ABEMAはアニメ業界においても存在感を増している。
2020年3月21日、22日に開催予定だった「AnimeJapan 2020」。新型コロナウイルス流行の影響で開催中止となってしまったが、ABEMAは多くの作品に情報発信の場を提供した。
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なぜABEMAはこれほどアニメに力を入れているのだろうか。
アニメ!アニメ!では、ABEMAアニメジャンルを担当する山崎健詞プロデューサーとイード メディア事業にてビジネス統括を担当する森との対談インタビューを実施。3月の特番放送までの経緯や、チャンネルの果たす役割、これからのエンターテインメントの在り方などをリモートインタビューでうかがった。
山崎健詞
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株式会社AbemaTV アニメ局 プロデューサー
2016年新卒にて株式会社サイバーエージェント入社。
メディア事業部のFRESH!に配属後、営業・番組制作などを経て、現職に。
ABEMAアニメジャンル全体の編成及び、「声優と夜あそび」のプロデューサーを務めつつ、
ABEMAアニメ配信と連動した商品化事業部を立ち上げ兼務中。
聞き手:森元行
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株式会社イード メディア事業本部 副本部長 ビジネス統括
■アニメには心をつかむパワーがある
森:山崎さんは現在、ABEMAのアニメチャンネルすべてに関わっていますが、もともとアニメ好きでしたか?
山崎:アニメは見ていましたが、それほど詳しくはありませんでした。頻繁に見るようになったのは、仕事で関わるようになってからです。
アニメチャンネルへの異動後、最初に担当した企画が『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズでした。当時は『シン・ゴジラ』のテレビ朝日地上波初放送のタイミングだったので、庵野秀明監督つながりで特集をしていたんです。
TVアニメの『新世紀エヴァンゲリオン』は過去も見たことがありましたが、ストーリーを覚えていた程度。改めて見返すと深みや重みのある内容に心を打たれ、アニメが持つパワーに驚かされました。
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森:僕自身もそうですが、以前はアニメと聞くと『クレヨンしんちゃん』や『ドラえもん』、『ドラゴンボール』、『ワンピース』などの国民的タイトルを想像していたと思います。
メディア企業で働いているということもあり「エンターテインメントを学ぼう」と考え、最初にチェックしたのが、『エヴァ』と『涼宮ハルヒの憂鬱』と『機動戦士ガンダム』。初めてアニメを真剣に見ると心にガツンと響くものがあり、「アニメはすごい!」と、すぐに思いました。
アニメチャンネルはABEMA開局当初からかなりのウエイトを占めていたと思います。異動が決まったときの心境はいかがでしたか?
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山崎:ABEMA内でも重要視されているジャンルだと認識していましたし、世の中への反響も大きくやりがいのある仕事だと思っていました。
異動していきなり年末年始のアニメ編成に関わることになったので、迷ったり悩んだりする暇もなく、忙しく駆け抜けていたように記憶しています。
しかしアニメは作品数が膨大なので、すべての作品をチェックしきれない難しさも感じました。
森:ABEMAのアニメチャンネルはもともと5チャンネルありましたが、現在は3チャンネルになっています。どのような経緯で変化したのでしょうか。
山崎:チャンネル構成を見直した結果、5つあったものが3つに集約されました。
まずは新作アニメ用のチャンネルと2000年代以降の作品を扱っていた「アニメ24」が統合し、2010年以降の作品を取り上げるチャンネルになりました。
深夜アニメチャンネルは「アニメLIVE」という名前に変更し、『声優と夜あそび』のような生放送も定期的に放送しています。
「なつかしアニメチャンネル」と「家族アニメチャンネル」も統合した結果、現在の「みんなのアニメチャンネル」になりました。ここでは『ドラえもん』のような国民的人気作を中心に放送しています。
森:チャンネルを再編成した当時、視聴者の反応はいかがでしたか?
山崎:新作アニメの見逃し枠が減ったので、不便さを感じさせてしまったかもしれません。
国民的なアニメに関しては視聴を習慣づけていたユーザーも多かったので、番組表の再編で戸惑ったという声もありました。
混乱させてしまった点もありつつ、新作アニメの最速・先行配信や特別番組、『声優と夜あそび』などの生放送、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』など国民的アニメのさらなる広がりと、攻めていけるCH編成にできたので、今では改編前の倍以上のユーザーにアニメを見てもらえています。
■ABEMAと組む利点を感じてほしい
森:ABEMAは開局4周年を迎えましたが、プラットフォームとしての成長を感じていますか?
山崎:おかげさまでユーザー規模としては順調に成長できています。新作アニメをどこよりも早く見られる環境づくり、視聴を広げるための特番、『声優と夜あそび』のような挑戦的な番組など、これまで工夫してきた成果が少しずつですが表れてきました。
今後収益を上げて事業を成立させるためにも、今年1年は勝負だと思っています。
森:ABEMAは独自のアニメ特番や声優を中心に据えた番組など、作品と視聴者をつなぐ内容が充実している印象です。番組作りの狙いはなんでしょうか。
山崎:「ABEMAと組むことでコンテンツの知名度が上がった」と思ってもらえる場所にしたいと考えています。
ABEMAにはスポーツや麻雀などさまざまな専門チャンネルがあるため、コアなアニメファンではないユーザーも多いです。
だからこそアニメにそれほど興味のなかった人が偶然ABEMAアニメチャンネルを目にすることで「こんなにおもしろい作品があるのか」と気づいてくれる。こうした環境は、新たなファンを獲得するチャンスだと思っています。
森:僕もまったく知らなかったタイトルを、ABEMAがきっかけで「おもしろそう」と気に留めたことがありました。
僕のようなメディアの人間はインタビューや取材などを通してさまざまな作品との出会いがありますが、一般的なユーザーはこうしたチャンスが少ない。
だからこそABEMAの特番や声優バラエティーが、ユーザーとアニメをつなぐ出会いの場になっているのかもしれません。
一方でアニメ制作陣は、ABEMAをどうとらえているのでしょうか。
山崎:正直なところ、開局当初は得体の知れない媒体だと思われていたと聞いています(笑)。
しかしABEMAプレミアム会員の増加や、特番などの作品に踏み込んだ企画をご一緒させていただくうちに、徐々にビジネス面でも実績を認められるようになりました。
最近はどこの配信プラットフォームも最速放送の権利を狙っていますが、ABEMAは作品を広めていくことを一つの武器としています。
アニメ制作陣からも、宣伝におけるプラットフォームとして評価していただけることもあり、手応えを感じています。
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