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【インタビュー】「イデオン」から「ダンバイン」まで、湖川友謙が語る“作画の心得”とは?

『伝説巨神イデオン』、『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』など80年代サンライズを代表する名作ロボットアニメを富野由悠季監督とともに作り上げた名アニメーター・湖川友謙。

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――基本的に紙に描かれていますが、デジタルイラストやデジタル作画などにご興味はないのでしょうか?

湖川
私は死ぬまでデジタルで絵を描きません。例外はひとつだけ。浮世絵です。あれは色を作るのが大変なんですよ。デジタルはボカシも自由自在でしょ? それはやってみたい。それ以外では使いたくないですね。俺が描いたらどうなるかわからないですけど、デジタルに頼り切ってしまう人というのは「絵を知らない」ということが要所要所で見えてきてしまう。それは絵に対して失礼じゃないかと思うんです。デジタルだけの話じゃなく、「観察眼を持つこと」とよく若い子に言ってるんだけど、“見ること”は本当に大事。俺は今でも毎日勉強してます。勉強しないと分からないことはいっぱいある。いっぱい。アニメの世界って勉強してものを理解してそれを描くというのが仕事なんですよ。勉強しないでやってるというのはアニメを馬鹿にしてる。だから「勉強しろ」って弟子にも言ってるんです。

――日々の作画だけではなく、他の時間にも勉強が必要ということですか?

湖川
例えばへたな作画をいくら描いてもうまくなりません。それに絵が上手ならいいわけじゃなくて、何よりアニメ(作品)がおもしろければいいんです。(作品が)おもしろければパースを知らなくてもいい。だけどアニメを作る時にはどうしても必要になってくるんです。私が勉強したのはそういうふうに困ったからだし、おそらくみんなもそうであるはずなのね。……本当は俺、20代の頃に人の体を解剖したかったんです。

――え!?

湖川
医学的な契約を結んでね。

――あ、献体を使用してですね。安心しました。

湖川
本当にやりたかった。自分の目で見たかった。でもそれはできなかったけどね。ただ、「みんなが勉強してるから俺は人の30倍やらなきゃダメだ」って、わからないことがあるとすぐ勉強したんですよ。だから勉強しないで描くというのはアニメの仕事を馬鹿にしてるよね。仕事が忙しくても勉強はしない。商業アニメはみんなで団結しておもしろいものを作るところだと俺は思っているので。

――アニメ制作は集団作業ですが、一方でこの画集に収録されているイラストは個人の作業として一人で手がけられています。注意しているポイントを教えていただけますか?

湖川
アニメはレイアウトという作業工程でテレビの画面かスクリーンを想像しながら(構図を)取ります。総合的な視点で見ていくことになります。絵というのは構図が一番大事。一番です。絵が上手でも構図がヒドいととんでもないものになる。なので構図をすごく大事にしています。

――まさに印象的な構図を取られていますが、湖川さんが考えられる構図の発想のルーツというのはどういうものから来ているのでしょうか。

湖川
ないです。私は人のマネを嫌ってますから。中には横にうまい人の絵を置かないと描けないっていう人もいますけど、私はダメ。横に何かがあると何も出てこない。もちろん「オリジナル」というものは簡単にできませんよ? 人間も動物も草木も、いろんなものの中から生まれてくるわけです。人間もいろんなものを観察して、感じて、接して咀嚼して自分のものとして出してますから、全部何かから教わったものなんです。だからこの(画集の)中にもそういう(何かから教わった)ものは沢山あるでしょうね。

――中にはラフや構図の指定などもあったのではないでしょうか。そういう場合はどう描くのでしょう。

湖川
指定があると(気分が)のりませんね。描きますけど(笑)。


――各作品の違いはもちろんあるのですが、中でも『イデオン』や『ダンバイン』と、『ザブングル』では絵の雰囲気が大きく違うように見えます。作品に引っ張られているといいましょうか。

湖川
作品に引っ張られているわけがないですよ(笑)。全部そうなんだけど、お話、ストーリー展開とかはお富さん(富野由悠季)が全部やる。そのストーリーとは別に、キャラクターの世界観は別の動きをしてるんです。これはお富さんも言ってたけど、キャラクターが勝手に成長していくので、そのキャラクターに合わせて世界観を作っていかなきゃいけない。俺の手も離れて勝手に動いちゃうんだよ。役者さんが役を演じるに従ってどんどん変わっていく、というのに似てるかも知れない。キャラクターも生き物のようになって勝手に行動してしまう。
それで危ないと思ったのは『ザブングル』ですね。あんなキャラを作っておいて第1話の絵コンテがものすごく真面目だった。俺は第1話の作監までやってから劇場版『THE IDEON』に行ってしまって、その後第27話で戻ってきたら1話のムードのままなんだよね。「何だこれ違う! 俺が思ってる世界じゃない!」って思って。それで第27話から自分の思ってるギャグをやろうとしたんです。

――ギャグですか。

湖川
ドタバタじゃないギャグね。おもしろいポーズとかじゃなくて真っ当な動きと真っ当な動きの間をどう描くのか。200メートルくらいの距離を6コマでぶわーっと行ったり。それでも成立するからおもしろいんですよ。でもね、ドタバタにみんなが引っ張られて行ったんですよ。ドタバタは難しいのに、難しい方に行っちゃった。こういうギャグは『トムとジェリー』が一番すごい。あれをやれないこともないんだけど、マネじゃなくてね、日本人が思うシャレ、ギャグはなに? っていうのをやりたかった。私はそういうギャグにずっとこだわってますね。
《細川洋平》
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