【対談】「日本のクリエイターと一緒に最高のストーリーテリングを目指す」ディズニープラスが本気で取り組む日本アニメの大きな可能性 | アニメ!アニメ!

【対談】「日本のクリエイターと一緒に最高のストーリーテリングを目指す」ディズニープラスが本気で取り組む日本アニメの大きな可能性

ディズニー公式動画配信サービス「Disney+」。今回、ディズニープラスのアニメーション責任者の八幡拓人と、アニメ!アニメ!編集長の江崎大が対談。ディズニープラスと日本アニメのこれからについて語り合った。

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ディズニープラス アニメーション責任者・八幡拓人
  • ディズニープラス アニメーション責任者・八幡拓人
  • 『Project BULLET/BULLET(仮) 』(C)E&H/GAGA ディズニープラス
  • 『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』(C)2023 Disneyディズニープラスで今冬独占配信
  • ディズニープラス アニメーション責任者・八幡拓人
  • 左からアニメ!アニメ!編集長 江崎大、ディズニープラス アニメーション責任者・八幡拓人
  • 対談の様子
  • 対談の様子
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ディズニー公式動画配信サービス「Disney+」(以下、ディズニープラス)が、自社ブランド以外の作品を扱い、日本アニメの配信にも乗り出す。2021年にそんなニュースが流れたとき、大きな驚きを持って迎えられた。
その後も、ディズニープラスは独占配信や新たなアニメ作品を次々と発表し、多くの期待を集めている。

ディズニープラス(C)2023 Disney and its related entities

「ディズニープラスは日本アニメを世界に届けたい」と語るのは、同社でディズニープラスのアニメーション責任者を務める八幡拓人。そんな八幡氏と旧知の間柄であるアニメ!アニメ!編集長の江崎大が、ディズニープラスと日本アニメのこれからについて語り合った。

[取材・文=杉本穂高 撮影=Fujita Ayumi]

■日本のクリエイターと一緒に作品を世界に届けたい

江崎八幡さんとは、エイベックス・ピクチャーズ時代、ワーナー・ブラザース時代、そして現在のディズニープラスと、キャリアのほとんどでアニメ!アニメ!と接点がありますよね。

八幡本当に長いお付き合いになりますね。

江崎八幡さんには、アニメ!アニメ!に、描きおろしのアニメイラストを提供していただいたこともありました。アニメ雑誌なら描きおろし版権イラストは珍しくありませんが、ウェブメディアでは初めての試みだったと思います。

八幡僕は当時、アニメの宣伝を担当していましたが、世間的にまだウェブメディアに馴染みがない時代でした。でも、新しい試みをするならウェブだろうと思っていましたから、あれは良い事例になったと思っています。

江崎そんな八幡さんが、配信という新しいウェブ上のプラットフォームで、日本のアニメ作品の制作・調達などを統括されているのは感慨深いです。これまで、ずっと業界の最前線で走ってこられた八幡さんは、業界の変化をどのように見ていますか?

八幡まさに変革に次ぐ変革でしたね。僕がこの業界に入った頃と今ではプロモーションの仕方もまったく異なりますし、作品の供給の仕方も大きく変化しました。ビデオグラムが主流で、コア層がターゲットだった時代から、今は非常に多様なお客様に届けられるようになっています。

江崎ディズニープラスが日本アニメに力を入れているのも、まさに業界の変革だと感じます。しかも、これまで日本のアニメ業界にいた八幡さんを招聘(しょうへい)していることにディズニーの本気度を感じます。

八幡もちろん本気ですよ(笑)。しかも、“ディズニーの流儀”ですべて進めるのではなく、日本アニメの皆さんと良いパートナーシップを構築し、一緒に盛り上げていきたいという気持ちでやっているんです。

江崎:同じアニメ業界でも、日本のアニメとディズニーは、これまで作品製作のチーム作りやスケジュール感など、文化が異なっていたのではないかと思います。
八幡さんがディズニーに入社し日本アニメを担当されていることは、本気度はもちろんですが、ディズニーが日本の文化に馴染もうと努力している証で、柔軟性のある企業なんだなと思いました。

