「鬼滅の刃」強さは“人を守るため”の煉獄とは真逆…極端過ぎる“弱肉強食”の価値観を持つ悪役・猗窩座 | アニメ!アニメ!

「鬼滅の刃」強さは“人を守るため”の煉獄とは真逆…極端過ぎる“弱肉強食”の価値観を持つ悪役・猗窩座

敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第6弾は、『鬼滅の刃』より猗窩座の魅力に迫ります。

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猗窩座(声:石田彰)(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 猗窩座(声:石田彰)(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』第3弾キービジュアル(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』第1弾キービジュアル(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』本ポスター(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
  • 劇場版『鬼滅の刃』無限列車編(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
    アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
    敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 ~彼らの美学はどこにある?」第6弾は、『鬼滅の刃』より猗窩座の魅力に迫ります。



現在、記録的な大ヒットとなっている『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の真の主人公は、煉獄杏寿郎だと言われる。

だとすれば、真の悪役もメインビジュアルで炭治郎と相対する魘夢(えんむ)ではなく、猗窩座(あかざ)ということになるだろう。公開後に新たに発表されたビジュアルでは、それを裏付けるかのように煉獄と猗窩座がぶつかり合うものとなっている。

今回は、映画終盤に突如登場して強烈な印象を残すこの猗窩座について考えてみたい。

※ここから先、劇場版や原作マンガの猗窩座についてのネタバレを含みます。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』第3弾キービジュアル(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『鬼滅の刃』の鬼たちは様々な特殊能力を持っており、あの手この手で鬼殺隊を追い詰める。その中にあって、猗窩座は肉体一つで真っ向勝負を挑んでくる珍しいタイプだ。

猗窩座は強い者をリスペクトする。一度見ただけで「至高の領域に近い」と煉獄の強さを認め、「お前も鬼にならないか」と誘いをかけてくる。それは、鬼側の戦力を増やし、鬼殺隊の戦力を削ぐというような目的ではない。鬼は人間より遥かに長く生きられるので、ともに研鑽を積んで高めあおうという誘いだ。相手が敵であっても強い者への敬意は失わないタイプなのだ。

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反対に、彼は弱い者は徹底して軽蔑する。魘夢との戦闘で傷ついている炭治郎に、話の邪魔になりそうだからという理由だけで殺そうとするし、後に炭治郎と再戦する時も、「弱者には虫唾が走る、反吐が出る。淘汰されるのは自然の摂理に他ならない」と言い放つ。猗窩座は、極端なほどに弱肉強食の思想を持っている。

それは、煉獄や炭治郎とは真逆の価値観だ。煉獄は、強い者は弱い者を助けるために力を使うものだと固く信じている。そんな彼の信念を貫く姿が、多くの観客の涙を誘っている。

劇場版『鬼滅の刃』無限列車編(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
しかし、猗窩座にも煉獄や炭治郎たちと同じような考えを持っている時代があったのだ。

実は人間時代の猗窩座は、病気がちな父親のために、薬を手に入れたい一心で強くなろうとしていた。高すぎて薬が買えないから盗みを働くしかなかった猗窩座は、捕まる度に拷問やひどい仕打ちを受けていたが、父のために我慢を続けていた。その我慢強さは炭治郎ともいい勝負かもしれない。

そして、罪人として流れてたどり着いた土地で運命の出会いを果たし、愛する女性と正しい力の使い方を教えてくれる師匠に出会う。
やっとつかんだささやかな幸せを守るために自分の力を使うのだと、猗窩座は誓っていた。

しかし、彼は愛する人たちを守れなかった。彼が弱いから守れなかったのではない、妬みと嫉みをこじらせた心の弱い連中が、猗窩座のいない間に卑怯な手段で殺したのだ。

「弱い奴が嫌いだ。弱い奴は正々堂々やり合わず、井戸に毒を入れる」猗窩座は述懐する。

だから、鬼になった後も猗窩座は真っ向勝負にこだわるのだろう。朝日から逃げる時に炭治郎に「卑怯者!」と言われた時に、癇に障ったような表情を浮かべるのは、そんな過去が理由なのかもしれない。

愛する人をみな失った猗窩座の過去は、炭治郎の過去と紙一重の違いしかない。鬼舞辻無惨に家族を殺された炭治郎の場合は、たった一人禰豆子が生き残ってくれた。炭治郎にはかろうじてまだ守るものが残ったのだ。もし、家族が本当に全滅していたらどうなっていただろうか。

猗窩座(声:石田彰)(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『鬼滅の刃』の世界は残酷だ。ほんの少しの差で弱い人を守る者になったり、その逆になってしまったりしてしまう。でも、きっとそれは我々の生きている現実社会も同じなのだろう。そんな紙一重の差で、煉獄や炭治郎と猗窩座は殺し合わないといけなくなってしまった。

猗窩座のことを深く知ると、煉獄や炭治郎たちとも、もっと違った関係が築けた可能性もあったのかもしれないと思えてくる。そう思うと、余計に『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の終盤の展開が悔しくて悲しく感じられるだろう。ほんのちょっとの差で敵と味方に分かれてしまう残酷な運命に涙が余計に流れてしまうはずだ。
《杉本穂高》
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