アニメ「ウマ娘 ROAD TO THE TOP」をもっと楽しむためのエピソード! 知れば知るほど応援したくなる競馬の魅力【コラム】 | アニメ!アニメ!

アニメ「ウマ娘 ROAD TO THE TOP」をもっと楽しむためのエピソード! 知れば知るほど応援したくなる競馬の魅力【コラム】

春のG1シーズン真っ只中の競馬界。今月5月28日(日)には競馬界最大の祭典「日本ダービー」の開催を控えており俄然盛り上がりをみせている。もちろん、『ウマ娘』も!

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『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』ビジュアル(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』ビジュアル(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』第1話「夢のはじまり」先行場面カット(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』第1話「夢のはじまり」先行場面カット(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』第1話「夢のはじまり」先行場面カット(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』第1話「夢のはじまり」先行場面カット(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』第1話「夢のはじまり」先行場面カット(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』第1話「夢のはじまり」先行場面カット(C)Cygames, Inc.
  • 『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』第2話「栄光の舞台」(C)Cygames, Inc.

春のG1シーズン真っ只中の競馬界。今月5月28日(日)には競馬界最大の祭典「日本ダービー」の開催を控えており俄然盛り上がりをみせている。
それと足並みを揃えるかのように新アニメ『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』が配信開始されたのは、今年の皐月賞開催日と同じ4月16日。この物語の幕開けに最もふさわしい日であったと言えよう! 今から24年前、実際のモデルとなった競走馬たちのエピソードや、思わず見過ごしてしまう小ネタ満載のシーンまでを詳しく解説。これを知れば、アニメをすでにご覧になった方も、これからご試聴になる方ももっともっと面白くなること間違いなし!

※以下の本文にて、本テーマの特性上、作品未視聴の方にとっては“ネタバレ”に触れる記述を含みます。読み進める際はご注意下さいませ。

新作アニメ『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』は、これまでのSeason1、2そして2023年に放送を予定しているSeason3とは別プロジェクトの物語となり、テレビアニメではなく、ウマ娘の公式YouTube「ぱかチューブっ!」ほかの配信のみとなっている(2023年5月現在「ぱかチューブっ!」は無料配信)。

“伝説の史上最強馬”と呼び声の高いテイエムオペラオーと同年代に活躍したライバル馬アドマイヤベガナリタトップロードの三強が、実際に繰り広げたレースをもとにストーリーが構成されている。ところが面白いことに主人公は、最強馬のオペラオーではなくトップロード視点で描かれている。表題も「ROAD TO THE TOP」とあることからもその意味をうかがうことができる。

◆真面目な学級委員のトプロちゃん

まず注目したいのは、各馬のキャラクター設定だ。主人公のナリタトップロードは、まわりから“トプロちゃん”と呼ばれ、真面目な性格でクラスの学級委員を務めている。実は、これトップロードの主戦騎手を務めていた渡辺薫彦元騎手(現調教師)の影響が大きい。

競馬というスポーツはとても激しい競技で、観客の声援にかき消され実際に聞こえることはないが、最終コーナーでは、騎手同士「オラ!どけ!」「邪魔だ!」などの怒号が飛び交うのは当たり前。上下関係も非常に厳しい世界でもある。渡辺元騎手は当時24歳の若手騎手。真面目で大人しい性格のためか、この厳しい世界でなかなか勝ちきれない騎手でもあった。

現役時代は、トップロード以外の馬での大きなレースでは目立った戦績は少なく、まさに運命の出会いだったとも言える。ネットで「渡辺薫彦」で検索を掛けると複合ワードに「泣き」「涙」と表示されるが、なかなかレースに勝ちきれない性格をファンから何度も批判されてきた経緯がある。のちの勝利インタビューで鼻をすすり涙混じりに答えた当時のシーンを思い出しての関連ワードなのだろう。