八幡:僭越ながら、僕がディズニープラスで日本アニメを担当しているのも、それが理由のひとつかもしれません。

江崎僕は、最初にディズニープラスについては、ディズニーのアニメーションやマーベル作品が見られることに特化した配信サービスだろうと思っていました。それから2年、こんなにも日本アニメに対して解像度の高い理解を示すとは思っていなかったです。

八幡ディズニーは、日本のクリエイターと長期的な関係を築き、一緒に素晴らしい作品を届けていきたいと思っています。その1つの実践が、ディズニーと日本クリエイターがコミュニケーションしていく「クリエイティブ・エクスペリエンス」という取り組みです。
これは、アジア・太平洋地域を代表するストーリーテラーとディズニーの主要ブランドやスタジオ(マーベル・スタジオ、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ、ディズニー・ライブアクション、ピクサー、ルーカスフィルムなど)の幹部や監督などとクリエイターをつなぐ招待制の交流プログラムで、ウォルト・ディズニー・カンパニーの約100年にわたる世界レベルのストーリーテリングの経験をAPACのコンテンツクリエイターと共有することを目的に実施されています。こういう機会を設けていくことで、日本のアニメ業界の方に、より広い扉を開いていけると思っています。

■ディズニーの市場は“ひとつ”という認識

江崎ディズニーと日本のアニメ業界との違い、あるいは共通する部分はありますか?

八幡ディズニーが一番大事にしているのは、ストーリーテリングです。素晴らしい作品とは最高のストーリーテリングだという、シンプルですが究極の考えをディズニーは大事にしています。それは日本アニメにも共通している部分だと思います。
逆に、ディズニーならではだと思うのは、視点がどこまでもグローバルであること。特定の層だけではなく、あまねく世界のみなさんに感動を届けたいと考えているんです。ディズニーは、全世界を1つのものと捉えているというのはありますね。

『Project BULLET/BULLET(仮) 』(C)E&H/GAGA ディズニープラス

江崎八幡さんは、朴性厚監督のオリジナル作品『Project BULLET/BULLET(仮)』を準備中ですが、朴監督は、ピクサーに入るか日本アニメに行くかを悩んだ末に日本アニメを選んだ方です。そのような方が、今ディズニーで日本アニメを作っているのは感慨深いというか、作り手にもストーリーがありますよね。

八幡そうですね。『Project BULLET/BULLET(仮)』は、まさに我々の方向性を体現する企画だと思います。朴性厚監督という、唯一無二の才能が日本でスタジオを立ち上げて構想10年の作品を作る。これはぜひご一緒したいと思いましたし、世界に打って出るためのフラッグシップになり得るものだと思っています。
日本アニメは世界中で愛されていますが、監督や脚本家などのクリエイターが注目される機会はまだまだ少ないです。日本のクリエイターがもっと注目されるように、我々も頑張りたいと思います。

江崎配信を巡っては、独占配信に対する賛否両論が御社に限らず課題になっていると思うのですが、これについてどうお考えですか。

八幡日本アニメは歴史的にテレビで無料視聴できることが基本でしたので、独占配信に対して、視聴者の方に驚きを持たれているのは認識しています。
それに対して、僕たちはどう取り組んでいくべきか。まずはディズニープラスとして、ファンの皆さまと向き合っていきたい。ファンの方々が見たくなる作品を拡充させていくことに力を入れてきました。

逆に、配信で作品を提供するメリットもたくさんあると思っています。ディズニープラスは国内と海外を分けて考えませんから、世界で同じタイミングで盛り上がりを作れる可能性があります。それは、これまでになかった大きなうねりを生み出すチャンスだと思っています。それに、世界を見据える我々なら、国外の反響を今まで以上にリアルタイムに作り手に還元できますから、今までとは異なる刺激を提供できると思うんです。

