庵野秀明監督「トップをねらえ!」が名作と呼ばれる3つの理由【劇場公開記念】 | アニメ!アニメ!

庵野秀明監督「トップをねらえ!」が名作と呼ばれる3つの理由【劇場公開記念】

庵野秀明監督の初商業監督作品であり、OVA時代の名作『トップをねらえ!』が2020年11月27日から劇場公開されます。

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『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』キービジュアル(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
  • 『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
庵野秀明監督の初商業監督作品であり、OVA時代の名作『トップをねらえ!』が2020年11月27日から劇場公開されます。

1988~89年に製作・販売された、全6話からなるオリジナルアニメである本作は、後に『新世紀エヴァンゲリオン』で一世を風靡した庵野監督のセンスが随所に感じられ、早くも作家性を発揮した作品として有名。
リリースから32年を経た今、劇場公開されるこの作品にはどんな魅力があるのか、3つのポイントで振り返ってみたいと思います。

■作品概要


西暦2015年、謎の宇宙怪獣によって宇宙艦隊「るくしおん」が全滅。それから15年後、「るくしおん」艦長の娘、タカヤノリコは沖縄のパイロット養成学校に通い、宇宙パイロットを目指して奮闘していた。落ちこぼれのノリコだったが、あこがれの先輩の助言や厳しいコーチの特訓に耐え腕を上達させていく。そして、ノリコはパイロット候補生に選ばれ、宇宙へと旅立つ。
監督の庵野秀明以下、キャラクター原案に美樹本晴彦、絵コンテ・演出に樋口真嗣や鶴巻和哉、原画担当も貞本義行や前田真宏、松原秀典、本田雄、摩砂雪、大張正己など錚々たるメンバーがそろっている。

『トップをねらえ!』キービジュアル(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX

1.「美少女×メカ×スポ根」アニメファンのツボを付いた要素が入り乱れる快作


本作は当時、庵野監督らが所属していたガイナックスの前作『王立宇宙軍~オネアミスの翼』が興行的に振るわなかった反省もあり、男性キャラクター主体でハードなSF作品だった前作とは真逆のアプローチでアニメファンに訴求する要素をふんだんに取り入れた内容が特徴です。

キャラクター原案に『超時空要塞マクロス』の美樹本晴彦が起用され、主題歌を酒井法子が歌い、主演のノリコ役には『タッチ』のヒロイン、南役で有名な日高のり子を起用、美少女要素をてんこ盛りにし、それでいてSFロボット要素もぬかりない内容になっています。
さらに、ロボットに乗って腕立て伏せや縄跳びをさせるなどスポ根要素も取り入れ、「美少女×メカ×スポ根」の要素が入り乱れた作品になっています。

『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
主人公だけでなく、ノリコが憧れる先輩アマノ・カズミやライバルキャラ、ユング・フロイトなどとの美少女同士の交友関係も濃密に描かれ、後半の話数には合体ロボットも登場し、なおかつSFの裏設定は緻密に設定されているなど、とにかく多くの「オタクが好きなもの」が詰め込まれています。

そうしたアプローチの作品は、今でこそ深夜アニメでは珍しくありませんが、本作はそうしたタイプの「元祖」のひとつと言えるでしょう。

『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX

2.数々の過去作からの引用に庵野監督のセンスが滲む


本作はタイトルが示す通り、作中に無数のパロディが存在します。『トップをねらえ!』というタイトルは、『エースをねらえ!』と『トップガン』をくっつけたものですが、作中にも数えきれないほどの過去の映画やアニメ、特撮や小説のパロディや引用が存在します。

例えば、コーチのオオタは不治の病である宇宙放射線病を抱えていますが、これは『宇宙戦艦ヤマト』の艦長、沖田十三の抱えている病名と同じです。

『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
主人公の部屋に『風の谷のナウシカ』や『宇宙戦艦ヤマト』などのポスターが貼られているシーンもありますし、庵野監督が敬愛する岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』や『沖縄決戦』を彷彿とさせるシーンもあります。

他にも、市川崑監督を思わせるテロップ演出を用いたり、後の『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』でも見られた庵野監督のパロディセンスが随所に発揮されています。そんな庵野監督の作家性を確認する意味でも本作は貴重な作品と言えるでしょう。

『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX

3.ウラシマ効果を生かした壮大なスケールの展開


本作の第一話は、ゆるい雰囲気で学園を舞台にした、エロとギャグを全面に押し出した内容ですが、最終話では、地球の存亡をかけた壮大な戦いへと急速にスケールアップし、雰囲気が全く異なる作品になっていくのも大きな特徴です。

『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
この壮大な展開を後押しするのが、時間の進み方の差異を生かした「ウラシマ効果」というアイデアです。宇宙と地球とは時間の流れが大幅に異なるため、宇宙で戦い続けるノリコたちは若いままなのに、地球にいた同級生たちは年を取り、子どももいるなど、異なる時間を生きる人々のドラマを導入し、時を超えた壮大なドラマを作り上げています。

本作は、「ウラシマ効果」に代表されるようなSF設定が非常に凝っています。今回、公開される劇場版には含まれませんが、エンディング後におまけ映像のような形で、「トップをねらえ!科学講座」というミニコーナーで詳細な裏設定を説明したり、第三話冒頭で「前回までのあらすじ」と称して、本作の世界での科学設定を論文調で紹介したりしています。こうした細かい部分に制作者たちのこだわりがうかがえます。

『トップをねらえ!』場面カット(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
美少女とエロと派手なロボット戦闘に目を奪われがちですが、細部までこだわり抜いて作られているからこそ、32年経った今でもファンから熱い支持を受け続けているのです。映画館の大画面でぜひそのこだわりを堪能しましょう。

【上映タイトル】 『トップをねらえ!』OVA 前編/『トップをねらえ!』OVA 後編
※「トップをねらえ!科学講座」の上映はございません
【上映時間】 前編(1話~4話)104分/後編(5~6話)56分 ※2ch オリジナル音声 *変更となりました
【公開日】 2020 年11 月27 日(金)
【配給】 バンダイナムコアーツ
【上映劇場】 TOHOシネマズ 池袋/TOHOシネマズ 梅田/ミッドランドスクエア シネマ/
T・ジョイ博多/札幌シネマフロンティア

(C)BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX
《杉本穂高》
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