騎手と競走馬を結ぶ手綱。「騎手が指一本、ほんの数センチ動かしただけでその想いは馬に伝わる。そのアクションがほんの数秒違うだけでレースの結果はまったく変ってくる」と競馬専門紙のコラムで武豊騎手が述べていた。そんな仕掛けどころにいつも悩んできた渡辺元騎手の性格と、レースに勝ち切れず何度も悔やむトプロちゃんのシーンが見事にリンクしている。

また幼少期のエピソードが第一話で紹介されているが、ここに父親の存在が描かれている。これは過去のアニメシリーズを通しても異例なシーンである。実際にはオス馬の設定をすべて女子キャラに変更しているため、お父さん、お母さんと言及すると話が複雑になってしまうからなのだろう(笑)。
本作第一話で「俺の娘だ」と父親らしき人物が登場する。これは名乗ってはいないもののトップロードの父・サッカーボーイのことであると推測できる。サッカーボーイは、レース後に歯を折るは、鼻血を出すは、大変気性が荒い馬として有名。セリフにも「俺に似て不器用なんだよなぁ……性格は真逆なんだけど(笑)」とあり、ここにもトプロちゃんの真面目なキャラクター要素にも繋がっている。

◆ボクは世紀末覇王!オペラオーちゃん!

次に紹介するのは、テイエムオペラオー。名前の由来はオペラの王からきており、オペラオーちゃんのセリフは、常に舞台役者のような派手な言い回しで、一人称はボクである。実際の馬は、そこまで勇ましい性格ではなく、今風に言えば正面からはシュッとしていて胴体が長くスラっとしたモデル体型のような馬だった。

父・オペラハウスから名前が引き継がれているが、その子供はあまり走る記憶はなく、どちらかと言えば図太く善戦する馬が多かった。そのため、セレクトセール(競走馬になるためのセリ市)で、血統の良い馬は2億、3憶で取引されていた時代だが、オペラオーのセリ値はわずか1000万円! 超のつく破格で落札され、そこまで大きく注目を集める馬ではなかった。

迎えたクラッシック戦線(3歳馬、当時は4歳)は1999年。世紀末と呼ばれる時代であったことと、のちの無敵の最強馬になったことから『北斗の拳』に登場する世紀末覇者ラオウにちなんで、ファンから覇王と呼ばれるようになった。

オペラオーちゃんの同級生として“ドトウちゃん”が登場するが、これはのちの最強のライバルとなるメイショウドトウであり、史実ではこの2頭が何度も激闘を繰り広げることになる。アニメでもこの先のストーリーとして描かれるかどうかは楽しみなところでもある。

第一話での、先輩のオグリキャップが登場する食堂にシーンに注目して欲しい。ここでは山盛りの食事を平らげるオグリ先輩の姿が描かれている。実際のオグリキャップも大食いで、カイバの桶(馬の食事が入っている)に一度顔を突っ込むと食べ終わるまで一切顔を出さなかった逸話は有名である。

その性格が引き継がれた大食いキャラのオグリ先輩が、今後のレースに迷っているオペラオーに「皐月賞に出るべき」と進言をしている。実際は、オグリキャップを管理していた瀬戸口元調教師が、毎日杯でのオペラオーの勝ちっぷりを見て、関係者に皐月賞への出走を進言したエピソードに由来している。

その進言に対してアニメの中でオペラオーちゃんは、「自信から確信に変わりました!」と返しているが、これは同じく1999年にデビューしたプロ野球の松坂大輔さんが、イチローさんとの初対決で三連続三振をとった試合での勝利者インタビューで述べたあの有名なセリフでもある。このような小ネタが散りばめられていることも、このアニメの面白さだ!

