梅雨にふさわしい、「雨」が出てくる傑作アニメ5選 ~「言の葉の庭」から「ハルヒ」まで~ | アニメ!アニメ!

梅雨にふさわしい、「雨」が出てくる傑作アニメ5選 ~「言の葉の庭」から「ハルヒ」まで~

梅雨の季節になって、雨が降る日も多くなってきました。しかしアニメでは、あまり雨が降ったりしません。身も蓋もないことを言ってしまうと「作画が大変だから」かなと類推します

コラム・レビュー
注目記事
梅雨の季節になって、雨が降る日も多くなってきました。しかしアニメでは、あまり雨が降ったりしません。身も蓋もないことを言ってしまうと「作画が大変だから」かなと類推します。ゆえに劇中で雨が降るからには、何かしらの意図があると見ていいでしょう。今回は「雨」が効果的に使われているアニメを紹介。梅雨のジメッとした季節、外出しないで、雨が登場するこの5作品を見ながら過ごすのも楽しいではないでしょうか。

■『それでも世界は美しい』

雨を降らせる能力を持つニケ・ルメルシエは、「晴れの大国」の少年王リヴィウス一世(リビ)のもとに政略結婚で嫁ぐことになります。ワガママなリビと、おてんばのニケ。二人はケンカを繰り返しながらも、お互いの信頼を深めていきます。
本作は「雨」そのものが重要なキーワードです。2話でリビが奸計におちいって、火事で王宮の屋上に追いつめられた時。国を出ようとしていたニケは、リビのピンチを知って駆け出します。

「雲よ、ここへおいで。雫よ、ここにおりて。炎をいなし、届けておくれ。飢える王に。それでも世界は美しい」

鐘つき堂の頂上に立ったニケが「アメフラシの歌」を歌います。風に髪をなびかせながら、両手をいっぱいに広げて、美しい歌声を響かせるニケ。サビを高らかに歌い上げる瞬間、景色がブワッと広がりを見せます。ニケの周囲に気流が生まれて、王都全体を覆う巨大な雲となり、雨を降らせて火事を鎮火するのです。
「アメフラシの歌~beautiful rain~」の透明感のある歌声。雲や雨といった気象現象が持つ美しさ。献身的なニケの姿が重なって、心にしみる名シーンになっています。

5話では、結婚に必要な指輪の代わりに雨雲が使われることになります。「アメフラシの歌」で光の屈折を利用した現象が起こり、太陽に輪がかかります。ニケの頭上に燦然と輝く太陽の輪。その美麗さにため息が出そう。歌声も、映像も、描かれる人の心も、すべての世界が美しい。

■『言の葉の庭』

靴職人を目指す高校1年生の秋月孝雄(タカオ)。タカオは学校をサボって、日本庭園で靴のスケッチを描いていました。梅雨のある日、日本庭園には先客の女性ユキノ(雪野百香里)が座ってビールを飲んでいます。二人は雨の日だけ日本庭園で逢瀬を重ねて、次第に惹かれ合っていくのでした。

去年公開されて、興行収入240億円の超ヒットとなった『君の名は。』。新海誠監督の前作となる『言の葉の庭』は、『君の名は。』と同様に、自然の美しさを限界を超えて描き出しています。

瑞々しさをたたえた緑葉に囲まれた日本庭園には、雨がそぼ降ります。池の水面に波紋が広がり、折り重なっていく輪。もやのかかった遠くの樹木。コンクリートに当って跳ね返る水滴。水溜まりに着水した瞬間に弾ける水の粒。雨樋(あまどい)から絶え間なく流れ落ちる水流。光が反射してキラキラと輝いている雨の世界は、現実に見える景色よりも、いっそう美麗に描かれています。

二人の逃避を描いているからか、序盤は、外界から隔てる壁のような激しい雨が降り注ぎます。やがて二人の距離が近づくとともに、雨の降り方も緩やかになっていきます。雨が語り部となって、二人の心象風景を表現しているんです。
年の離れた二人は親密になっていき、タカオはユキノのために靴を作ることにします。素足になったユキノが右足を差し出し、タカオがおっかなびっくり触れて、感触を確かめて、型を取っていく行為が官能的です。この時、手前に映し出される木々の葉に落ちた雫が、するっと葉先からしたたれるのも艶めかしい。

