世界の長編アニメーションの新しい景色を語るための言葉 「GEORAMA 2017-2018」/高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第11回
アニメ批評家・高瀬司の月一連載です。様々なアニメを取り上げて、バッサバッサ論評します。今回は長編インディペンデント・アニメーションのフェスティバル「GEORAMA 2017-2018」について。
連載
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サブカルチャー批評ZINE『Merca』主宰。ほか『ユリイカ』(青土社)等での批評や、各種アニメ・マンガ・イラスト媒体でインタビューやライティング。
直近のイベントに、1月17日(水)イメージフォーラムでの『サリーを救え!』19時半~の上映後のトークショー(石岡良治×高瀬司×土居伸彰)、2月3日(土)大妻女子大学での講演会(石岡良治+高瀬司、要予約:https://peatix.com/event/335636)など。
Merca公式ブログ:http://animerca.blog117.fc2.com/
■ 世界の長編アニメーションの新しい景色を語るための言葉 「GEORAMA 2017-2018」
アニメーション研究・評論の土居伸彰は『個人的なハーモニー――ノルシュテインと現代アニメーション論』(フィルムアート社、2016年)で、冒頭から繰り返し「アート・アニメーション」という言葉の乱暴さへの警鐘を鳴らす。
つまり「「商業/芸術」をはじめとした既存の二分法の有効性を疑うことによって、これまで断絶したものとして考えられてきたアニメーション作品のあいだに、つながりを発見する」(43頁)ため、「これらの二分法は、アニメーションをめぐってぼんやりと作り上げられたイメージがあり、一方でそれにあてはまらないものがあるという認識をただ単に示しているにすぎない」(26頁)と看破したうえで、「本書が行うのは、「商業/芸術(前衛・実験)」「集団/個人」という二項対立を強化し、後者に肩入れしようとするのではないということだ。むしろ、それを無効化することなのである」(43頁)と語る。
しかし、二分法を「越境」するという語りには、常にアポリアがつきまとうだろう。分断があるということを前提とするような、論理の階層を許してしまうからだ。そのためかどうかは定かではないが、2018年1月13日(土)から新たな展開も見せる、土居が代表を務めるNEWDEAR主催のアニメーション・フェスティバル「GEORAMA」が掲げるのは、「アニメーション概念の拡張と逸脱」というフレーズである。
「GEORAMA」は、2014年から不定期で開催されている、世界の長編アニメーションを中心としたアニメーション・フェスティバルだ。これまでは海外の映画祭に足しげく通う者でなければ触れることのできなかったような世界のアニメーション作品を、日本にいながら観ることのできる貴重な機会であるのはもちろんのこと、音楽ライブなどを絡めるといった特殊な上映形態にも積極的で、2014年には閉館間際の吉祥寺バウスシアターにて、アニメーション作家のひらのりょうとミュージシャンの七尾旅人のコラボが、2016年には渋谷WWWと恵比寿LIQUIDROOMにて2日間にわたり、フランク・ザッパのMVなどで知られる伝説的なアニメーション作家ブルース・ビッグフォードを招き、彼の作品にあわせ菊地成孔、小山田圭吾、EYヨらが劇伴ライブを繰り広げるという集い(いまであれば『DEVILMAN crybaby』第1話を思い起こす者も少なくないであろう)が催されてきた。