「コスプレが中国オタクイベントの中心であり原点」識者が語る、中国オタク事情のリアルとは | アニメ!アニメ!

「コスプレが中国オタクイベントの中心であり原点」識者が語る、中国オタク事情のリアルとは

独自のコスプレ文化発展を遂げた中国のコスプレ事情について、中国オタク文化事情に精通した百元籠羊氏にインタビュー。

インタビュー
画像提供:茶叶小果@chayexiaoguo
  • 画像提供:茶叶小果@chayexiaoguo
  • 社団名:GDC モデル:烈 撮影:寒黙
  • 社団名:GDC モデル:烈 撮影:寒黙
  • 社団名:GDC モデル:典当 撮影:寒黙
  • 社団名:GDC モデル:冥音 撮影:寒黙
  • 社団名:CVC モデル:嫣雪 撮影:寒黙
  • 「コスプレが中国オタクイベントの中心であり原点」識者が語る、中国オタク事情のリアルとは
  • >百元籠羊さん
近年では日本のコミックマーケットなどのコスプレイベントにも、中国の人気コスプレイヤーが多く参加し、クオリティーの高さが度々ネットで話題になります。
また、日本の愛知県で開催されたコスプレのパフォーマンス大会「世界コスプレサミット2017」で中国代表が優勝するなど、中国コスプレの勢いを感じることが少なくありません。元来、オタクイベントと強く結びついているコスプレですが、中国では同人誌や同人ゲームではなく、コスプレこそがオタクイベントの中心だと言われています。

独自のコスプレ文化発展を遂げた中国のコスプレ事情について、中国でオタク文化が形成され始めた1993年頃から2006年まで中国に滞在し、長年中国のオタク文化を見てきて『オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力』を出版、ブログ「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」で中国オタク事情を発信している百元籠羊(ひゃくげん・かごひつじ)さんにお聞きしました。
[取材・構成=乃木章]

>百元籠羊さん
百元籠羊さん


■中国のオタクイベントはコスプレを中心に発展した


――中国ではオタクイベントにコスプレが欠かせないというのは本当ですか?

百元
コスプレが中国のオタクイベントの中心であり原点です。これは実際に僕が中国でオタクイベントが始まった最初の頃から見てきましたから断言できます。

中国ではコスプレが日本よりもはるかに一般向けの存在になっているんですよ。中国のイベントで欠かせないのは何か? 同人誌か、同人グッズか、それとも何かのステージか、違います! コスプレショーです!

オタクイベントが開催されるようになった当初、オタクの目当てはコスプレショーでした。現在は同人誌を買いに行ったり、グッズを買いに行ったり、あるいは商業的なイベントと合わさったゲーム関連を見に行ったりする人も増えましたが、それでもやっぱりコスプレイヤーを見るというのは重要な楽しみになっています。

画像提供:佳霖Canon  2017年のWCS中国大会決勝の様子(コスプレショーは非営利です)
画像提供:佳霖Canon  2017年のWCS中国大会決勝の様子(コスプレショーは非営利です)
画像提供:佳霖Canon 2017年のWCS中国大会決勝の様子(コスプレショーは非営利です)

――なぜ、コスプレが中心になったのでしょうか?

百元
コスプレという言葉は日本から来ていますが、中国のコスプレは独自に発展したもので、日本の影響を受けていないわけではないですが文化が違います。
12~13年程前の中国でオタク層が形成されていく初期の頃まで遡ります。インターネットのオタクコミュニティがようやく普及した頃でしたので、きちんと中国語化された日本のオタク事情もありませんでした。

日本のオタクは「こんなことしているらしいぞ」と言うことで参考にしたのは、『げんしけん』や『こみっくパーティー』だったんですね(笑)。ただ、さすがに「この通りではないよな?」と戸惑う声も上がっていましたが。
そういった時代でしたから、「オタクとはどういう活動をしたら良いのか?」が現地の問題としてまずあったんです。

オタクが集まる場所もないし、そもそも絵を上手く描ける人間もいない、同人誌を作っても買ってくれる人間がいなかった。
当時は海賊版全盛期でしたし、コンテンツにお金を払うという習慣がまだ形成されていなかったのに加え、比較対象が日本の一線級の同人コンテンツだったので、分が悪いどころじゃなかったんですよね。今でこそ絵が上手い人はたくさんいますけど、それは交流のプラットフォームと発表のプラットフォームができてからなので。

