邦彦監督、木村昴、荒川美穂、三宅麻理恵座談会 ―劇場版を通して見えた”輪る”の意味

『輪るピングドラム』の公開10周年を記念し、前後編で制作された『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』後編が2022年7月22日に公開。アニメ!アニメ!ではキャスト3名と幾原邦彦監督にインタビューを実施した。

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『RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる』キービジュアル(C)イクニチャウダー/ピングループ(C)2021 イクニチャウダー/ピングローブユニオン
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  • 『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』場面カット(C)イクニチャウダー/ピングループ(C)2021 イクニチャウダー/ピングローブユニオン
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  • 『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』場面カット(C)イクニチャウダー/ピングループ(C)2021 イクニチャウダー/ピングローブユニオン
  • 『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』場面カット(C)イクニチャウダー/ピングループ(C)2021 イクニチャウダー/ピングローブユニオン

『輪るピングドラム』の公開10周年を記念し、前後編で制作された『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』。本作の後編が2022年7月22日に公開となった。

謎が謎を呼ぶ展開と、無数に張り巡らされた伏線で高い人気を集めたテレビアニメ『輪るピングドラム』。その劇場作品として制作された劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』は、テレビシリーズの物語をおさらいしつつも、テレビシリーズのさらに先の物語を描いているということで高い注目を集めた。

そんな本作も、後編にあたる劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる』にて完結。その公開舞台挨拶が2022年7月24日、幾原邦彦監督、木村昴、荒川美穂、三宅麻理恵によって行われた。

アニメ!アニメ!では本舞台挨拶直前の登壇者による座談会を実施。10年ぶりに携わる『輪るピングドラム』シリーズ、キャストの面々はいかなる心持ちで本作に臨んだのだろうか。そして、幾原邦彦監督はいかなるメッセージを本作に込めたのだろうか。ファン必見の本記事、堪能してもらいたい。

『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』場面カット

■キャラクターへの理解度が格段に上がった状態で臨んだ劇場版


――『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [後編]僕は君を愛してる』が公開となりました。劇場版シリーズも本作で完結となりますが、今のお気持ちはいかがですか?

木村:ついに来たか、という気持ちが大きいですね。公開されるまで、一刻も早く皆さんにこの作品を見てほしい、皆さんとこの作品を共有したいと思っていました。なので公開されたことが嬉しくて仕方がないです。

三宅:10年ぶりに再会した共演者の方も多かったのですが、当時のままの距離感で接することができたのがすごく嬉しかったですね。

荒川:テレビシリーズの時もすごくあたたかい現場だと感じていましたが、10年経ってもそこは変わらずで楽しく収録することができました。

三宅:テレビシリーズのアフレコの時に、同じセリフを何パターンも収録するということがあったんですよ。収録の段階ではどれがオンエアで使われるかわからない、オンエアを見てからどの演技が使われたのか知るといった感じ。それと同じ経験を劇場版でもすることができたのは、すごく懐かしいな、と思いましたね。

木村:あったあった、「どれが使われるんだろう、どれも使われなかったらどうしよう」ってヒヤヒヤするやつね。

三宅:そのドキドキを久々に味わえました。あれは懐かしい感覚でしたね。

荒川美穂(高倉陽毬役)

――制作方法にも当時を思い起こさせる部分があったんですね。10年ぶりの『ピングドラム』のアフレコいかがでしたか?

木村:アフレコが始まるまでは、今の自分の演技が幾原監督にどう聞こえるのかが気になっていました。自分ではこの10年で成長したと思っていますけど、監督からしたらまだまだかもしれない、そんなことを思っていましたから。でも、いざアフレコが始まってみたら自分の中にいる冠葉が自然と出てきた感じで、色々なことを意識することなく演じきりましたね。

荒川:陽毬としての新録のセリフはすごく少なかったんです。なので陽毬としては当時と変わらないように演じることを意識しました。対して、プリンセス・オブ・ザ・クリスタルのセリフは録り直していただいたものも多くあったので、そこでは今の私なりの演技を多く入れています。前よりも力を入れてビシッと決める感じで、陽毬との落差を意識しました。

三宅:私は10年前に監督から「役者として色々な引き出しを持ってくるべきだ」というお話をいただいたのをすごく覚えていて、ここ10年で培ってきた演技のパターンを多く持ってアフレコに臨みました。実際にアフレコは監督と相談しつつ、出せるものを出し切れたかな、と思います。ただ、同時にもっと引き出しの量を増やしたいな、という課題にも直面しましたね。

――幾原監督にとっても、10年ぶりとなる『輪るピングドラム』のキャラクターに対してのディレクションだったかと思います。当時との違いはありましたか?