この皐月賞出走に関しては、関係者がここまでの活躍を期待していなかったため、レースに登録をしていなかった。通常の登録料は3万円だったにも関わらず、慌てて行った追加登録料は200万円もかかっている。皐月賞に勝てると思った自信の裏返しでもあるだろう。とは言え、当日の一番人気は、アドマイヤベガの単勝2.7倍、2番人気はトップロードの3.3倍、オペラオーは5番人気で11倍だったことから、ファン心理としてはなかなか推せずに私も涙を飲んだ一人だ(笑)。

◆良家のお嬢様?アヤベさんことアドマイヤベガ

三強最後の1頭は、アドマイヤベガ。愛称は“アヤベさん”良家のお嬢様風に描かれているがそれもそのはず。実際のアドマイヤベガのお母さんは、桜花賞、オークスを勝利した二冠馬・ベガと、父は多くの優勝馬を輩出した種牡馬・サンデーサイレンスの子供だからだ。母・ベガの主戦騎手を務めたのは今も現役で活躍し続ける武豊騎手。その武騎手がアドマイヤベガの手綱をとるわけだから人気にならないわけがない。

ところがアヤベさんは、影のあるキャラクターとして描かれている。生まれる前に亡くなった妹の呪縛に苦しみ、左脚に不安を抱えている設定だ。実際、アドマイヤベガは双子として受胎したが「双子の馬は大成しない」と言われてきたことから、もう一頭は、生まれる前に殺処分されている。

また左脚に不安を抱える設定は、母・ベガも幼少期に前脚が内側に曲がっていた経緯があり、「競走馬にはなれないかもしれない」と言われていた。さらに遡ると、ベガの母・アンティックヴァリューも脚部に不安を抱えており、アドマイヤベガも左前脚に故障が発生したことにより引退をしている。同じ理由で引退した親子三代に渡っての遺伝が、このような影のあるキャラクターとして描かれた要因でもある。

競走馬の体重は450キロ程度あり、それを4本の脚で支えているので単純に考えても1つの脚に100キロ以上の負荷がかかっている。これがレースになれば、その何倍も衝撃が加わるので脚に不安があることは競走馬の生命にも関わってくる。「無事是名馬(ぶじこれめいば)」という有名な格言があるが、後世にその優秀な遺伝子を残すために、無事に引退の日を迎えて欲しいと願うのは関係者のみならずファンも同じ想いである。

当時は体重500キロを超える馬も活躍をしており、がっちりした筋肉質の競走馬が多かった中で、アドマイヤベガは男の子の馬の中では、華奢な体型でガラス細工のような美しい脚の馬であったと記憶している。

◆応援する理由は、人それぞれ

競馬は本当に面白いスポーツで、応援する理由は人によってそれぞれ違う。当然、公営ギャンブルではあるので馬券を当てることが一番の目的ではあるが、強い馬だけが人気になるわけではない。善戦でなかなか勝てない馬でも、次こそ勝って欲しい想い。偉大な母の血を受け継ぎ、勝利へエスコートしてきた名騎手が再び手綱をとる運命の子だから応援したい想い。鍛え抜かれた脚で勝利を積み重ねてきた結果にこそ確信した想い。それぞれの想いが交差し、多くのドラマが紡がれてきた。

今回、なるべく実際のレース結果に触れないように執筆してきたので、その結末は『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』で実際に応援しながらご自身の目で確かめていただきたい!

<キャスト>
ナリタトップロード :中村カンナ
アドマイヤベガ :咲々木瞳
テイエムオペラオー :徳井青空
沖田トレーナー :土田大
ライスシャワー :石見舞菜香
カレンチャン :篠原侑
メイショウドトウ :和多田美咲
ハルウララ :首藤志奈

<スタッフ>
原作 :Cygames
監督 :廖程芝
シナリオディレクター・シリーズ構成 :小針哲也
キャラクターデザイン・総作画監督 :山崎淳
キャラクターデザイン監修 :清永みなみ
色彩設計 :中原あゆみ
美術監督 :金井眞悟・狹田修
撮影監督 :宋思之
3D監督 :中野祥典
編集 :木村佳史子
音楽プロデューサー :内田哲也
音響監督 :金崎貴臣
コンテンツディレクター :秋津琢磨
アニメーション制作 :CygamesPictures

(C)Cygames, Inc.

《須山茂》
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