手塚の名作「ドン・ドラキュラ」おませな娘と心配性なお父さん、良質のエンタテインメント | アニメ!アニメ!

手塚の名作「ドン・ドラキュラ」おませな娘と心配性なお父さん、良質のエンタテインメント

手塚治虫の名作『ドン・ドラキュラ』が初の舞台化。本来のドラキュラのイメージとは違うドタバタコメディ、良質のエンターテイメント作品となった。

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連載第113回
高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義  
[取材・構成: 高浩美] 

■「漫画は35年以上前の作品ですが、全く古さが無く、手塚作品の中でも今この時代にこそ、この作品をやる意味があると思ったからです」(徳尾浩司)

”マンガの神様”と言われた手塚治虫。デビュー作は『新寳島』、1947年に出版され、瞬く間にベストセラーとなった。この作品は一般的にはストーリーマンガの原点と言われている。それから手塚治虫は多くの作品を生み出してきた。
また、1961年には手塚プロダクション動画部を設立(1962年には虫プロダクションと改名)。1963年には日本初となるテレビアニメーションシリーズ『鉄腕アトム』の放映が始まった。1989年にこの世を去るまで第一線で活躍、今の日本のマンガ、アニメの基礎を築いたのである。

『ドン・ドラキュラ』は手塚治虫が秋田書店『少年チャンピオン』に連載したマンガ。『手塚治虫のドン・ドラキュラ』というタイトルでアニメ放映もされた。
ところで『ドラキュラ』、1897年に作家・プラム・ストーカーの恐怖小説『ドラキュラ』に登場する男性の吸血鬼の名前だ。映画などで描かれているイメージは、とにかく”恐い”、”不気味”等、どちらかというとネガティブである。

しかし、この手塚作品の『ドン・ドラキュラ』に描かれているドラキュラは従来のイメージとは全く違う。現代の日本にやってきたドラキュラがいろいろと騒動を起こすコメディなのである。現代の日本、東京都練馬区にトランシルヴァニアからドラキュラ伯爵が娘・チョコラと使用人・イゴールと共にやってきて、住宅街の古い洋館に住むことになる。この設定を聞いただけで、もう”何かありそう”な予感が満載だ。
ドラキュラ伯爵はホラーが大嫌いで美女には弱いが、娘・チョコラを愛するお父さん。しかし、夜な夜な美しい処女の血を求めて街をさまよう誇り高き吸血鬼なのである。

この作品の舞台化に際して製作は「漫画は35年以上前の作品ですが、全く古さが無く、手塚作品の中でも今この時代にこそ、この作品をやる意味があると思ったからです。そして何より、『ドン・ドラキュラ』がケンチさんにピッタリだったからです」とコメントする。
主演は橘ケンチ(EXILE)、キャラクタービジュアルは既に公開されているが、なかなかのクオリティだ。また、この作品で描かれているドラキュラ像に関して演出の徳尾浩司は「娘のことが心配で、ついつい学校に様子を見に行ったり、生き血を吸えずにトマトジュースで我慢したり、恐ろしいイメージとは真逆の人間的な内面が見どころです」と語る。

ところで、ここ数年は毎年、必ず、手塚治虫作品が上演されているように思える。一昨年は『ブッダ』(制作:わらび座)、昨年は『ファウスト』と『百物語』を基にしたミュージカル『ファウスト~愛の戦士たち~』(制作:エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ)そして『虹のプレリュード』(制作:ネルケプランニング)、未完の作品『ルードヴィッヒ・B』にオリジナルのエンディングを”創造”した『ルードウィッヒ・B~ヴェートーベン歓喜のうた~』(制作:エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ)が上演された。
もちろん、それ以前でも『ひだまりの樹』『火の鳥』『リボンの騎士』『ブラック・ジャック』等が上演されている。また、今年は戦後70年という節目、『アドルフに告ぐ』が6月3日からKAAT神奈川芸術劇場(制作:KATT神奈川芸術劇場/シーエイティプロデュース)。

そして7月10日から紀伊国屋ホール(制作:スタジオライフ)にてが相次いで上演される。それだけ手塚治虫作品が魅力的、ということなのだろう。徳尾浩司は「火の鳥など宇宙的に壮大なテーマも、躍動感あふれるタッチでテンポ良く描かれているところが面白いと感じます」とコメント。初の舞台化『ドン・ドラキュラ』、橘ケンチ(EXILE)始め、原田夏希、池田鉄洋ら魅力的なキャストが揃っている。期待せずにはいられないだろう。
《高浩美》
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