東京国際アニメフェアの成功 拡大する問題 | アニメ!アニメ!

東京国際アニメフェアの成功 拡大する問題

【世界中から関係者が集まるイベント】
 今年で7回目を迎えた東京国際アニメフェア(TAF)2008は、過去最高の来場者数と出展企業という大きな成功を収めつつ終了した。
 規模的な拡大もあるが、TAFの過去7年間の成功は、むしろ産業としてのアニメの確立とメデ

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【世界中から関係者が集まるイベント】
 今年で7回目を迎えた東京国際アニメフェア(TAF)2008は、過去最高の来場者数と出展企業という大きな成功を収めつつ終了した。
 規模的な拡大もあるが、TAFの過去7年間の成功は、むしろ産業としてのアニメの確立とメディアを通じてそれを広く告知したことにある。さらに海外からビジネス関係者を集め、国際的なビジネスの場を築いたことだ。

 今年の大きな特徴は、TAF開催期間中にアニメ作品のバイヤーだけでなく、アニメに関係する様々なビジネス関係者が東京に集まっていた点である。
 個人的に関心を持っている海外のアニメーション関連のイベンの領域で言えば、北米の2大イベントアニメエキスポ、オタコン、それにニューヨークアニメフェスティバルやアヌシー国際映画祭、韓国のSICAFがTAFの見本市会場に企業出展をしていた。また中国の国際動漫節やフランスのジャパンエキスポのスタッフの姿も会場では見られた。

 報道関連にも、同じことが言える。海外のアニメ関連情報をチェックすると、今年はTAFを報道する海外メディアが例年にも増して目立っていた。
 一般の新聞やエンタテイメント系のメディアが軒並み紹介記事や、参加者過去最高といったニュースを取り上げていた。今年のTAFは、海外メディアの取材が昨年よりさらに増えたはずである。
 彼らがTAFに参加するのは、TAFがアニメビジネスの関係者が広く集まる場所との情報が浸透してきたためである。そして、そうした彼らの参加自体が、TAFの業界集積度を高め、ビジネス機能をさらに強化することになる。

【国際的なイベントに対する期待】
 ビジネスの核心である海外からの引き合いがどうだったのだろうか。これはビジネスの当時者でないとなかなか分かりにくい。それでも、TAFの見本市会場では、海外のアニメディトリビュターの担当者の顔は相変わらず見られた。
 また、クリエイターズワールドの参加者に持ちかけられるビジネス案件も具体的なものが多かったとされるから、それほど悪いものでなかったと思われる。コンテンツ関連のビジネスイベントが、しばしば一般向けのプロモーションの場となるなかで、TAFがビジネスの場としても機能していることが感じられる。

 正直、日本のエンタテイメント分野のビジネスショーの多くは、世界的にみるとほとんどがマイナーな存在である。唯一の例外が、毎年世界的な関心を集める東京ゲームショウである。
 今年のTAFを見ると、あらためて「アニメ」が、世界のエンタンテインメント市場で勝負出来る数少ない日本のコンテンツであると感じる。そして、TAFが東京ゲームショウに続く、国際的なイベントになれる可能性に期待したくなる。

【アニメフェアの成功=楽観ではない】
 こうしたポジティブな話ばかりを述べると、内情は違うとする意見を持つ人も多いだろう。華やかなTAFの数字の一方で、2006年ぐらいより、アニメビジネスは国内・国外とかなり厳しい局面を迎えている。
 特に、海外のDVDビジネスは壊滅的な状況とさえ言われている。また、ビジネスデーの展示場だけみると、さほど活気があるように見えないという意見も多い。

 それらは全て現実であるし、否定するつもりはない。ただ、内部の視点からやや離れ、外側からTAFを見ると、他のコンテンツ関連産業に比べると海外向けのビジネスの場としてよりうまく機能している。一般的なTAFの過去7年間の評価は、成功と言っていいはずだ。
 むしろ、TAFが現在抱える問題は、こうしたTAFの成功に対する期待、外部からの視点と内部にある現実とのギャップにある。そして、TAFが成功すればするほど、内部と外部のギャップが益々拡大していくことである。

【誰が見本市を支えるのか?】
 アニメの業界は、制作、テレビ放映、DVD販売、劇場興行を合わせた映像作品のビジネスだけを考えれば、2500億円規模の市場である。アニメ制作だけを取り上げると、さらにその半分程度である。
 一方で、アニメと並べられることの多いゲーム市場はハードとソフトで国内だけでおよそ7000億円近く、それに海外市場からの売り上げが加わる。マンガ出版も5000億円市場である。エンタテインメントコンテンツ業界のなかでアニメは、一際小さな存在なのだ。

 しかし、一般からはそうした産業規模の違いは分かり難い。その結果、世間から期待されるTAFの在り方と、実際に実行委員会が対応できる範囲に齟齬が生まれている。
 例えば今回のアニメフェアのパブリックデーの一日あたりの人出は、既に東京ゲームショウに迫る勢いになった。会場の混雑ぶりは例年にも増してすごく、来年はこれに対応したスペースの拡大を求める声がある。しかし、現状でTAF事務局が発表する来年の会場は今年と同じ東京ビッグサイトの3ホール使用である。
 大規模なコンベンション会場は開催の予約はかなり前から行わるため、既に他のスペースが埋まっていることも理由にあるだろう。しかし、仮に会場を拡大しても、会場の使用料や増加するスタッフの人件費を誰がまかなうのかといった問題もあるだろう。

 現在でも、今後段階的に減っていく東京都からの運営のための助成金分をどのように賄っていくかは実行委員会の課題となっているはずだ。
 宣伝が主体でそれ自体が収益を生み出さないブース出展やステージイベントに、各企業が割くことの出来る資金は限られている。参加企業にいま以上の負担を求めるのは難しいだろう。

 これ以外にも海外の企業が期待する英語対応やビジネスサポートサービスなども、不十分との指摘がある。それも現在のアニメ業界で支えられる規模と、実際の対応できる範囲とギャップになっている。
 もしこうしたギャップを解決する方法があるとすれば、アニメ業界の外から資金を導入することである。アニメフェアの参加企業にアニメだけでない、キャラクタービジネス、マンガ出版、ゲームといった周辺企業を巻き込んでいくことである。しかし、現段階ではアニメフェアはそこまで進んでいない。

【規模の拡大と中小企業サポート】
 また、より多くの大企業の参加を促すことは、TAFの本来の目的のひとつである中小の権利保有者のビジネス振興の理念と対立する可能性がある。つまり、中小企業の多いアニメ産業のサポートがTAFの大きな目的のひとつだからだ。
 ここ数年、制作でなく製作を行なう企業の大きなブースや大規模なイベントの前に、TAFの会場で中小企業のブースは霞みがちとする意見も多い。さらに多くの大企業が参加すれば、そうした企業の存在感は益々薄れてしまうだろう。
 TAFは巨大化することで得たものが多い。しかし、その一方で失うものもあり、巨大化するがゆえに発生する問題もまた大きい。
[数土直志]

東京国際アニメフェア公式サイト /http://www.tokyoanime.jp/ja/
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