■『のんのんびより りぴーと』4話 「てるてるぼうずを作った」

雨ザーザーのある日。小学生一年・宮内れんげが、晴れてほしくて「てるてる坊主」を作ることになりました。紙のお皿に二つ切れ目を入れて、黒マジックで目と口を描く。白いレインコートを着ます。

「うちが、てるてる坊主なのん!」

そのまま外に出て散歩します。周囲に霧が漂う中、スコップとバケツでカン、カンと音を出しながら。だんだん、お面のマジックが溶けて黒い涙とヨダレっぽくなっています。そこに通りがかった越谷小鞠(こまり)。不気味な妖怪を目撃して、

「みゃみゃーーーっ!」と大絶叫。

逃げる小鞠。武器(スコップ)を振り回して追いかける、てるてる坊主(れんげ)。れんげの家に逃げ込もうとして扉を開くと、同じお面をつけた、れんげのお姉さん(かず姉)がお出迎え。後ろと前、妖怪に挟まれて泣き叫ぶのでした。

マジックが溶けて気味の悪いお面。スコップ=武器。不気味なBGM。霧が立ち込める不穏な景色。積み重なったひとつひとつが、めちゃくちゃビビる小鞠に集約されていて大笑い。この回での「雨」は、ギャグのお題としての小道具。鬱々な梅雨の気分も吹っ飛ばせるほど、何度繰り返し見て大笑いできます。

■『涼宮ハルヒの憂鬱』 「サムデイ イン ザ レイン」

『涼宮ハルヒの憂鬱』といえば、三年前にタイムリープしたり、閉鎖空間で巨人(神人)と戦ったり、非日常を描いた作品です。だからこそ、「何も起こらない日常」を描くのは珍しい。雨に濡れたキョンが部室に入ると、長門が一人で本を読み続けています。キョンが「ハルヒたちは?」と尋ねると、首をかしげるだけ。さきほど鶴屋先輩が同じ質問をしたときには、指を指して知らせていたのに。

長門がキョンに、ハルヒの場所を教えたくない理由は嫉妬……というには薄すぎるセンチメントのゆらぎ。もともとヒューマノイド・インターフェースである長門は、感情を持ちません。ですがSOS団で過ごすうちに、長門に自我が芽生えはじめます。この変化=エラーが、のちに劇場版『涼宮ハルヒの消失』に繋がるのです。ここは前日譚となる重要なシーンになっています。

また、ハルヒも珍しい変化を見せます。振り続ける雨にうんざりしながら、傘を持ってきてないことを嘆くキョンに、

「一本あれば十分でしょ!」

ハルヒが傘を差し出します。でも視線が横を向いているんです。顔を赤くしたり、照れている素振りをまったく見せないままっていうのが、いかにもハルヒらしくて胸キュンしてしまいます。相合傘で肩を寄せ合って、ふざけて傘をぶんどって走って距離をとるハルヒ。振り返ってあっかんべー。ハルヒが普段見せない態度や仕草が雨でたくさん見られる、印象深い回になっています。

■『この美術部には問題がある!』12話 「これからさきも」

土砂降りの下校時間。友達のかおりが傘を持ち去ってしまって、帰れなくなった宇佐美みずき。困り果ててため息をついていると、片想いしている内巻すばるとバッタリ出会います。内巻は、かおりから「みず(みずき)のことは任せたよ~」という言伝で、玄関口で待っていたんです。しかし、傘入れにはかおりの傘が残ったまま。これはかおりの策略。みずきの恋を応援するかおりの気遣いにほっこり。また、ずぶ濡れになった伊万莉まりあが、

「わたしには、ウンディーネの加護があるからーっ!」

ってノリノリの中二病で校庭を駆けって下校。雨が降っても変わらない、元気で優しいみずきの友人たち。

内巻と一緒に下校することになったみずき。ところが内巻の傘には、めいっぱい美少女イラストが描かれてます。二次元美少女命の内巻すばる、ブレてません。痛傘であっても、想い人との相合傘であることには変わりません。顔を赤らめながらみずきが隣に並ぶと、内巻も、視線をそらしながら頬を染めています。
二次元嫁にしか興味のない内巻が、初めてみずきを女の子として意識します。中学生の初々しい恋路にニヤニヤが止まらない、屈指の雨エピソードになっています。

[かーずSP( @karzusp )]
個人ニュースサイト・かーずSP管理人。得意ジャンルは萌え系であればアニメ、ライトノベル、ゲーム、漫画のいずれも嗜む雑食系オタク。
《かーずSP》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集