『インサイドヘッド・ヘッド』の主人公は、なんと人間の“感情”そのもの。オリジナル劇場アニメーションとしてなぜこのような独創的な作品をつくろうと思ったのか? ピート監督はこう語る。
「久しぶりに友だちに再会したとき『あれ、前と性格違うな?』とビックリすることがありますよね。僕の娘も11歳になったころ、急に大人しくなり、不機嫌になってしまった。どうして変わってしまったのか? そうした疑問からこの作品をつくろうと思いました」とピート監督。
冒険の舞台となるのは、ライリーの頭のなかに無限に広がる世界だ。そこにはアニメーションならではイマジネーションに満ちた景色が広がる。テーマパークのような遊び心満載の“イマジネーション・ランド”、光り輝く無数の“思い出ボール”が収められた“思い出保管場所”、キライなものを閉じこめておく地下空洞のような潜在意識……。観る者は、思わず自分の頭のなかを想像してしまうはずだ。
これらカラフルな世界観は「最初から全体像があったわけではなく、少しずつつくられていったんだ」とロニー共同監は語る。
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アニメーションならではの想像力に富んだアイデアが次々と披露される本作。想像上のものを描くうえで“説得力”が必要不可欠である。“思い出保管場所”は「卵工場からインスピレーションを得たデザインになっている」とロニー監督は明かす。美術チームは卵工場へロケハンに行き、卵を選別するシステムなどを参考にしたという。
本作では5つの感情が主役となる。ハッピーな気持ちにさせるヨロコビ、つねに怒り爆発のイカリ、キライなものはお断りのムカムカ、危険や恐怖から身を守るビビリ。5つの感情のなかでも物語を牽引してく役割りを担うのがヨロコビだ。
キャラクターをつくり上げるうえで「いちばん難しかったのはヨロコビです」とピート監督。その名のとおりヨロコビは幸せに満ちたキャラクターだが「ハッピーなだけだとキャラクターとして浅くなってしまう。それだけでないバランスを保つのが難しかった」とピート監督は明かした。
5つの感情のほかに“ビンボン”というキャラクターが物語の鍵をにぎる。真っピンクで綿あめのような肌と像のような長い鼻がトレードマークのビンボン。彼は幼いころのライリーがつくりあげた“空想上のともだち”だ。
ピート監督によるとビンボンにはふたつの役割りがあるという。まずはヨロコビの“鏡写し”。「親は子どもに『そのままでいてほしい』という想いがどこかにある。ヨロコビも同じで、それをものすごく誇張したのがビンボンなんです」。さらに「子ども時代の象徴」でもあるという。ライリーが大人へと成長する過程で重要な役割を果たすという。
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共同監督のロニーは、これまで数々のピクサー作品でメインスタッフを務めてきたが、本作で長編映画監督デビューとなる。
そんなロニー氏は「共同監督に選ばれたのは、宝くじに当たったぐらいの喜びでした。ピートはもっとも尊敬できるクリエーターなので、彼とともにアニメーションをつくれるのは何よりのヨロコビでした」と述懐した。
本作はピート監督とロニー共同監督、ふたりのコンビネーションが見事に発揮された映画だ。ピート監督は「今回のストーリーは本当にふたりで意見を出し合いながらつくりあげていったものなんです」と振り返る。
さらにローニー共同監督については「彼は人間の“感情”という雲を掴むようなものを絵として的確に表現できるという類まれなる才能を持っていた。漠然としたアイデアを全部彼がリアルなものに落としこんでくれたんだ」と評価した。
『インサイド・ヘッド』は、“感情”そのものを描くという独創的かつチャレンジングな映画だ。本作の制作過程をピート監督はこう振り返る。「制作中には『これでいいのか?』と迷ったり本質を見失うこともありました。そんなときいつもロニーが『僕たちが伝えたいのはこういうことですよね?』と大事なことを思い出させてくれました」。
“感情”という目に見えないものを扱いながらも、確固たる信念をもってつくられた本作。たしかな貫通力をもってして、観る者多くの心を揺さぶるはずだ。
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『インサイド・ヘッド』
7月18日(土) 全国ロードショー
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