11月20日に東京・秋葉原で「ジェトロ 中国のアニメ産業セミナー」が開催された。今回のセミナーは、中国の放送局、アニメーション制作会社、学者とそれぞれ立場が異なる専門家が自らの視点で、中国のアニメ産業の現状と日本企業との関係構築について語った。 中国アニメに関するセミナーはこれまで幾つか開催されたことがある。しかし、内容の多様さと中国側から直接語る今回のセミナーはこれまでにない貴重なものになった。 また、この9月から中国国内でゴールデンタイムの海外アニメの放映が禁止されている。このため日本企業の中国市場に対する不信感が芽生えつつあっただけにタイムリーな企画とも言える。 セミナーの内容は3者3様の意見であった。最初に講演した清華大学の陸教授は、中国市場におけるアニメーション産業の様々なギャップを指摘した。それは主に需要と生産のギャップで、アニメーションが必要されているが、その供給体制が確立していないというものである。 そのうえで産業保護では産業の発展は出来ない、政策の基本的な方向は開放と競争による産業の向上だと強調した。 政府系放送局CCTV(中国中央電視台)中視鴻運視聴制作有限公司の張魯燕副総経理はもう少し保守的で、中国の放送制限は地方で生産基盤の弱い放送局にアニメーションの生産を促すためだとする。 そして、海外との協力は中国が一方的に生産基地になるような方法でなく、ともに利益のある方法であることが必要だと強調する。また、日本のマーケティングやルール作り、資金に関心があるという。 フランスとの合作アニメーションで成功を収めた上海今日動画影視制作有限公司総経理の張天暁氏は、マンガ市場の発展や製作委員会方式、海外協力の方法に日本から学ぶものが多いと述べた。 また、セミナーで紹介された上海今日動画の3作品はこれまで観たどの中国アニメより優れており、そのクオリティは日米欧のアニメーションに遜色がないように思えた。 しかし、セミナー全体から感じられたのは、アニメーションやキャラクター市場を育成したいと考えている中国行政の思惑とは裏腹に、中国国内では未だアニメーションが産業として立ち上がっていない事実である。 陸教授は現在の中国にはアニメーション産業という言葉はあるが、その実態は存在しないと指摘した。張魯燕氏はアニメーション制作は赤字であり、ほかで儲けた利益が制作につぎ込まれているという。 また張天暁氏は中国独自スタイルのアニメ制作をしたいとしながらも、国内マーケットでは利益にならないので当初から国際マーケットを意識した制作になると述べた。 こうした思ったようにアニメーションの産業化が進まないことに対する焦燥感が、海外アニメの放映禁止のような強硬な手段になったと考えられる。また、アニメーションの産業化が進まないからこそ、日本企業が中国に進出しても作品を収益化する方法が見つからないということも言えるだろう。 つまり、中国市場では海外企業と同様に、中国企業もアニメーションから収益が得られず苦しんでいる。 おそらく日本企業が中国市場で利益を得ることを目指し、中国企業と協力出来るとすれば、このアニメーション市場の創出という分野になるだろう。 しかし、これは長期ビジネスとなることが予想され、企業の資金も体力も必要とされそうだ。 今回の講演者はそれぞれ立場の違いはあるものの海外のアニメーションに対して比較的リベラルな考え方を持っていると感じた。しかし、3人の考え方がそれぞれ異なるように、やはり中国国内には海外のコンテンツに対してもっと保守的な人も多いだろう。 それでも、少なくとも今回のセミナーでは、日本と何かしらのパートナーを組みたいと考えが中国にもあると判った点で価値のあるものだったといえる。中国アニメ産業セミナー11月20日 秋葉原UDXカンファレンスRoom「中国のアニメ産業・アニメ市場の現状」 清華大学教授兼文化産業研究中心学術部主任 陸地氏「CCTVの中国国産アニメ育成と日本との合作の可能性」 中視鴻運視聴制作有限公司 常務副総経理 張魯燕氏 「中国のアニメ制作会社の現状とフランス企業との共同制作事例紹介 」 上海今日動画影視制作有限公司 総経理 張天暁氏主催:/日本貿易振興機構(JETRO)
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