江崎いちメディアの人間として思うのは、近年、アニメとゲームの関係が逆転している気がするんです。今まで、ゲームはお金を出して買わないと遊べなくて、アニメは無料で見られました。しかし、今のスマホゲームは無料で遊べて、アニメは有料配信で鑑賞するようになってきた。
しかし、もっと逆のぼって考えると、ディズニーのアニメーションは先払いのコンテンツである「映画」から始まっているので、アニメーションに課金してもらうことに対して一番の先駆者ですよね。アニメーションにお金を払ってもらう文化を最初に作ったのは、ディズニーと言ってもいいかもしれない。

ディズニープラスは、動画配信では新興勢力かもしれないですが、映画のように高品質な作品を提供し、そのアニメにお金を払ってもらう文化を定着させてくれるのではと期待しているんです。

八幡ありがとうございます。そういう点では、ディズニーは、コンテンツの出し方は動画配信だけじゃないんですよね。映画やイベント、ゲームやグッズなど多面的に展開していく可能性は大いにあります。『ディズニー ツイステッドワンダーランド』は、その最たる例だと思います。ゲームで始まり、アニメ化が発表されることにより、マーチャンダイジングやイベントもにぎわう。動画配信だけに留まらず、各事業部門が連携したIPの広がりを作れるのは、我々の強みです。

■今後も期待の作品が続々登場!

『PHONEIX: EDEN17』 (C) Beyond C. ディズニープラス「スター」で2023年世界配信

江崎今後、配信予定の作品では、個人的にはやはり手塚治虫原作の『PHOENIX: EDEN17』に期待しています。

八幡これは、かなり早い段階から着手していたのですが、手塚治虫さんの名作をあのSTUDIO4°Cさんが作ってくださるわけで、最高のクリエイティビティをお届けできると自負しています。

江崎実写とアニメを融合させた『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』も注目しています。例えば、マーベル映画などは顕著ですが、近年、実写とかアニメって境界が薄れてきていますよね。

八幡そうですね。実写っぽいアニメとか、逆にアニメ的な実写とか言われる作品が増えていますよね。皆さんが思い描く従来のアニメだけが表現方法じゃないと思いますし、我々もいろいろな可能性を提示したいと思います。

『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』 (C)2023 Disney ディズニープラスで今冬独占配信

江崎ディズニープラスは、今後日本のクリエイターと一般の視聴者にどんな影響を与えられるでしょうか。今後の展望をお聞かせください。

八幡今、SNSから映画館まで、作品を発表する場はたくさんありますが、ディズニープラスは作品を発表する“世界最高の場”だと思われるように頑張っていきたいです。そのためには、我々はもっと、届け手として優れている面や、力強さをアピールしていく必要があると思っています。
お客様に対しては、日々の楽しみとして我々の作った作品を見てほしいですし、ささやかな感動を積み重ねられる存在でありたいです。

江崎近年は好きな作品を見終わったら、その配信サービスの中で次に見たい作品を見つけて……と新たな作品との出会いの場にもなっていますよね。アニメファンに対して、新たなアニメを届けることをひとつのミッションとしているアニメメディアの人間としては、とてもジェラシーです(笑)

八幡そうなんです! 最近、うれしい出来事がありました。小さい子どもがいる知人が、子どもとディズニー作品を見るためにディズニープラスに加入してくれたんですけど、子どもが寝静まったあとにアニメを見るようになったそうです。これまでアニメをあまり見ていなかったのに、夜更かししてまでアニメを見るようになったと聞いて、すごくうれしかったです。そんなふうに、今までになかった出会いをディズニープラスで提供し続けていきたいなと思っています。

【八幡拓人 プロフィール】
ウォルト・ディズニー・ジャパンのアニメーション責任者。エイベックス・ピクチャーズ、ワーナー ブラザース ジャパンでアニメ作品の宣伝、企画プロデューサーなどの経験を経て、2021年9月にウォルト・ディズニー・ジャパンに入社。ディズニープラスではオリジナル コンテンツ部門内のアニメ作品制作・調達などを統括している。

ディズニープラス(C)2023 Disney and its related entities
『Project BULLET/BULLET(仮) 』(C)E&H/GAGA ディズニープラス
『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』(C)2023 Disneyディズニープラスで今冬独占配信

《杉本穂高》
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