幾原:大きく違いましたね。皆さんも声優として成長しているし、キャラクターに関しては今や僕よりも理解しているところもあると思いますから。

――テレビシリーズの時と比べて、キャストのみなさんがキャラクターのことを理解していたということですね。

幾原:テレビシリーズの収録が始まった時は、キャストの皆さんに物語の全容を伝えていませんでしたからね。キャラクターを理解するにも限界があった。それに対して今回は物語を一度通して演じてもらっている。なので、今回は皆さんがキャラクターを理解してくれているという前提の上でアフレコを進めることができました。

■作品の世界が「僕らの暮らしている世界」と地続きであってほしい


――あらためて、すでに公開となっている『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM [前編]君の列車は生存戦略』の感想を伺いたいです。

『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』場面カット

荒川:テレビシリーズの映像がメインで作られている映画で、物語も知っている。にも関わらず途中に新規カットが入ったり、話の順番が入れ替わったりすることで全然違う作品に見えた。そこにまず驚かされました。

三宅:前編は苹果の出番がすごく多いんですよ。それを見ながら、テレビシリーズの時にセリフの多さに驚いたことを思い出しました(笑)。当時の自分の演技を聞くと、自分のいっぱいいっぱいな感じと、苹果ちゃんのいっぱいいっぱいな感じが重なっている感じがしますね。

――印象に残っているシーンはありますか?

荒川:前編の中で冠葉が自分の気持ちを語るシーンが新しく描かれているんです。それを見て、あらためて「冠ちゃん、そんなこと考えていたんだ……」と知れたのは嬉しかったです。

木村:冠葉は自分の気持ちを口にすることがなかったですからね。演じている自分としても、何を考えているかは探り探りだった。それが今回きちんと言葉になったのは印象的でした。

――幾原監督としても、冠葉の気持ちをセリフとして描きたいという想いがあったのですか?

幾原:そうですね。テレビシリーズはミステリーとして、謎を提示して引きを作ることを主眼に物語を描いたんです。でも今回の映画は物語を知って見ている人も多いでしょうから、引きを作ることよりも心情を描くことに主眼を置いている。そうすると冠葉が心情を吐露するシーンも必要になるんじゃないかと思ったんです。

木村昴(高倉冠葉役)

――なるほど、その結果、あのキャラクターに寄り添ったシーンが生まれたんですね。ほかにも、新たに登場した実写映像を使ったシーンも気になったのですが……。

木村:あれ、いいですよね!

荒川:私、テレビシリーズ収録の時はまだ東京に出てきたばかりだったんです。だから東京の街並みが実写で出てきても、それがどこの街並みかわからなかったと思う。それが今なら映った場所もわかるし、それが本作とどう結びついているかも理解できる。そういうところにも10年の時間の経過を感じました。

木村:あそこはやはりスクリーンで見てほしいですよね。もちろんテレビで見てもかっこいいと思いますけど、あの大きさで見てこそ意味があるように思うんです。

――そんな今までと違ったシーンが一番最初にくるのも、今作のポイントだったかと思います

木村:アニメ映画を見にきたつもりがいきなり実写から始まってね、「見るもの間違えちゃったんじゃないか?」ってびっくりさせられちゃう(笑)。でもそこからアニメに移行することでアニメの良さがまた際立つんですよね。やっぱり幾原監督は天才なんだと思いました。

幾原:僕が天才ってことですか?

――僕もそう思っています。

三宅:あそこに実写を入れた理由は本当に考察しがいがありますよね。

――そこはぜひとも監督から答えを伺いたいですね。

幾原:アニメって二次元で、「僕らが暮らしている世界」と地続きになっている感じがそもそも薄い。そこに実写のシーンを加えることで、この物語が「僕らの世界」と地続きだという印象を強く感じさせたい想いがありました。僕自身、自分たちが住んでいる世界にフィクションの世界が影響している物語がすごく好きなんですよ。

――なるほど、確かに現実世界と地続きになっている印象は強く受けるシーンになっていたかと思います。

幾原:実写シーンが最初に来ていたのも大きな理由があります。それは、映画をテレビシリーズの続編として描きたかったという理由。テレビシリーズで宇宙に消えていった冠葉と晶馬が、夜の東京という宇宙のような場所に帰ってくる。そうすることで視聴者の皆さんに、新しい物語が始まったというワクワクを味わってほしかった。だから、映画は東京の夜景のシーンから始まっているんです。

『劇場版 RE:cycle of the PENGUINDRUM』場面カット

《一野大悟》
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