日常が侵食されていく恐怖を描いた「屍鬼」【夏に見たいアニメ、この一本】 | アニメ!アニメ!

日常が侵食されていく恐怖を描いた「屍鬼」【夏に見たいアニメ、この一本】

夏の特別企画アニメ!アニメ!編集部とライターが選ぶ「夏に一気に見てほしいアニメ」。今回は川俣綾加さんから『屍鬼』です。

レビュー
子どもの頃、夏はいつも留守番をしながら『怪奇特集!!あなたの知らない世界』や心霊写真特集を熱心に見ていた。今はそういったTV番組は少なくなり、ちょっと寂しい気持ちもある。

2010年、まだフリーライターではなかった頃にそんな気持ちを思い起こしつつ非常に楽しんだのが、ノイタミナで放送されていたTVアニメ『屍鬼』。人口約1300人、外部に出られるのは国道1本のみの隔絶された小さな集落、外場村。猛暑の夏、山入区で発見された3体の死体に誰も疑念をもたなかった。続いて住民はまたひとり、またひとりと不審な死を遂げていく。何も知らない住民たちの日常が、じわりじわりと侵食されていく恐怖が描かれる。

都会から引っ越してきた高校生 結城夏野や医者の尾崎敏夫ら少数の住民は、次々と起きる変死は疫病でないと気づく。だがそれによって屍鬼にターゲットにされてしまう。

人間=餌、屍=狩人の構図は、終盤で逆転する。それまで「じわり」のテンポで進んでいた物語が、途端に激流に変化するのに背筋がぞくり。リアルタイムで視聴していた時は、次週が気になってしょうがなかった。わくわくする、この先どうなるか気になる、でも知ってしまうのが怖い。心霊番組を見ていた子どもの頃の気持ちを思い出させてくれた。

放送から6年経った今、改めて見ると画面の暗さのほうが目に入る。

『屍鬼』はどのシーンを切り取っても始終、闇と影が中心だ。屍鬼の瞳は黒く塗りつぶされ、ハンティングや怒りをあらわにした瞬間に赤く光る。藤崎竜が手掛けた独特のキャラクターデザインがそれを単調な画面で終わらせないのが興味深い。
この闇と影の中、坂の上の洋館にやってきた兼正一家のシーンだけやたら華々しいのはあえての滑稽さだ。

ラストでこの闇と影は、炎によって払拭される。闇に支配されつつあった外場村は怒りと炎に包まれ、人間と屍鬼の構図と共に光と闇の逆転も起きている。

ただ、再び闇と影の画面に戻るのも象徴的だ。

▽プロフィール
川俣綾加
フリーライター。マンガ・アニメ関連の紙媒体やWebなどで活動中。著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)がある。ムック『+DESIGNING』で「アニメのデザイン」、「コミスン」にて「ジャケ萌え!!」を連載中。
《川俣綾加》
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