ミュージカル「ファウスト~最後の聖戦~」昨年とは異なるアプローチでパワーアップ 2ページ目 | アニメ!アニメ!

ミュージカル「ファウスト~最後の聖戦~」昨年とは異なるアプローチでパワーアップ

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ トリプル主演、三田佳子、河合郁人、五関晃一、再び集結

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(C)ミュージカル「ファウスト」公演実行委員会   撮影:田中亜紀
  • (C)ミュージカル「ファウスト」公演実行委員会   撮影:田中亜紀
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■ ”ファウストの人生リセット冒険”、殺陣のシーン、映像全てパワーアップ

ストーリーは基本的に昨年と一緒なのだが、アプローチは全く異なる。映像、とりわけプロジェクションマッピングの使い方が個性的なヨリコ・ジュン、まず、映像で観客をメフィストフェレスやガブリエルがいる天上へと誘ってくれる。空を飛び、曇を超え、あたかもそこに行く感覚。天使のコーラスが入る、「狭き地球に生まれしもの」と歌う。ここはゲーテ原作へのリスペクトが感じられる。

雷鳴が轟き、メフィストフェレスは言う、「人間は愚かだ」と。それに対して神は「人間は素晴らしい」と言う。これは永遠の命題だ。
神との賭けに挑むメフィストフェレス、今にも処刑されそうなファウストをターゲットにする。いかにも冴えない風貌、その回りには仮面をつけ、黒い衣裳に身を包んだコロスが3人、イカリ、カナシミ、フアン。誰しもが持っている負の感情を表現する。3つの感情はファウストにまとわりつく。こういった感情をダンサーのパフォーマンスで表現するのは、なんともアナログ的、かつライブ感覚。ファウストは、なんの取り柄のない男だ。それがひょんなことで罪を問われ、死に直面する。”人生、まだやり残したことがある、自分の人生はなんだったんだ”とファウストは思う。

手塚の3つの『ファウスト』では3つの願い、それは「若返る」「絶世の美女を手に入れる」「権力を手に入れる」、全てはここから始まる。このミュージカルもそれを”継承”しているが、これは人の”業”でもある。メフィストフェレスが神とそんな賭けをしているとはつゆ知らず、ファウストは申し出を受けるのである。

このミュージカル、”ファウストの人生リセット冒険”の色合いが濃い。様々な困難が彼の身に襲いかかる。悩みながらも立ち向かっていくファウスト。その周りを彩る様々なキャラクターも生き生きとしている。メフィストフェレスの分身であるオフィストフェレス、魔女リリス、途中でファウストの家来となるアバレやカスミ達。オフィストフェレス演じる五関はいかにも実直、魔女リリス(前回は森の魔女ローズ)はワハハ本舗の梅垣義明が演じるが、前回に引き続き、濃過ぎ!の一言、お約束の”ラップキッス”は健在だ。
ファウスト演じる河合は、昨年よりこなれた感じで芝居巧者、今回は途中で”女性”に。ここは必見だ。マルガレーテ演じる玉置成実、天使ガブリエル演じる増田有華、よく伸びる歌声での二重唱は聴かせどころだ。

昨年に引き続きの悪魔・メフィストフェレスの三田佳子が登場すると空気が一変、その存在感に圧倒される。出演者の演技、パフォーマンスに演出家得意の映像演出。過剰にならず、ここぞという場面で効果的に使用。舞台いっぱいのスクリーンに大写しの三田佳子演じるメフィストフェレス、悪魔なので映像で出てくると迫力満点。また、ファウストやメフィストフェレスが時空を飛ぶシーン等も映像だが、ここも奥行きのある絵作りで作品世界が生き生きとしてくる。
昨年もそうだが、メインキャストからアンサンブルに至るまで芸達者が揃っている。出番の少ないキャラクターも台詞ひとつひとつに力がこもる。殺陣のフォーメーション、技、かなり難易度が高く、ここは必見。

少しずつ、登場人物たちの内面に変化が訪れる。欲にかられる者もいれば、何かに気付き、思い切った行動に出る者もいる。そういった感情を脚本で丁寧にすくい取る。幕切れ近く、メフィストフェレスの分身であるはずのオフィストフェレスは分身たる立場を捨てて、天使・ガブリエルと共に自害する。

観客は”ファウストの人生リセット冒険”の傍観者である。設定はファンタジーだが、そこに描かれているものは普遍的だ。もし、人生をリセット出来たら、と思うことはあるだろう。そんな”妄想”に駆られる作品だ。

なお、ゲネプロ前に会見が行われた。河合は「再演とは言え、台本を読んだら去年と同じシーンがない!新しい作品と思って頑張りたい」と抱負を語った。五関は「初日までにやれるだけのことはやった。本番では楽しむだけ」とコメント。今回は河合は”女装”に挑戦するが「声は男のままで」それで「セクシーさを目指す」とのこと。確かに声を作らず、ナチュラルな雰囲気で意外とハマっていたのが印象的であった。

稽古中のエピソードとしては、稽古期間に五関が誕生日を迎え、三田佳子からプレゼントをもらったそう。「なかなか手に入らないシャンパンと洋服をもらった」とのこと。稽古中はほぼそのシャツだったそうで三田は「うれしい!」と一言。昨年も共演している3人、終始和気あいあいなやり取りで和やかに会見は終了した。

手塚治虫作品より ミュージカル『ファウスト~最後の聖戦~』
東京公演
2015年7月10日(金)~7月20日(月・祝)
東京芸術劇場プレイハウス
大阪公演
2015年7月25日(土)~7月26日(日)
森ノ宮ピロティホール
原作: 手塚治虫『ファウスト』
監修: モトイキ シゲキ
演出: ヨリコ ジュン
上演台本・作詞: ヨリコ ジュン・児玉明子
音楽: 松谷卓
出演: 河合郁人(A.B.C‐Z) 三田佳子 五関晃一(A.B.C‐Z) 玉置成実 増田有華
赤木悠真 優志 斎藤准一郎 早川勇平 小林瑞紀
黒田こらん 鈴木結加里 ANGELLA 伊地知玲奈 丸山未那子 梅垣義明(ワハハ本舗) モロ師岡 森宮 隆 渡辺邦斗 藤井びん 舘形比呂一
http://www.musical-faust.com

(C)ミュージカル「ファウスト」公演実行委員会  
撮影:田中亜紀
《高浩美》
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