――同人誌や同人ゲームの作り方が分からなかったのは、環境的に厳しいですね。

百元
同人誌を作るにしても「同人誌に見えるようなあれはどうやって作れば良いんだ?」から探っていかなければいけなかった。
その後、日本のコミックマーケットに出展する人も出て来ましたが、日本の印刷所に投げるにしてもコストがかかるし、入稿の勝手が分からない、日本に持ち込むのも大変。上手くいっても日本の製本までのやり方をそのまま中国に持ち込むことができないので、やるとしたら一から環境を作ることから始めないといけないのもあって、なかなか同人誌や同人ゲームを作るのが難しかったんですね。

そこで、「簡単に誰でも参加できるオタクの創作活動」としてコスプレが盛り上がったんですよ。コスプレを中心に中国でオタクイベントが形成され、それを追っかけるように他の同人創作活動も動くようになった。それが中国の初期のオタクイベントの流れです。

■中国のコスプレはオタク向けでありがらも一般向け


――日本ではオタクイベントでコスプレショーはほとんど見かけません。当初からコスプレショーが人気を集めたのですか?

百元
どうしてそうなったかは僕も追いかけきれなかったのですが、オタクイベントの黎明期、中国で行われていたコスプレは、日本のように着て楽しんで写真を撮るというものではありませんでした。
舞台上でコスプレをしてキャラクターに成りきって劇をやる非営利の「創作劇」がメインの形だったんです。コスプレショーはやる人達はもちろん、コスプレをしなくても見て楽しめる、さらに言えば上手い絵が描けなくてもいい、面白いテキストが書けなくてもいい、日本の同人誌のようなものが作れなくてもいいということで、誰でも参加できるかつオタク的な創作活動として盛り上がっていったんですね。

コスプレショーの内容としては、クロスオーバー的な作品を2次創作行ったり、ひとつの作品内ではあるけど多くのコスプレイヤーが活躍できるように同一キャラを複数人が演じたり、原作の名場面に演出を加えて再現してみたりとかでしたね。

――当時はどんな作品を舞台で演じていましたか?

百元
最初の頃は『ザ・キング・オブ・ファイターズ』などが流行っていたそうで、いかに草薙京や八神庵の必殺技を演じるかに注力していたそうです。さすがに炎を使う時などは怒られたり問題にならないようにしたりと皆さん気をつけていたそうですが。

『鋼の錬金術師』が流行っていた時は、エドワード・エルリックやロイ・マスタング大佐が多かったですし、『NARUTO』『BLEACH 』 の最盛期は、カカシ先生が一杯出て来たり、護廷十三隊の隊長が順番に出て来たり、ひとつの劇を大人数で演じていましたね。『Fate/stay night』に代表されるfateシリーズが流行っていた時は、サーヴァント召喚のシーンを頑張って再現していました。

オタク向けのコスプレであると同時に、極端な言い方をすれば、着ぐるみショーのような客寄せのショーコンテンツとしても確立されるようになり、「動漫」(アニメと漫画を合わせたカテゴリー)をテーマにした商業イベントとも結びつくことでイベントが発展するうえでの核になりました。
そういった背景から中国のコスプレはオタク向けであると同時に一般向けであるんですね。

■自然と美男美女枠が確立されてしまう


――コスプレショーがオタク界隈のコンテンツとして発展したことによって、コスプレ=美男美女と言われるようになってしまた?

百元
中国ではコスプレイヤーの地位が非常に高く、花形的な見方をされています。同人誌を作れなくても気軽に参加できる扱いではありますが、見て楽しまれる、評価されるということがありますから、原作のイメージからあまりに乖離(かいり)してしまうと不評なんですよ。
「楽しんでいるから良いじゃん」というわけにはいかなくて、非営利であっても舞台に出ている以上、厳しいダメ出しがありますし、ヒロイン役に対しても可愛くないと評価されません。

例えば、『三國無双』や『戦国BASARA』系のコスプレをするとなれば、男性はカッコよくないと、女性は可愛いくないと出られない空気が一時期かなり濃かったです。
最近は、日本経由で色々と情報が入ったり、コスプレの裾野が広がったりしたことで、ネタでやる面白的なコスプレも出て来るようになりました。それでも、日本のコミックマーケットで見られるようなネタ系のコスプレはまだ少ないですね。

