(2012年1月)映画『ベルセルク 黄金時代篇 覇王の卵』窪岡俊之監督インタビュー (1) 重たい、深い原作に驚かされた ■ 窪岡俊之 (くぼおか・としゆき)アニメーター・演出家。主な作品に「バットマン・ゴッサムナイト」(第5話監督)、「Genius Party 上海大竜」(絵コンテ・演出)、「巌窟王」(絵コンテ・演出)などがある。 【Message】「手加減をしない」「原作が求める方向に背中を押す」「リアルな中世世界を構築する」――これらを目標にがんばっております。 ■映画『ベルセルク 黄金時代篇』http://www.berserkfilm.com 連載開始から20年以上、壮大なダークファンタジーを奏でる三浦建太郎さんの『ベルセルク』が、このほど劇場映画となった。劇場映画化も、原作と同様の壮大なスケールで実現となっている。今回は、まず物語の最初の山場となる「黄金時代篇」を3部作とした。この第1部にあたる『ベルセルク 黄金時代篇? 覇王の卵』が、2月4日にワーナー・ブラザース映画配給で全国公開した。いよいよ幕を切ったこの長大な物語の制作の指揮を執った窪岡俊之監督に伺った。 ■ 重たい、深い原作に驚かされた アニメ!アニメ!(以下AA)『ベルセルク』というのは非常に大きなタイトルなのですが、映画の監督を引き受けられたきっかけはどういったものですか? 窪岡俊之監督(以下窪岡)まず、作品のパイロット映像をSTUDIO4°Cで作るというのがありました。そのときに、やらないかというお声を掛けていただきました。監督として、1分半ぐらいの作品を作ったのがきっかけです。AA それはどのぐらい前になりますか。窪岡2007年の秋ぐらいです。そのパイロット版が出来たのが翌年で、三浦(建太郎)先生に見ていただいたのが5月30日です。半年以上、結構時間がかかっていましたね。AA 『ベルセルク』をアニメで作る時に、原作の魅力はどこにあると感じましたか。窪岡実は僕は、ほとんど原作を知らなかったんです。勿論タイトルは知っていました。血やグロい描写もきちんとある大人向けのハイファンタジーみたいなイメージです。ただちゃんとは分かっていませんでした。それで仕事を始めるときに、一気に全部、三十数巻読んだんです。思っていた作品と全然違いました。こんなに重たい、深い作品だとは思わなくて、本当にお世辞抜きでびっくりしました。これはやりたいと思いました。自分が作品を作りたいと思うきっかけは、とても小さなことだったりします。それこそ、どこかの一場面とか、セリフとか。『ベルセルク』はそういうものがいっぱいあったんです。 それと僕はDreamcastにあった『ベルセルク』のゲームは結構やっていました。それはでかいドラゴンころしと呼ばれるあの剣を使って敵を豪快にぶった切るようなアクション物だったんです。あれをそのままアニメでやったら気持ちいいだろうなと思っていました。■ 身体はCGなんですけど、顔だけ手描きも AA 先ほど重厚感という話があったのですけど、主題曲が平沢進さんだったり、総作画監督で恩田さんだったり、重量級のスタッフが並ばれていますが、これは監督の意向が強いのでしょうか?窪岡恩田さんは『バットマンゴッサムナイト』の時からお願いしていたこともあります。それと絵的に考えても、三浦先生の絵を描くときにこれほど向いている人はいないと、あっという間に決まりました。実際描かれたものを見て、三浦先生も太鼓判を押してくれました。平沢さんは、三浦先生自身がこれまでずっとお願いしてきた方であることや、僕自身も平沢さんのファンだったので、平沢さんもマストでした。戦略的な意味合いでも、平沢さんのオープニングで一気に観客の気持ちをぐっとつかむ、ということもありますが。 AAキャラクターでいえば、原作の長い連載のなかで三浦先生の絵柄がかなり変わってきている部分もあると思います。それはどうやって決めていったんですか?窪岡三浦先生からは18巻以降の絵柄にしてくださいというお願いがありました。三浦先生自身が納得している絵柄がそこから以降だったと。最近の巻の方が三浦先生の描かれる絵もリアルになったし、世界観もどんどん考証されてリアルになってきているんです、だからそちらに合わせようと考えました。AAリアル感で言うと、背景や舞台設定がすごく存在感があります。あれは相当ロケハンをやられたのですか。窪岡ロケハンにも行きました。ただ、かなり初期の頃に行ったので、必要なものをカバーすることは全然できませんでした。わからないことだらけで苦労したのですが、途中から時代考証として世界観監修とデザイナーの方が入ってくれたおかげで、リアルな設定を作ることができました。あと美術の方が、これまた気合を入れてすごいハイクオリティーな美術をがんがん描いてくれています。その相乗効果でしょう。AA絵の話ですけれども、ひとつは手描きが素晴らしいのですが、その一方でCGですごい回り込みとかあったりもします。ただその境が実は分からないところもあって、よく馴染んでいるなと思いました。窪岡馴染むようにかなり気を遣いました。実は身体はCGなんですけど、顔だけ手描きで書いていたりする個所がたくさんあるんです。それは『ベルセルク』の場合、ハイブリッドと呼んでいました。基本カメラに近い時、表情がよく出るときの顔は作画ですね。
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