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『BanG Dream!』(以下、バンドリ!)シリーズに登場するバンド・Roseliaの結成秘話を描いた作品だ。スマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下、ガルパ)で描かれたRoseliaバンドストーリーや、イベントストーリーを再構成して映像化されておりファンにはたまらない内容となっている。
今回、柿本広大総監督と三村厚史監督にリモートでインタビューを実施。『バンドリ!』シリーズ初となる、ストーリーを中心とした劇場アニメをどのようにつくっていったのか?
さらに「総力戦だった」と語るシナリオづくりの過程、衣装や髪型へのこだわり、Roseliaらしさを出すためのカメラワークなど、作品作りの舞台裏に迫った。
[取材=沖本茂義、文=ハシビロコ]
公開後に感じた手ごたえ
――『BanG Dream! Episode of Roselia I : 約束』がいよいよ公開となりました。ファンの方のリアクションなどはチェックされていますか?
三村:僕は普段からエゴサーチするタイプなので(笑)、SNSで感想をチェックしています。「ライブシーンがよかった」、「映画を見て泣いた」などの感想を見たとき「作ってよかったな」と手ごたえを感じました。
柿本:僕はエゴサが下手なのであまりしませんが(笑)、多くの方から嬉しい感想をいただいています。映画が公開されてひとりで打ち上げをしていたときもTwitterでリプライをくれた方がいてありがたかったです。
マグロの寿司を食べていたら「リサ色ですね!」とコメントをいただき、マグロの赤い色からリサを連想するとは、さすがバンドリーマーだと思いました(笑)。
1人打ち上げ #バンドリEoR1 pic.twitter.com/7IdweOY1ZJ
— 柿本広大 (@kamokohdai) April 24, 2021
僕もファンのみなさんと一緒に完成した映画を楽しみたいので、これからはいち観客として見に行きたいです。
――本作では柿本さんが総監督を、三村さんが監督を担当しています。おふたりのそれぞれの役割は?
柿本:僕がプリプロ(企画や脚本、絵コンテなど実制作に入る前の作業のこと)と最終チェックを、三村監督が現場のレイアウトチェックやコンテチェックなどを担当しました。
本作の制作決定時、ほかにも『バンドリ!』の劇場版を数本並行して作っていく予定だったので、僕ひとりですべてを監督することは難しかったんです。
そこで制作サイドと相談して、アニメシリーズや劇場版『BanG Dream! FILM LIVE』でスーパーバイザーを担当していた三村さんに監督をお願いしました。これまではライブパートの統括をお願いしていましたが、日常パートも安心して任せられるだろうと。
リサと友希那の幼少期を映像化したかった
――映画の内容に関して、ブシロードさんやCraft Eggさんからオーダーはありましたか?
柿本:企画時、『ガルパ』のRoseliaイベントストーリー「ノーブル・ローズ」シリーズを劇場アニメ2本分の尺で映像化したいと明確なオファーをいただきました。
ただ、「ノーブル・ローズ」だけでは映画としてのボリュームが足りないかもしれない。そこでブシロードさんやCraft Eggさんと相談しつつ、脚本を作っていき内容を膨らませていきました。Craft Eggさんには、作中に盛り込みたいセリフのリストを作っていただき、ブシロードさんには尺など規格面での調整をしていただきました。
――打ち合わせの中で、とくにボリュームを膨らませた部分はどこでしょうか。
柿本:友希那とリサの回想シーンです。「ノーブル・ローズ」最初のエピソードである「ノーブル・ローズ-花々を連れて-」には、リサが友希那と過ごした幼少期を振り返って歌詞を書くシーンがあります。
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本作の肝となる場面でもあったので、ふたりの出会いや音楽の原点も含めて映像化したいと企画の方向性が少しずつ変わっていきました。
――柿本さんは脚本も担当されていますが、シリーズ構成の綾奈ゆにこさんとはどのように役割分担しましたか?
