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成長するスペインのアニメーション 第4回SNS、クラウドファンディングから生まれる新コンテンツ

[オフィスH 伊藤裕美] 第4部 SNSから生まれる、ティーン/ヤングアダルト向けコンテンツ■ クラウドファンディングで資金調達する、若手プロデューサー

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  • 成長するスペインのアニメーション 第4回SNS、クラウドファンディングから生まれる新コンテンツ
  • 『Krabstadt』(C) Monkey Machines Film
  • 『La methode Von Mopp』(C)Chicken’s Chicots Production - France Televisions
■ クラウドファンディングで、無名の新興スタジオがグローバル市場を目指す

『報奨金-アレトゥリオン物語』は、デンマークのアニメーション・インスティチューション、The Animation Workshopの学生3名の卒業制作ショートアニメーション『The Reward』から発展した。地元でSun Creature Studioを設立した彼らはKickstarterキャンペーンに参加した。
シリーズ第1話(パイロット)の主役とストーリーを決定するファン投票とクラウドファンディングをし、ベッカー3,920名から142,987米ドル(達成率124%)を集め、『The Reward: Tales of Alethrion - "The First Hero"』を完成させた。フランス出身のプロデューサーも加わり、7名になったSun Creature Studioのクリエイターたちは、架空の国Alethrion(アレトゥリオン)で謎の地図に描かれた宝物を探す荒くれたちの冒険ストーリーやデザインの開発をベッカーらと共におこなう。
現在ベッカーは6,700ほどになり、ネットファンは延べ47,000。7分x10話のウェブシリーズ、コミックブック、ゲームなどへのクラウドファンディング、パブリックファンディングも求めながら、インターネット・ブロードキャスター、テレビ局、出版社からも資金調達したいと、ピッチした。

■ 企画開発を支援する、ヨーロッパの助成制度

北欧の小国デンマークはアニメーションの産業歴は浅いながら、アニメーション製作ではフランス、スペイン、英国、スウェーデンに次ぐ(2010年~14年の期間に劇場公開長編アニメーション19本製作/出典:「Focus on Animation」)。狭い国内市場や業界の枠を軽々と越えて、クリエイターはクラウドファンディングやネットコミュニティとのシナジー、国際共同製作に積極的に乗り出す。
行政側も、若手クリエイターの起業やグローバル展開できるアニメーションのプロジェクト起ち上げを支援する。とりわけ国際共同製作の奨励、ピッチで優良なパートナーを見つけるためのパイロット版や脚本などの開発初期費を助成する。EUのオーディオビジュアル産業支援プログラム「Creative Europe/MEDIA」も国際共同製作と開発初期への助成に力を入れる。

■ デジタルコンテンツを支援する、カタルーニャ州

Cartoon 360を開催したカタルーニャ州のアニメーション・プロデューサーが組織する、PRO-ANIMATS(プロ・アニマーツ)のマネージャー、マール・サエーズ氏によると、「カタルーニャ州はこの10年ほど、スペインのデジタルコンテンツ産業の中心地として成長してきた。州政府も支援をしており、この6月をDigital Juneという一般向けのイベント月間にした。10月にはマンガサロンも開催される」。
バルセロナはデザイン都市とも呼ばれる。カタルーニャ地方は20世紀を代表するアーティストを多く輩出してきた。建築家のアントニ・ガウディ、リュイス・ドメニク・イ・モンタネール、画家のジョアン・ミロ、サルバドール・ダリ。パブロ・ピカソも一時バルセロナに住んだ。隣接するフランスからの影響があり、大学や私立学校の教育も優れる。1992年のバルセロナ・オリンピックで街は近代化された。カタルーニャ州の公共放送TV3はデジタルアニメーションをサポートしており、製作出資もする。

既述のとおりスペインでも国際共同製作は活発で、スペイン政府は昨年11月に税優遇措置を改善し、インセンティブを他のEUの先進国並みにしようとしている。
カートゥーンが運営する、グローバル市場を目指すプロジェクトのピッチが盛況になるためには、プロデューサーがプロジェクト開発のリスクを分散できる仕組みも必要となる。ヨーロッパではEU、そして各国がプロジェクトの開発早期から国際的なタッグを組めるよう助成し、独立系プロデューサーがそれらを活用してグローバル市場を目指す。ヨーロッパのプロデューサーと組むことでビジネスチャンスを広げる、韓国や中国。変化するアニメーション市場に、日本はどのように臨むのだろうか。

[/アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事]
《オフィスH 伊藤裕美@アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.biz》
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