そういった背景があるので、美男美女系のコスプレイヤーというのは現在でも重宝されますね。人気にもなりますし、需要もあると言うことになるのではないでしょうか。

社団名:GDC モデル:烈 撮影:寒黙
社団名:GDC モデル:典当 撮影:寒黙

社団名:GDC モデル:烈 撮影:寒黙
社団名:CVC モデル:嫣雪 撮影:寒黙(別途、中国コスプレイベントに頻繁に参加する中国カメラマンの寒黙(ハンモ)さんに聞いたところ、近年は創作劇派(舞台党)と写真撮影派(平面党)に別れ、割合は1:4で平面党が多いとのこと。しかし、本気でコスプレをやる人は舞台党を選ぶようで、創作劇で見たショーの中で過去一番出演者が多かったグループは108人だったそうです。また、「China joy」「舞台党盛会」は舞台党、「上海COMIC UP」「蛍火虫」は平面党といったように、イベントによっても参加するコスプレイヤーが変わるようです)


――創作劇に参加するのは、大学のコスプレサークルとかも多いんでしょうか?

最近の事情は分からないのですが、僕がいた当時は戯劇学院系や服飾学院系といったセミプロの方が普通に参加するようになっていきました。当然ながらパフォーマンスにしろ、衣装にしろ、レベルが高かったです。
若い世代が気軽に注目されて自分をアピールできる場所という意味合いもかなり強いので、全体的に人材が集中しているという傾向はありました。

賞金付きコンテストもありましたから、日本みたいに個人が楽しむためというよりも、サークルを作って気合いを入れて競い合っていました。コスプレを出さないとイベントとしては片手落ち感な所はあります。
近年は実況中継サイトが人気を集めているので、コスプレ一強ではなくなってきているようではありますが。

■非常に競争が激しく、中国のオタクイベントに欠かせないコスプレ


――芸能界の登竜門的な位置づけでもありますか?

百元
芸能界を上るルートは僕にも想像がつかないので断言できませんが、一般の人がこれから始めるのならコスプレイヤーをやるほうが、普通に役者をやるよりも注目されやすいのはあるかもしれませんね。

実際にビジネス的な面でコスプレを本気でやっている方が多いんですよ。競争によってクオリティーもどんどんレベルが高くなる。ライバルに勝つために撮影環境や衣装製作など専門の人が付けたりすることもあります。
目の前にパイが転がっているので、それを自分のものにするために、本当に気合いを入れて頑張っていらっしゃる。さらに言えば観客的なコスプレを楽しむオタク層も普通に抵抗なく存在するので、やる側も見る側も独自のルートを作っていますね。

画像提供:茶叶小果@chayexiaoguo。日本に留学中の茶叶小果さんは将来の夢はCGイラストレーターまたはカメラマンとのこと。プロを目指していなくてもクオリティーの高いコスプレを見せる人が多いことから、中国のコスプレイヤーの層の厚さがうかがえます


――近年は日本のコスプレイベントにも中国のコスプレイヤーやカメラマンが多く参加するようになりました。

百元
コスプレ関係は間違いなく中国の特色ですし、強みです。日本が仮に中国のオタク向けにイベントをやりたいとするなら、日本でコスプレコンテストを開催して中国のコスプレイヤーに出てもらうなど、コスプレをもっと前に出すべきだと僕は考えていますね。

中国向けのアピールとしても、コンテンツだとやはり個々の好みはありますけど、コスプレというジャンルなら中国に幅広く伝わりますから。そちらのほうから攻めるのも面白かもしれませんね。
ただ、あまりやり過ぎると中国のプロやセミプロの方も参戦してくるので、単純にコスプレをして楽しむ方とのバランスを取れる環境にする必要があるかもしれませんが。

コスプレがいわゆる仮装(マスカレード)の方向ではなく、ショーとして、あるいはコンテンツとして発展したのが中国のコスプレなので、日本や他の国のコスプレとは明らかに違いますし、同じ扱いが出来るところもあれば、別物として扱わなければいけないところもある存在です。


中国のコスプレ市場は、コスプレイヤーやカメラマン、衣装デザイナーにとって、自分の容姿や技術を評価してもらう場所です。日本のコスプレイベントで見かける中国のコスプレイヤーのクオリティーの高さは、激戦区で競い合う中国のコスプレイヤーのほんの一端なのかもしれません。

百元籠羊

十数年の中国生活をとりあえず終えて帰国。中国に広まった日本のオタク文化や、中国のオタクな若者達に関する情報をブログから発信。また、様々なニュースサイトなどに寄稿をしています。

「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む(http://blog.livedoor.jp/kashikou/

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サムネイル画像提供:茶叶小果@chayexiaoguo

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