[取材・構成:川俣綾加]
『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』
http://goemon-ishikawa.com/
2017年2月4日(土)新宿バルト9ほか〈4週間限定〉全国公開
■見どころは50人斬りの剣戟シーン
──前作『峰不二子という女』ではキャラクターデザイン・作画監督を務められていました。「LUPIN THE IIIRD」シリーズは原作のモンキーパンチ先生の線に寄せて描いていると思いますが、『REDLINE』『PARTY7』の頃のような躍動感も感じます。
小池健監督(以下、小池)
『REDLINE』まではアメコミを意識して、陰影をつけるために影を黒ベタにするような画面作りをしていたんです。作家性を出そうと意気込んでました。でも「LUPIN THE IIIRD」シリーズでは「誰が見てもルパン三世だと思ってもらえるように」という気持ちで作っています。作り方の意識は異なりますね。
──クリエイティブ・アドバイザーの石井克人さんはどのような役割なのでしょうか。
小池
イメージアドバイザーやコンセプトアドバイザーとでも言えばいいのでしょうか……五ェ門の敵たるホークのキャラクターイメージ、五ェ門をどんな風に見せるかアドバイスをいただきました。泣いたり戸惑ったり、五ェ門の感情の起伏を見せる作品にする構想、ホークが五ェ門の剣を素手で掴む描写や、ズタボロに打ちのめされてどん底から這い上がるような表現を随所に入れたのも、石井さんのアイデアです。
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──作品の根幹に関わる部分からタッグを組んでいるんですね。描かれている五ェ門の這い上がり方が五ェ門らしいというか。前作で、次元はルパンとのバディ感で乗り越えていったものが、五ェ門は全然違っていて。
小池
関係性としては五ェ門はルパンたちの敵なんですよ。一緒に仕事をしたこともなくて、どちらかというとルパンの首を狙ってる。だからルパンは次元の時のように五ェ門を手助けするのではなく見守るほか選択肢は無かった。
──原作とTVシリーズではキャラクターのニュアンスが微妙に異なります。どちらに寄せようと?
小池
原作とファーストルパンで五ェ門が登場するエピソードは、シチュエーションもキャラクター設定もわりと近いんですよ。まだちょっと生意気でおごっている感じが出ていて、今作もそこに近づけています。ファーストルパンの5話のあとの五ェ門をイメージして作りました。
──「LUPIN THE IIIRD」シリーズは大人向けのルパンということでお話だけでなく、表現的にもそれが随所に現れていました。特に傷の描写は筋肉、骨まで描かれていて。
小池
命のやりとりをしている描写を入れないと緊張感が出ないと思って、痛そうな描写はとことん痛そうにしています(笑)。剣の鋭さ、五ェ門の剣速による切れ味を表現するうえで切断面の描写は外せなかったですね。
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