8月29日に鳥取県米子市で第54回日本SF大会”米魂”が始まった。1962年に日本のSFファンの交流の場としてスタートした日本SF大会は、サブカルチャーをテーマにしたイベントの源流と言っていいほどの歴史を誇る。数々の講演やトーク、交流会があり、コスプレ、即売会も古くから行われている。そんなSF大会の目玉のひとつが星雲賞の発表と授与式である。過去一年間で最も優れた作品を9部門にわたりSFファンの投票で選出し、顕彰する。1970年にスタートし、1980年スタートの日本SF大賞と伴に日本のSF分野で最も知られたアワードである。8月29日、第46回星雲賞7部門の受賞作品、受賞者が日本SFファングループ連合会議より発表された。先行して明らかにされている海外長編部門、海外短編部門も併せて9部門の授与式が行われた。日本長編部門は藤井太洋氏の『オービタル・クラウド』が選ばれた。『オービタル・クラウド』は2020年を舞台にフリーランスのウェブ制作者が、あるきっかけでスペース・テロとの闘いに巻き込まれる作品である。もともと自費出版で発表された作品に、増改訂を行い2013年に早川書房より刊行された。今年2月には第35回日本SF大賞にも輝いている。SF界の2大アワードのダブル受賞となる。日本短編部門は飛浩隆氏の「海の指」である。こちらは講談社のウェブコミック「モアイ」に書き下された短編ストーリーだ。長編、短編とも通常の書籍や雑誌とは異なるかたちでまず発表された作品となり、SF作品のあり方の変化も感じさせる受賞だ。そしてメディア部門には、『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』が選ばれた。出渕裕監督による本作は、テレビシリーズの成功を受けて新たなストーリーを長編映画として描き話題を呼んだ。メディア部門はこれまでもアニメからの受賞が少なくない。今回も『楽園追放 -Expelled from Paradise-』『スペース・ダンディ』『キルラキル』も参考作品に挙げられていた。さらに『ベイマックス』『インターステラ』、『なぞの転校生』を含めた7作品の中で、『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』が制したコミック部門は石川雅之氏の『もやしもん』、アート部門は2014年12月13日に世を去った水玉螢之丞氏である。水玉氏はSFイラストだけでなく、キャラクターデザイン、コラムと幅広い活躍をした。ワンダーフェスティバルマスコットキャラクターの「ワンダとリセット」でもお馴染みだ。ノンフィクション部門は、牧眞司氏、大森望氏による『サンリオSF文庫総解説』、自由部門はドラマ24「アオイホノオ」である。「アオイホノオ」はマンガ家・島本和彦氏が自身の大学時代をベースにしたストーリーの原作を福田雄一監督で制作した。実在の人物を彷彿させるキャラクターたちで話題となった。選定理由に、「初めて「SFファンダム史」をテーマにした作品であり、史実をベースにしたフィクションドラマ」とされている。日本SF大会は国内外のSF小説だけでなく、映画、アニメ、コミック、さらにテクノロジーまでを広くカバーする。星雲賞の受賞作品にもそうした自由さが表れている。 [星雲賞受賞作]■ 日本長編部門『オービタル・クラウド』 藤井太洋■ 日本短編部門「海の指」 飛浩隆■ 海外長編部門『火星の人』 アンディ・ウィアー 訳:小野田和子■ 海外短編部門「スシになろうとした女」 パット・キャディガン 訳:嶋田洋一■ メディア部門『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』 監督:出渕裕 製作:宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会■ コミック部門『もやしもん』 石川雅之(■ アート部門水玉螢之丞■ ノンフィクション部門『サンリオSF文庫総解説』 編集:牧眞司、大森望■ 自由部門ドラマ24「アオイホノオ」 原作:島本和彦 監督:福田雄一理由「初めて「SFファンダム史」をテーマにした作品であり、史実をベースにしたフィクションドラマ」
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