ドロヘドロ、ゾンビランドサガ…アニメスタジオ・MAPPA、ヒット作の裏にある“手のかかること”をやる精神【インタビュー】 3ページ目 | アニメ!アニメ!

ドロヘドロ、ゾンビランドサガ…アニメスタジオ・MAPPA、ヒット作の裏にある“手のかかること”をやる精神【インタビュー】

アニメサイト連合企画「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」の第22弾は、「MAPPA」より現社長の大塚学さんと制作部の部長を務める野田楓子さんに話を聞いた。

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■後進を育てるための待遇の用意とモチベーションの維持


――アニメーターさんの待遇など、会社として力を入れていることはなんですか?

大塚: 新卒から社員として雇うことです。
アニメーターさんの頑張りがないと作品は成立しないんですが、まだまだ人材不足です。より多く雇用して教育を充実させて人を増やしていくことは、大きな課題として取り組んでいます。

――スタジオが求める人材は?

野田:制作部では、いろんな個性があるといいなと思っています。それこそ目的、演出になりたいとかプロデューサーになりたいとかも、それぞれ別でいい。
その代わり、ちゃんと目の前の仕事に対して、目的を持って取り組んでくれる人ですね。

特別大きな目標じゃなくてもいいんです。新人さんだったら、「今はこれができないけれども、次はできるようになりたい」とか。
やはり、目標がある人とない人では、成長の度合いもモチベーションの持ち方もまったく違うんですね。目的意識が高い人に対しては、指導する側も仲間として目的をもっている人をどう育てていけるのか、何を与えるとその目的を速く達成できるのかを伝えやすくなりますし、単純に一緒に仕事をしていて楽しいと感じています。

――ひとりひとりが目的意識を持って仕事に取り組み、スタジオとしてひとつの作品を作りあげたいというのが、MAPPAの目指すところなんですね。これまでに、うまくいった現場はありましたか?

野田:まだまだです。ですから、私自身も反省点を持って、次はここまでできるようになりたいという意識を持ち続けながらやっています。

――クオリティを維持しつつ作品数を増やすには、それを回す体制づくりも必要かと思います。何か意識されていることは?

大塚:業界で制作本数を減らそうという意見もありますが、それは目の前の課題から目を背けているだけだと思います。作品数が多いという事は需要があるということで、その需要に対して高品質な作品をいかに供給するか。現状では弊社もまだまだですが、常にそこは意識したいと思っております。
ですからMAPPAでは、生産力を高めていくことでアニメ業界にある今の問題すべてに目を向けていきたいと考えています。

大塚学氏
野田:問題から目を逸らしても、意味がない。作るものは作るし、クオリティを下げて作るなんてことはしたくないし、やはり面白くないですから。

――そこまで会社全体で情熱を持って取り組める原動力はなんですか?

野田:私自身、12年ほど業界でアニメを作っているんですが、常に目標が変わり続け、次へ繋がっていくのがすごく面白いんです。
設立からまだ10年ほどの若い会社なので、経験すべきことや吸収すべきことが山ほどあるというのが面白い。

それこそ制作部の部長になって、クリエイティブな面だけでなく、人材育成や経営について考えたり、大塚の知見を吸収することで、自分が昔やってきたものとは違うものが見えてきたり、足りない部分がわかったりする。それが、アニメの仕事を続けられるモチベーションになっています。

大塚:ずっと、アニメーション制作において強い組織ってなんだろうと模索し続けているんですが、いろんな性格やこだわりがあるって人がうちの会社にもたくさんいて、その個性を排除して一つの考えにそろえてもダメなんだろうなって。
組織の中には、お互いを刺激し合う緊張感が必要で、それを維持するためには、いろんな人間がいろんな目標と考えを持って、ひとつの作品を作ることができる「環境」が肝であると、最近改めて気づいた感じですね。

『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』キービジュアル第2弾(C)恋とプロデューサー/Paper Pictures/MAPPA
Papergamesの恋愛シミュレーションゲームを原作としたTVアニメ『恋とプロデューサー~EVOL×LOVE~』。2020年7月15日よりTOKYO MXほかにて放送(C)恋とプロデューサー/Paper Pictures/MAPPA
――先ほど、視聴者の反応が現場の力になるという話が出ましたが、ファンからの応援を感じるシーンはどんなところですか?

野田:やはり直接お客さんの顔が見えるイベントですね。コスプレをして参加してくださっている方を見ると「そのキャラをそんなに愛しているんだ」という熱量をすごく感じます。特に海外だと、海を越えて愛してくださっていることを実感しました。

野田楓子氏
大塚:国内外でお客さんが来てくれて、質疑応答でいろんな意見を聞けるのが刺激になります。

――次なる目標は?

野田:労働環境の改善と映像表現の追求の両立です。
表現面だと、手描きとCGをどう融合させて新しい画づくりをしていくのか、日本のアニメーション業界ならではの手法を磨いていきたいです。

まだ誰も見ていない表現、気持ちよさや面白さ、話や音楽などいろいろなものを含め、新しいお客さんに刺さる作品を作りたいと思っています。

大塚:20代の監督がアニメーションで世の中に何を残すのかを見たいので、20代の若手演出家、監督が作品を作る機会を増やしたいです。失敗してもいい、その時にしか作れない作品をぜひとも世に残して欲しくて。
若さ故の勢いやエネルギーを大切にしていきたいですね。

現在、MAPPAの演出部にいる若者には、20代で監督することを視野に入れてやっていきなさいと伝えています。
実際に監督をやった子もいますし、できる限りチャンスを与えていきたい。誰でもなれるわけではないからこそ、志す土壌が大事なんです。
やっぱり競争の中で生まれた作品は、キラキラしていてすごくいいんです。

これからのMAPPAの演出部に期待してください。

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《中村美奈子》
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