■どんなタイプの後ろ向き? 二人の自己分析を聞いてみた!
――後ろ向きとひと言に言っても、様々なタイプがあると思います。お二人はどんなタイプの後ろ向きなのか、自己分析を教えてもらえますか?
明:僕の場合、立ち飲み屋なんかで「今後絶対会わないだろう」という人とは、その場ですぐにワーッとしゃべれるんですよ。
けれど、今後の人生においても関わってくるであろう人たちと話すとなると、めちゃくちゃ慎重になる。
だから芸人さんとしゃべるのが一番緊張するし、人見知りします。常に「試されてる!」って思っちゃう。もともとの自分の点数が高くないから、なるべく減点されずに済むようにってやると、あまりしゃべれなくなる。学生時代からそうですね。
彰:僕は……、最近はひょっとすると、人見知りとはちょっと違うジャンルなのかもしれない、と思っていて。石田さんのように「人生で関わる人たちには減点されないように慎重に接しよう」ではなく、僕はそもそも、減点されないように振る舞うのが大変だから最初からシャットアウトしちゃうんです。
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明:シャットアウト(笑)。
彰:最近よく思うのですが、僕は人見知りではなくて、例えばゴミ屋敷に住んでる偏屈なオヤジというか……(笑)。どう考えても周りに迷惑かけてるし、人から「片づけなさいよ」と言われると「いや、これは全部必要なものなんだ!」と言い張っているのと同じというか。
きっと言い張らざるを得ない状況に、自分で自分を追い込んでいるんです。ちょうどいいタイミングで人に甘えてこなかったから、逆に今さらできなくなってしまって……。
明:過去の蓄積がどんどん重なって、もう降りるに降りれない状況に(笑)。
彰:それこそ、いわゆるファン目線で見てくれている人たちはいいんですよ。たとえばペットでワンちゃんを飼って「可愛い!」って言っている人だって、野犬に噛まれたら逃げるでしょう? そこを超えてくる人っていうのは、本当にムツゴロウさんみたいな特殊な人だけですよ。
自分のことを愛玩動物にたとえるのは、すっごく抵抗がありますけど(苦笑)、僕をペットとしてしか見なくていい人には、楽しんでもらえていると思うんです。
ただそこから一歩入ってこようとすると実態は野犬ですから、それを可愛がってやろうなんていう酔狂な人は少ないですよ。……このインタビュー、僕にとってデメリットしかない気がしてきた(笑)。
明:彰さん、誰かに言われてるわけじゃなくて全部、自白ですからね(笑)。
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――でもだからこそ、そんなおふたりがタッグを組み、公演を成功に導いたことに意義があると思います! 実際、手ごたえはいかがでしたか?
明:公演って、やっぱり生き物ですよね、ホントに。
彰:うん、お客さんに乗せてもらうことも本当に大きいし。
明:ステージに立ってやっと分かったことも多かったです。「このセリフって、音楽のこのタイミングで言ったらめちゃくちゃ気持ちええやん!」と本番中に分かって、そしたらすごくやりやすくなって。
公演は東京で始まって大阪で終わったんですけど、僕は最初と最後で全然違いました。気付いて、そこから順応していって、最終的には調子に乗るまでいってるんで(笑)。
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彰:あはは(笑)。
明:最後のほうは自分から音にセリフを合わせにいっちゃう、みたいな小ワザまでやるようになったりして、我ながら姑息やなぁと。
彰:いや、それを姑息と言っちゃダメですよ。お客さんとして見たとき、音楽とシンクロする気持ち良さや、感情の昂ぶりの振幅はとても大事。合わせられるなら合わせにいくのが正解だと思いますよ。
明:僕は漫才しかしてこなかったから、未知の領域ですごく面白かった。お芝居をやらせてもらったときに「音に合わせてやってくれ」みたいなこともあったんですけど、全31回公演中2回しか成功しなかったし(笑)。
そういうのをキメられないタイプだったんですが、今回はうまいこと、調子に乗るまでいけた気がします。
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――彰さんは、何度も朗読劇を経験されていますが、今回の明さんの朗読はどうでしたか?
彰:石田さんのセリフが、「ああ、受けやすい!」って感じてました。さっき石田さんには、音楽に合わせられるなら合わせたほうがいいと言いましたけど、僕自身は周りの音がなかなか耳に入ってこないまま本番を迎えてしまって。でも照明や音楽や映像が入って、その一体感を石田さんが感じて僕にぶつけてくれるのがヒシヒシと伝わってきました。
明:嬉しいです。けど彰さんの朗読は本当にスゴ過ぎました。一人で読んでいたときは「このセリフ言いにくいなぁ」と思っていたものが、彰さんがいてくれると、セリフがめちゃくちゃ言いやすいんですよ。僕の次の気持ちを引き出してくれる感覚がすごくて、ずっと勉強してしまいましたね。
公演の後半になってくるとだんだん客観的にも見られるようになってきて、「そうか、ここで気持ちを上げるためにこっちを落としてはんのか!」みたいなことも分かって。しかも彰さんはそれが毎度違うので、すごく楽しかったですね。
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――ちなみに、明さんには井上さんという相方がいますが、彰さんはパートナーとしていかがでしたか?
彰:漫才と朗読では、やってることが全然違うと思いますよ。目的も違うし。
明:彰さんも井上も、音域は広くてそこは似ているんだけど、井上はセリフを音だけで言っちゃう感じなんです。それで成立するんだけど、それ以上の気持ちには踏み込まない。だから、しれっとツッコミができる。
でも、石田さんは音の幅も広いうえに、グッと力を入れたりと強弱やバリエーションも豊富で、「これができたらいろんなことやれるやろうなぁ!」って、そんなふうに見てました。
彰:ありがとうございます。でも、すごく居心地悪いです(笑)。
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