
しかし、コスプレ撮影は人物を撮る点では従来のポートレート撮影と同じですが、ポートレート撮影が得意でもコスプレ撮影は苦手、逆も然り、という声も聞かれます。そこで、どうすれば良いコスプレ写真が撮れるのか、日頃からポートレート写真とコスプレ写真の両方を撮影し、アニメ!アニメ!でも日本と中国でコスプレイヤーの取材をする中国カメラマンの追风少年淡さんに訊きました。

■コスプレ撮影の流行の撮り方を把握しておく
報道の世界に身を置く筆者ですが、そもそもプロカメラマンであっても、SNSで拡散されたり、「いいね」を多くもらえたりするコスプレ写真を撮るのは難しいという声を聞きます。それほどまでにコスプレ撮影の撮り方は独特なのでしょうか?
「日本大学芸術学部や専門学校などで写真を勉強してきた人たちの『芸術性を意識した目線』からすると、“コスプレ写真”はズレがあるかもしれません」(追风少年淡)。
筆者も取材とプライベートでコスプレ撮影を良くするのですが、基本的には顔に影が映らないことが好まれているように窺えます。そこには、ポートレート写真で見かけるような陰影を付けた写真とは違う狙いがあるようです。
「中国も2013年くらいに丸いLEDライトを顔に近づけて、顔の傷や凹みを白飛びさせて撮るスタイルが流行りました。しかし、今では陰影を付けた写真が増えていますね。徐々に見る人の美意識が変わっています。何が言いたいかというと、どの撮影ジャンルにおいても流行があるということです」(追风少年淡)。

流行の撮り方を一つの参考にして撮ることで、全く予備知識がないよりも一歩踏み出しやすいはずです。ただし、流行はこまめに変化を見せるので、都度、SNS上の写真をチェックして空気感を掴んでおく必要もあります。
実際に、中国でも少し前まではコスプレ撮影では、ストロボを正面から大きく焚いていましたが、今の流行はストロボを側面の半分などにしか使わず、後ろの光を強くした自然な感じに変わりました。
「一般的な報道写真と違って、コスプレ写真は芸術性が求められるので正解はありません。人それぞれですから」(追风少年淡)。
■コスプレイヤーが好む写真はバストアップ?
コスプレイヤーによっては、広角レンズで撮られるのが好き、背景を思いっきりぼかして撮って欲しいなど好みは当然あります。一方でTwitterを見てみると、カメラマンが構図に拘った写真よりも、コスプレイヤーの自撮り写真のほうが拡散されているケースをよく見かけます。多くの人にとっては、構図の良し悪しよりも可愛い、あるいはカッコいい顔のアップが好まれるのでしょうか。

大雑把に女の子を可愛く、男の子をカッコ良くとるのが前提だとすれば、コスプレ写真もポートレート写真も大きな違いはないのではないかと淡さんは考えています。大きく分けて、「被写体の魅力を強調する」か「物語を演出する」かで撮り方が違うそうです。
「被写体を構図のど真ん中に置いてアップで撮る(日の丸構図)のは、その魅力を強調したいからでしょうし、背景を大きく写したり、目線を切ったりするのは物語性を出したいからでしょう。枚数を連ねて物語を表現する場合もあります。単なる良し悪しの問題ではありません」(追风少年淡)。

現在は日本だけでなく中国でも「被写体の魅力を強調する」撮り方が主流のように見受けられます。例えば中国だと淡さんがコスプレ撮影を始めた頃は原作のシーンを再現する写真を求める人が多かったそうですが、今はだいぶ減ったと感じているそうです。
■今は似たようなポーズでの撮影が増えている?
「今は中国に限らず日本でも、どのキャラクターのコスプレをしていても、女性ならば可愛いポーズ、胸とお尻のラインを強調したポーズ、脚が長く見えるポーズが多くなりましたね」(追风少年淡)。

比べると、カメラマンが構図や天候にこだわった良い写真は、SNS上で相応の評価がもらえているとは言い難いのかもしれません。トレンドのスタイルが高評価を得やすいので、多くの人が同じスタイルを追いかけている側面もあります。