「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.14 グラフィニカ
世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。
全インタビューはこちらからご覧ください。
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【会社プロフィール】
グラフィニカ 代表作:3DCGで『ガールズ&パンツァー』など多数の作品に参加するほか、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』『十二大戦』、『HELLO WORLD』(2019年9月20日公開予定)などがある。
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グラフィニカ代表作品のひとつ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』は海外からも高く評価された
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◆ ◆ ◆
3DCGなどでさまざまな作品に参加してきたグラフィニカ。
2014年には3DCG映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』を制作し、2017年には制作元請けとして西尾維新・中村光原作によるTVアニメ『十二大戦』を手がけるなど活躍の領域をどんどん拡大している。
グラフィニカは何を目指しているのか。
伊藤暢啓社長と、CGディレクターの篠原章郎、宮風慎一に話を聞いた。
[取材・構成=藤津亮太]
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——2014年の『楽園追放』、2017年の『十二大戦』、そして今年公開になる『HELLO WORLD』と、ここ数年のグラフィニカは“攻め”の姿勢だと思うのですが。
伊藤:弊社は今年の春で設立10年です。
成立当初から約5倍以上の規模になり、この10年でクリエイターも育ったことで、社内に自分たちが中心となってものづくりをしたいという気持ちが盛り上がってきたということはいえます。
その中で、いろんな作品にチャレンジするチャンスが生まれてきた結果だと思います。
——『楽園追放』は、東映アニメーション発の企画だったわけですが、それをどうして引き受けようと思われたのでしょうか?
伊藤:『楽園追放』のお話をいただいたのは、札幌にスタジオを設けたり、新しい人材を集める活動をしていた時期でした。
その時点で我々はやれるだろうという自信もありましたし、若く新しいクリエイターを育成していくためにも、「これはやるべき作品だ」と判断しました。
確かにハードルの高い部分もありましたが、水島精二監督を中心に、スタッフが一致協力して制作したおかげで評価をいただける作品として出来上がりました。
——一方で『十二大戦』は元請けですが、3DCGではなく手描き中心のTVアニメでした。それまでのグラフィニカの仕事とは全く違う作品です。
伊藤:実はTVシリーズも以前からチャレンジしたいと思っていたんです。
そこにエイベックスさんから声をかけていただいたので、『十二大戦』が始まりました。確かに3DCGは弊社の大きな柱です。
でも、フルCGにこだわらず、与えられた条件の中でベストな作品にするにはどうしたらよいかを考えた時に、作画を中心にしたほうがよいという結論になりました。
実は弊社にはアナログやデジタルの作画スタッフもいますから、そこはそれほど問題ではなかったのです。
一方でアクションシーンは3DCGのディレクターが腕を振るってくれました。
これからはより一層、3Dクリエイターと作画のクリエイター、両方のクリエイターが作品のテイストや条件に合わせて、ベストな体制を組んでいけるようなスタジオになっていきたいです。
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——今後は元請けのスタジオに舵をきっていくのでしょうか?
伊藤:いえ、そうは考えておりません。通常は会社の成長に合わせて下請けから元請けへと転換するスタジオが多いですが、グラフィニカは、デジタルプロダクションとしての受託の仕事は辞めないというスタンスです。
受託の仕事を大事に継続しながら、自分たちが主役になって生み出す作品も徐々に増やしていくというつもりです。
——それはなぜでしょうか?
伊藤:弊社はメモリーテック・ホールディングスグループの一員です。このグループは映像制作と光ディスクの製造に非常に力を入れているグループで、グループ内には、アニメに強いポストプロダクションのキューテック、音響制作のポニーキャニオンエンタープライズ、編集を担っているREAL-Tなどの会社もあります。
こうした各企業の仕事を通じて日本のエンタメ業界に貢献していくというのが、グループ全体の考えなのです。
私自身も業界に貢献できない企業は継続しないという持論を持っていますので、今後もグラフィニカが成長していくためには、さまざまな作品に貢献することを止めるということはないです。
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——これまでの10年を振り返って、転機といえるのはどこでしょうか?
伊藤:地方展開を始めたことが転機でした。現在は札幌と京都にスタジオがあります。
これはどちらも人との出会いが大きくて、それぞれの地元でグラフィニカと一緒にやろうという方と出会えたからこその展開でした。
地方でクリエイティブな仕事をしたいと思っている人も決して少なくはないと思うので、今後も地方拠点は積極的に増やしていきたいです。それもまたアニメーション産業に貢献できる大きな点だと思います。
——グラフィニカという会社の“強み”はどこにあるとお考えですか?
伊藤:ひとつは社員教育ですね。
入社したばかりの若いクリエイターを教育して、スーピーディーに現場で力を発揮できる状態に持っていく、ということについてはこの10年間でかなりのノウハウを蓄積しました。
弊社はもともとGONZOのデジタル部に所属していた62名からスタートしているのですが、そこに若いスタッフを加えてもトータルの経験値が薄まることがなく仕事ができてきたのは、この社員教育があったからだと思います。
その点では設立当初からご協力をいただいているアニメーター・監督の板野一郎さんの存在は非常に大きいです。
板野さんは、技術的な点での存在感も大きいですが、それ以外でも、リエイターとしての視点の持ち方や働き方などについても、先輩として若手にいろいろ教えてくださるので、非常によい関係だと思います。
もうひとつは先ほど話しました、受託の仕事をやっている、という点もそうですね。
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——受託の仕事をやることは会社の強みに繋がるのですね。
伊藤:そうです。受託の仕事をするということは、いろんなスタッフ、いろいろなジャンルと出会うことになります。
自社作品だけだと制作する作品のカラーにある種の傾向が出てきたりもしますが、受託の仕事をしているとそうやって外からの刺激を受けることができます。
これがやはりクリエイターを成長させるひとつの機会になっていますね。
そういう意味では、一緒に仕事をしていただけている、業界のトップクリエイターの方々に非常に感謝しています。
——実際にファンの声を聞く機会などはありますか?
伊藤:我々は基本国内で活動しているので、やはり国内のイベントなどに出展した時がそうですね。
イベントで実際に直接声をかけていただいたこともあります。
あとはやはりSNSがありますから、「グラフィニカいいよね」とか「グラフィニカがいい仕事したからいい作品になってるよね」といっていただいているのを目にすることもあります。
今後は機会があれば海外の方ともそうやって接点を持つようにしていきたいと思いますし、グラフィニカ自体でイベントをやるようなことを考えたいです。
いずれにせよ、ファンとの接点は増やしていきたいですね。
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——2019年は元請け作品としてTVアニメ『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』と先述の『HELLO WORLD』が控えています。
伊藤:制作プロダクションのゆめ太カンパニーさんが、一昨年12月にうちのグループに入られて、そこでうちと共同制作を行うのが『Re:ステージ!』になります。
また『HELLO WORLD』は、弊社の10周年の節目となる作品になるだろうと思っています。
これは東宝さん、『ソードアート・オンライン』の伊藤(智彦)監督からチャンスをいただき、弊社のクリエイターも加わって作り上げているオリジナル企画です。
グラフィニカとしては、この作品にがまた新たなターニングポイントになるはずですので、是非楽しみにしていただければうれしいです。
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グラフィニカ10周年記念の注目作『HELLO WORLD』は2019年9月20日公開予定
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