柿本:綾奈さんとはアニメシリーズの頃から二人三脚のように一緒にストーリーを作ってきたので、今回も同じように相談しながら内容を練り上げていきました。
あとは尺を短くしきれず悩んでいたときも助けてもらって。本作では「ノーブル・ローズ」だけでなく『ガルパ』のRoseliaバンドストーリーも描くことになったため、ボリュームの調整に苦労しました。
シーンやセリフの選択に迷ったときは主軸でもある「ノーブル・ローズ」に立ち返り、関連が深いエピソードをピックアップしていきました。たとえば作詞をするリサの気持ちに紐づくエピソードはどれかな、と。
それでも尺が収まらなかったので、綾奈さんに一度脚本を持ち帰ってもらい、カットできそうな部分を提案していただきました。脚本作業は今振り返ると、本当に総力戦でした。
――たしかに本作のストーリーは、Roseliaの結成・衝突・成長など要素満載です。
柿本:当初はバンドストーリー1章をダイジェストのように短い尺で描いて、バンドストーリー2章に多く時間を当てるプランだったんです。ただ、物語全体を見てみると結成の過程はやっぱり重要だろうと。
メンバーがRoseliaになる前の個性がよく出ている部分だったので、もっとひとりひとりをしっかり描きたいとシナリオを作っていった結果、予想以上のボリュームになりました。
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また、映画全体でもっとも感情が頂点に達するバンドストーリー2章のラストでEDを迎える案もあったんです。しかし本作は「ノーブル・ローズ」のエピソードを描くことが企画の根底にあったので、そこは外したくなかった。だからこそ、1本の中で2本の映画を見ているような感覚になるかもしれません。
――映画全体でお客さんの感情がどう動くのか意識していたのでしょうか。
三村:本作の打ち合わせでは、視聴者の「感情曲線」をホワイトボードに描きながら進めていきました。
「ここでお客さんの感情をぐっと高めて、このシーンではシリアスに感じてもらおう」などの波を意識して。映画の時間経過と感情の位置は、シナリオの時点でしっかり落とし込んでいました。
柿本:脚本が映像の土台となるくらい作りこんでおきたかったんです。本作では回想シーンと現在の時間軸が入り混じっていますが、登場人物の気持ちは途切れないようなフィルムにしたいと思っていました。
いきなり感情が飛躍するのではなく、描かれていない時間の中でもメンバーが何を考えていたのか伝わるように作っています。
――本作にはRoselia以外のバンドメンバーも登場します。ほかのバンドと関わるシーンはどう描こうと思いましたか。
柿本:『ガルパ』のバンドストーリー2章で友希那が迷っているときに香澄が助けてくれる関係性がすごくドラマチックなんです。ストーリーを読んだときの気持ちを映画でもできるだけ再現したいと思っていました。
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ただ、尺の都合などでカットしなければならないセリフもあったので、音楽や表情、所作などで感じ取ってもらえるように映像作品ならではの描き方をしています。
収録で感じたキャストの熱量
――アフレコの雰囲気はいかがでしたか。
柿本:ゲームで1度演じてもらったシーンなので、キャストさんの思い入れがとても強かったです。ゲーム収録当時の気持ちを思い起こしてから映画の収録に来てくださったので、逆にディレクションする立場である僕たちは気負い過ぎず、いつも通りのリアクションを返すようにしました。
細かいディレクションもそこまで行わず、演じていただくそのシーンが映画全体でどのような役割を担うのかを説明するぐらいでした。
あとはアドリブをたくさん入れていただいたことも印象的でした。CGアニメでは先に声を収録してから映像を作ることもできるので、アドリブも積極的に反映させています。
基本的にはこれまでRoseliaを作り上げてきたキャストの演技を活かす方向で考えていきました。
あくまで外から見た印象ですが、Roseliaのキャストの皆さん、当初と比べて演技の厚さが増したと思います。ひとつひとつの息遣いやセリフの説得力などが、劇中の時間軸に合わせつつも、その先の展開を感じさせるものになっている。映画全体を通しての演技プランが明確だったので、とてもありがたかったです。
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――コロナ禍での制作となったため、収録は個別に行われたのでしょうか。
柿本:あこ役の櫻川めぐさんはひとりで、あとはふたりずつに分けて収録しました。Roseliaの5人はずっと活動をともにしてきたので、別録りでもアドリブなどの空気感がピッタリで驚きました。
収録日程によっては、もともと台本に「アドリブで」と指示を入れてあった箇所でも、セリフの候補を持っていく場合があるんです。でもあえてセリフを渡さずに演じてもらったら内容がとてもよくて。
僕らが考えたプランは捨てて、キャストさんの演技をそのまま採用するケースも多かったです。
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