「YouTubeアニメチャンネル」急成長のいま、“アニメと著作権”の関係に変化…「違法動画ではなくUGCと捉えることも必要」 | アニメ!アニメ!

「YouTubeアニメチャンネル」急成長のいま、“アニメと著作権”の関係に変化…「違法動画ではなくUGCと捉えることも必要」

海外人気の勢いが止まらない日本のアニメーション。かつては海賊版サイトなどの違法アップロード問題が大きく取り沙汰されていたが、昨今はNetflixなど動画配信サービスの普及によりやや落ち着いた印象がある。

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海外人気の勢いが止まらない日本のアニメーション。かつては海賊版サイトなどの違法アップロード問題が大きく取り沙汰されていたが、昨今はNetflixなど動画配信サービスの普及によりやや落ち着いた印象がある。

だが、実際のところはどうなのだろうか。

本記事では、「アニメと著作権」の歴史と先端事例について、専門家の意見を交えて紹介する。
[取材・文=いしじまえいわ]

■アニメと著作権・前史


まずは「アニメと著作権」の歴史を振り返ってみたい。

アニメの著作権問題は、原作権の所在に関する係争やいわゆるパクり問題、中間成果物の権利問題などはTVアニメの黎明期から存在した。
ただしその多くが作品単位の問題や制作者や権利者間での問題であり、産業全体に係る問題になるケースは少なかった。

また、映像の保存がビデオテープ等のアナログメディアで行われていた時代では、保存を繰り返すことで画質や音質が劣化していた上にそれを共有する方法も限られていたため、ファンによるアニメのコピーが著作権法で認められた私的複製の域を出ることは稀だった。
アニメファンが著作権問題に直接関わるケースが増え、ビジネス面でも影響があると見なされるようになったのは、ITインフラが整いはじめてからのことだ。

■21世紀のアニメ違法視聴問題


2000年代に入る前後にデジタルデータの取り扱いが主流になると、作品のコピーによる劣化はほぼ問題にならなくなった。また、それをネット上で不特定多数に共有する方法も現われたことで、アニメのコピーは私的複製の域を超え、違法視聴が問題視されるようになった。

くしくも違法コピー問題が顕在化した00年代は深夜帯放送のアニメが増え、玩具やキャラクターグッズに代わってDVDなどのビデオグラムがアニメの主商品になっていった時期でもあった。
主力商品とバッティングしたことも、違法コピーや違法視聴が問題化した要因の一つだろう。

アニメの違法コピーと共有による著作権侵害は、90年代末から00年代初頭にかけて現われた「ファイル共有ソフト」によって注目されることとなった。
当初は比較的データサイズの小さい音楽データなどが共有されていたが、ブロードバンド環境が整うにつれてアニメ本編映像も違法に共有されるようになった。2007~08年には『機動戦士ガンダム00』の映像や『CLANNAD』の画像の違法配信で逮捕者も出ている。
利用者から逮捕者が出たことや共有ソフト「Winny」の開発者が逮捕されたこと(ただし開発者の金子勇氏は著作権侵害幇助容疑で逮捕されたが2011年に無罪が確定している)などの影響もあってか、次第に利用者が減っていった。

【参考記事】ファイル共有ソフトユーザー減少傾向続く ACCSとACAがノード急減を報告

その一方で隆盛してきたのが、2005年に登場したYouTubeなどの「動画共有サービス」だ。PCへのソフトウェアインストールや操作知識が必要とされたファイル共有ソフトと違い、PCが無くてもスマートフォンやタブレット等でも視聴できる簡易さやウイルス感染の恐れが少ないことから国内外で普及したが、同時にアニメの違法共有のトレンドも動画共有サービスの方に移行していった。

2006年に放送されたアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒット要因の一つに、本編映像が動画共有サイトで度々違法に共有され拡散したことが指摘されている。
本作は全国ネット放送ではなかったため、海外だけでなく国内でも当初は違法アップロードされた映像で視聴した人も多かったものと思われる。

当時はTV放送とほぼ同時にネットで世界同時公開という現在のスタイルは確立しておらず、TVで視聴、録画できなかった場合、パッケージが発売されるまでは録画した記録メディアを知人やレンタルビデオ店で借りるか違法で視聴するしかなかったのだ。

海外で正式に放送・パッケージ販売されるにはさらに大きなタイムラグがあったため、海外のアニメファンが正式なビジネス展開が始まる前に字幕(fan-subtitled=ファンサブ)を付けた動画を無料で公開し、それが人気を博してしまう例もあった。

このように、動画共有サイトでの違法配信は長年アニメ関係者を悩ませることとなった。
一方で、日本のニコニコ動画やアメリカのCrunchyroll、中国のbilibili(ビリビリ動画)のように当初はアニメを違法で配信していたものの次第に正式にライセンスを獲得するようになり、現在ではアニメ製作に係るようになった動画共有メディアも存在する。

■VODの台頭、専門家はどう見る?


その後、NETFLIXやAmazonプライム・ビデオなどの「定額制動画配信サービス」(VOD=Video on Demand)の台頭によって状況はまた変化した。
2010年代半ばに登場したこれらのサービスによって、違法アップロードされた動画よりも高画質の映像コンテンツを放送からほぼ同時に(場合によっては先行で)視聴することが可能になった。
また、コストをかけることで字幕の翻訳クオリティも向上した。

比較的安い金額の課金で高品質なアニメ映像を合法的に見られるようになった現在、法を犯して低画質の動画でアニメを見たいという人は過去に比べて減ったのでは、と思われる。

では、実際のところはどうなのだろうか。

ソーシャル(SNS)に最適化したコンテンツ制作、SNS運用、コンテンツ著作管理の専門家集団であり、住友商事、東宝、米Fullscreen3社の合弁事業であるALPHABOAT社のゼネラルマネージャー・佐藤法重氏は「アニメを含む映像コンテンツ全体の違法アップロードは減少傾向にあるのでは?」と語る。

VODの普及に加え、YouTubeなど動画配信プラットフォームのシステム自体の著作権管理体制が強化されたことが要因だという。

では、ネット上でアニメの著作権は適切に守られるようになったのかというと、そうとは言い切れない。
佐藤氏は「YouTubeなどのプラットフォームは著作権管理の仕組みを提供するが、そのシステムを適切に活用できるかはあくまで権利者側に委ねられている。アニメの公式YouTubeチャンネルが数多く開設されアニメを無料配信するケースが増えたことで、きちんとした対策と行っていないタイトルについては、それをダウンロードして違法で転載される危険性は増加傾向にある」
「権利者自身が、きちんと「違法動画に向き合い、適切な対応を実施できる管理体制を整備しなければいけない」という。


→次のページ:これからのアニメとネットの付き合い方は?



《いしじまえいわ》

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