大河内一楼氏、台湾のクリエイターに向けて講演『Petit Fancy13』 | アニメ!アニメ!

大河内一楼氏、台湾のクリエイターに向けて講演『Petit Fancy13』

台湾で開催されたアニメ・マンガイベント『Petit Fancy13』(10月23日、24日 主催・月刊FRONTIER、台湾動漫画推進協会)に参加した。『コードギアス 反逆のルルーシュ』

イベント・レポート
大河内一楼氏、台湾のクリエイターに向けて講演
アニメ・マンガイベント『Petit Fancy13』


柿崎俊道

tw01.JPG 台湾で開催されたアニメ・マンガイベント『Petit Fancy13』(10月23日、24日 主催・月刊FRONTIER、台湾動漫画推進協会)に参加した。『コードギアス 反逆のルルーシュ』『キングゲイナー』などのアニメ作品で知られる脚本家・大河内一楼さんといっしょだ。「国際動漫研修会・総合講座」と堅苦しい名目だが、つまりアニメファン向けのトークイベントのためである。
 会場は台湾大学の体育館を利用したもの。日本のコミケの縮小版といった感じで、企業ブースが約15、同人サークルが約300ほどの規模だ。1万サークルが参加する日本のコミケに比べれば小さいけれど、ぎっしりと詰まった会場からは熱気が十分に伝わってくる。また、日本のコミケと同じように夏と冬に大きなアニメ・マンガイベント「Fancy Frontier」(同主催)も行っていて、そちらは今回の約3倍の規模だそうだ。

TW012.JPG 今回の参加のきっかけは、今年8月半ばに主催側のひとりである文創開発有限会社の代表王士豪さんより「大河内先生を招いて、日本の脚本術を学びたい」との依頼があり、僕がつないだ格好だ。その話が進む中で、せっかくなのでおまえも何かトークせよ、との台湾側からのお達しが下り、大河内さんに並んで僭越ながら台湾のアニメファンに向けに講義をさせてもらった。
 トーク会場は体育館内に設置されたオープンスペースにて行われた。『コードギアス 反逆のルルーシュ』など世界中のアニメファンを魅了した大河内さんの言葉を聞き逃すまいと、台湾の若者たちが真剣にノートにペンを走らせていたのは印象的だった。ご存じの方も多いとは思うが、日本のアニメやマンガに追いつけ追い越せと頑張っている各国のコンテンツ制作現場で問題になっているのが、脚本である。作画や編集などの表現力は日本に肉薄しているものの、オリジナルの物語を生み出す脚本となるととたんに手詰まりとなる。『Petit Fancy13』はマンガ家やアニメクリエイターを目指す若者が多く参加しており、彼らが一番欲しいのは日本のクリエイターがどうやって作品を生み出しているのか、という秘訣である。
 だが、日本のトップクリエイターである大河内さんの言葉は真実を語っているだけに、未来のクリエイターの苦悩をさらに深めてしまったかもしれない。
 たとえば、次のような質問があった。

司会者/どのように物語を作るのでしょうか。

大河内/構造から考えます。テーマは何か? 商業的な目標は何か? 手持ちの武器は何か。つまり、優秀なアニメーターが揃っているのか、素晴らしいメカデザインがあるのか、ということです。そういう要素から、作品の構造を考えていきます。
 
 つまり、アニメ制作の全体像を熟知した上で脚本を作る、という意味である。台湾は日本に近いけれど、言語の違い、情報の違いから断片的な知識しか得られない状況で、いかに日本のアニメに追いつくのか。日本のアニメは無視し、独自のアニメ文化を築きあげることもひとつの道だろう。だが、あくまでも日本のアニメのようなものを作りたい。日本を追い越したいと思うならば、そこには厳然とした壁がある。台湾の若者が日本のアニメ制作の全体像を知るためにはどうしたらいいのか。

tw03.JPG イベント終了後、大河内さんはひと言、次のように語った。
「手っ取り早いのは、日本のアニメ会社で仕事をすることだと思います」
 虎穴に入らずんば、虎子を得ず。まずは日本に来て、実際に仕事をすることが早道であることは間違いない。パリやウィーンに絵画や音楽を学びに数多くの若者が集うように、アニメやマンガを学ぶために世界中の若者たちが日本を目指すというイメージは悪くない。より海外のクリエイターが就労しやすくするためにはどうしたらいいのか。今後の課題として考えていきたい。

 ところで、大河内一楼さんに並んで、僕が何の講義をしたかというと「聖地巡礼」についてである。拙著『聖地巡礼 アニメ・マンガ12カ所めぐり』を会場内で閲覧してもらいながら、『けいおん!』の豊郷小学校、『らき☆すた』の埼玉県旧鷲宮町の事例を紹介した。集まった台湾のアニメファンにとってはインターネットを通じて情報は知っているものの、誰も行ったことがないという憧れの地だったようだ。壇上を降りたあとも、どうやったら行けるのか、巡礼に必要なものはあるのか、など具体的な質問が向けられ、ひとつひとつお答えした。アニメにおける観光誘致は日本各地の地域活性化の現場ではよく議題にあがるものの、具体的なアクションが進められたという話は聞いたことがない。『Petit Fancy13』のようなイベントに巡礼地の自治体や旅行代理店が出展し、その場で旅行契約を結べば、いいビジネスになるのにな、と思った次第。こちらも今後の課題だろう。
《animeanime》
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