「君の名は。」新海誠監督インタビュー  40代の仕事としてスタートラインにある映画になった 2ページ目 | アニメ!アニメ!

「君の名は。」新海誠監督インタビュー  40代の仕事としてスタートラインにある映画になった

新海誠監督の最新作『君の名は。』が8月26日に全国で公開となる。新海監督はどのような想いで本作を作ったのか。映画公開に向けた意気込みや制作の裏側を聞いてみた。

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■どこかしらに、フェティッシュな要素を

──作画やキャラクターデザインのお話もお聞きしたいです。制作にあたり作画監督の安藤雅司さん、キャラクターデザインの田中将賀さんを招いた理由を教えてください。

新海
田中さんはZ会のCMを作った時にご一緒したのが初めてでした。もともと田中さんの絵が好きだったこともありZ会のCMでご一緒して、自分の作品がキャラクターアニメーションになり得るという強い手応えが初めてあったんです。

──ちなみに、それまではご自身ではどう感じていましたか?

新海
それまでは情景の中に観客と入れ替え可能な人物がいるという雰囲気がありましたね。田中さんに参加していただくことでキャラクターが立つんです。長編の際もぜひお願いしたいと伝えていました。

──安藤さんについてはいかがでしょう。

新海
安藤さんは純粋に憧れていた人。誰に作画監督をお願いするかという話になった時、実現可能かは別として安藤さんのお名前を最初に挙げました。コミックス・ウェーブ・フィルムにもスタジオジブリ出身のベテラン動画マンがいて、その方が「安藤君なら連絡してあげるよ」と言ってくださって。

──「君」なんですね(笑)

新海
僕も「あ、“君”なんだ」と思いました(笑)。安藤さんに脚本をお渡しして「ご一緒できませんか」とお願いし、数ヶ月後にお返事をいただきました。最終的には、田中さんのキャラクターを動かすことに興味をもってもらえたのだと思います。

──宮水神社での神楽のシーンは、三葉と四葉の動きに重みがあってとても印象的でした。

新海
いいシーンにしていただけたと思います。あのシーンは手法としてはロトスコープに近いんですよね。歌舞伎役者の中村壱太郎さんに巫女舞を作っていただき、中村さんが舞っているところを撮影して作画のベースにしました。彗星にまつわる出来事をしぐさで示していて、伝承を反映しているのですが劇中の現代の人々はそれをもう知らない。中村さんのおかげで特別にリッチなシーンになっています。

──その巫女舞のあとの口噛み酒のところはとてもドキッとしましたね。ちょっとフェティッシュな場面で。

新海
そうなんですよ、密かなフェチ要素です。自分がそういうのを表現したかったのもあって。『言の葉の庭』で足に触れるシーンをやったのも、ドキドキするものを描いてみたいっていうフェチ要素の提案でもありました。今回もそれですね、ひとつくらい好みを入れようと(笑)。むき出しじゃなくてアカデミックなものや物語的な部分でデコレートして……(笑)、みなさんにもドキッとしてもらえないかなと思って入れました。


──瀧を演じる神木隆之介さんの魅力を、新海監督はどう感じていますか?

新海
神木さんは本当に耳が良くて音や声に対する感受性が強い方です。僕の過去作を見て、セリフのリズムや「なぜここで言葉を区切っているのか」などの質問をたくさんしてくれました。物語を楽しんでいるというよりは声の表現のディテールに興味を引かれているように感じます。それが神木さんの魅力になっていると思うんですよ。アニメが大好きで、アニメに登場する女性キャラクターの声の表現もよく聞いているので、それが三葉を演じる上で大きなバックボーンになっている。中性的な魅力や演技力の確かさを考えると、最終的には神木さん以外には行き着かなかったです。

──三葉役の上白石萌音さんについては「何百人とオーディションをしても絶対に彼女に行き着いたと思う」とおっしゃっていましたね。

新海
三葉の輪郭を彼女が教えてくれたんです。脚本で三葉を書いている段階ではまだ少し迷いがあって、本当はどういう女の子だろう、「来世は東京のイケメン男子にしてくださーい」と叫ぶシーンがあるけど本当に叫ぶかな? と考えていて。叫ばせて次のシーンに移行する、どちらかというと物語の都合にキャラクターの芝居をひきずっていたのですが、上白石さんにお会いして「この子ならそう叫ぶかもしれない」と彼女自身で三葉を示してくれました。

──最後にメッセージをお願いします。

新海
間違いなく、楽しい映画になったという自信があります。もちろん好き嫌いは人によってあるかもしれません。でもきっとどこかに楽しめる要素を見つけられる作品だと思います。そういう意味では見てもらって損のない作品にできた上、時代の感覚にうまくはまったとも自負しています。安藤さんと田中さんのペアも少し前なら実現不可能だったかもしれない。今だからこそ集まったスタッフで作りました。目撃するような感覚でぜひ見ていただけると嬉しいです。

──今日はありがとうございました。

《川俣綾加》
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