世界の長編アニメーションの新しい景色を語るための言葉 「GEORAMA 2017-2018」/高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第11回 2ページ目 | アニメ!アニメ!

世界の長編アニメーションの新しい景色を語るための言葉 「GEORAMA 2017-2018」/高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第11回

アニメ批評家・高瀬司の月一連載です。様々なアニメを取り上げて、バッサバッサ論評します。今回は長編インディペンデント・アニメーションのフェスティバル「GEORAMA 2017-2018」について。

連載 高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言
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そんな「GEORAMA」は現在、第3回目となる「GEORAMA 2017-2018」の真っ最中である。
皮切りとなったのは、2017年12月後半に全国を巡業した「変態アニメーションナイト ザ・ツアー」だ。“変態”アニメーションナイトとは、アニメーションという表現形態が得意とする「メタモルフォーゼ(変態)」を意味するのだという建前を用意したうえで、人類がいまだ肯定的に評価する術を持てずにいる、文字通り“変態”なアニメーション作品群をよりすぐって上映する試みのこと。上映が開始されるやいなや「なにこれ……さっさと終わんないかしら……」と必ずや思うにもかかわらず、――ちょうどしばしば耳にする、「『個人的なハーモニー』を著した「アート・アニメーション」の専門家である土居伸彰さん」という紹介を聞いたときのような、ナンセンスなおもしろ味に似た――そのセンスもユーモアもないだろう、ただただしつこくまとわりついてくる時間のなかを生き続けるうちに、やおら自分のなかで何かが整いはじめるという体験が売りの上映イベントとまとめられる。

そしていま、変態ツアーに続く第2弾「ワールド・アニメーション 長編アニメーションの新しい景色」が、東京・渋谷はシアター・イメージフォーラムにて幕を開けた。2018年1月13日(土)~1月26日(金)の14日間に長編19本と短編9本の合計28作品、全21プログラムを上映。このわれわれを試すかのようなプログラムは、いったいどのようなつもりで生まれたものなのか。

われわれが詰問するなかで、主催の土居は「いま世界のアニメーション・シーンでは、商業VSアートという二分法が無効化されたあとの中間領域にある“インディペンデント作品”が大きな盛り上がりを見せています。なかでも、アニメーションと言えば短編作品が中心的であった20世紀に対し、21世紀以降は長編アニメーションに個性的な作品が多く見られるようになっているんです」と前提となる状況を説明したうえで、この「長編アニメーションの新しい景色」のことを「世界中の“宮崎駿”と“新海誠”を集めたフェスティバル」と形容しはじめた。
さしあたり、“宮崎駿”とは各国を代表する巨匠然とした作家のこと、“新海誠”とは独自の文脈から出発しながら今後メインストリームになりうる作家のことと理解してよいだろう。今回監督デビュー作『豚の王』(2011年)が上映される、韓国のヨン・サンホがわかりやすい。小規模アニメーション作品から出発した彼が、2016年に実写映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』で韓国映画界で最大のヒットを飛ばしたことを、『君の名は。』現象と重ね合わせて見ていた人は少なくないはずだ。
《高瀬司》
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